[口演S-4-5] 自傷行為などの行動化が頻回な転換性障害を抱える患者に対する看護師の思い
Keywords:自傷行為、行動化、転換性障害
【目的】転換性障害では耐えきれないストレスや周囲の理解できない状況に感情を抑圧し、身体症状や衝動行為として反応することで心理的安定を図っている。看護としては転換症状に焦点化するのではなく、患者の示す症状を正しく理解し、支持的にかかわる必要がある。しかし、実際には繰り返される自傷行為などにより、陰性の逆転移感情や無力感からケアに行き詰まり感を抱きやすくい。そこで今回、転換性障害を抱える 20 歳代女性患者のケアにかかわった精神科一般病棟の看護師が抱く思いを明らかにすることで、患者の行動化の背景にある思いに寄り添う看護のあり方を検討することとした。【方法】看護師を対象に X 年 7 月、転換性障害を抱える患者のケアにおいてどのような思いや感情を抱いているのかについてフォーカスグループインタビュー法でデータ収集し、質的帰納的に分析した。分析は精神保健及び質的研究の見識者にスーパーバイズを受けた。対象者に研究内容、結果の公表などについて文書と口頭で説明し、対象者の意思で参加の諾否が決定され、承諾を得た。なお本研究は A 病院倫理委員会の承認を得た後に実施した。【結果】インタビューは計 2 回(80 分)で看護師の参加は 16 名であった。看護師の抱く思いは 62 コードから 21 のサブカテゴリを生成し、11のカテゴリ<患者のつらさを疾患の理解や発達の側面から理解したい><患者を助けたいという思いが裏切られる経験><患者の予期しない反応に、一歩引いてしまう><変化する患者の反応に振り回されて疲弊してしまう><自己本位の言動と自傷行為の対応に辟易する><なぜ自傷行為をするのかが理解できない><自傷行為を防ぐことにかかわりが集中してしまう><変わらない現状にやりがいを見出せない><深入りしない距離感を取った淡々としたかかわり><症状が悪い時でも患者のできることを見出す><看護師や他の患者、家族との感情的な交流の必要性の認識>が生成された。【考察】看護師は患者の示す多様な身体化に振り回され、自己本位の言動と自傷行為の対応に心理的困難感を抱えていると考えられた。患者のつらさを疾患の理解や発達の側面から理解しつつ、看護師や他の患者、家族との感情的な交流を促し、症状が悪い時でも患者のできることを見出した支援が患者の行動化の背景にある苦悩に寄り添う看護につながるものと考える。