第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 札幌

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口演

口演4群 精神疾患をもつ患者の看護

Thu. Sep 1, 2022 2:00 PM - 3:00 PM 口演会場2 (204)

座長:熊谷 恒子

[口演S-4-4] A精神科病院看護師が実践している倫理的行動の質

-「看護師としての倫理的行動自己評価尺度」を用いて-

加藤 勉1, 垣上 正裕1, 小西 美里2, 藤本 瞳1 (1.群馬県立精神医療センター, 2.群馬県立県民健康科学大学看護学部看護学科)

Keywords:精神科病院看護師、倫理的行動、自己評価

【目的】A 精神科病院看護師の倫理的行動の質向上に向けた教育プログラム立案への示唆を得るために、看護師が実践している倫理的行動の質を明らかにする。【方法】A 精神科病院の看護師 115 名(病棟師長以上を除く)を対象に、「看護師としての倫理的行動自己評価尺度」(2020 年 8 月 開発者による使用許諾)を用い、倫理的行動の質を測定した。この尺度は、31 質問項目から作成されており、総得点の高さにより看護師の倫理的行動の質を測定する。研究者が各看護単位に出向き、対象者に調査目的、測定用具の使用方法、研究協力が自由意思であることを説明した。調査期間は、対象者が自己評価をするために必要な期間として 2 週間を確保した。分析は、SPSS®Ver.25 を使用し、対象者の総得点の平均値と質問項目毎の平均値を算出した後、全国平均値との間で 1 標本 t 検定を実施した。【結果】回収数は 89 部(回収率 77.4%)であった。対象者の総得点の平均値は、104.2 点(SD=10.0)であり、全国平均値 102.4 点(SD=10.8)より高かった。各質問項目の平均値を比較した結果、全国平均値よりも有意に低かった質問項目は、< 1.患者・家族の要望にできる限り対応するとともに、要望の実現に向け対策を講じる>< 3.患者の要請にすぐに対応できない時は、その理由と待機時間を説明し、忘れずに対応する>< 6.患者とその家族の心情を考慮し、できる限り平穏な心情を維持できるよう対策を講じる>の 3 項目であった(p < 0.000 ~ 0.013)。【考察】総得点の平均値は、倫理的行動の質が全国平均値よりわずかに高いことを示したが、質問項目< 1 >< 3 >< 6 >の平均値は全国平均値より低かった。患者・家族からの要望や要請があった際、病院や病棟のルールという理由で実現されないことや、心情への配慮が必要な際、同様の理由で不十分になることがある。また、看護師が、患者や家族の訴えに対応する時間を確保するためには、チームの協力が必要となるが、協力が得られないことがある。< 1 >< 3 >< 6 >の低さは、このような状況の常態化により、看護師の倫理的行動を維持するためのモチベーションが次第に低下した可能性を示唆する。以上の考察により、倫理的行動の質向上に向け、《患者・家族への倫理的行動の質低下に対する危機意識の維持とチームの連携方法を模索する必要性》が示唆された。