[口演S-5-5] 特定保健指導未利用の理由と翌年の健診結果への影響
Keywords:特定保健指導、特定保健指導未利用、健康診断結果
【目的】特定保健指導の利用者は、利用しない者よりも翌年の健康診断の結果(以下、健診結果)が有意に改善すると報告されている。A センターの特定保健指導実施率は約 47.3%であり未実施率は 52.7%で、そのうち約 3 割が「自身で生活習慣の改善に取り組む」という理由で利用していない。そこで、本研究では「自身で生活習慣の改善に取り組む」とした者の、翌年の健診結果を検証することで今後の関わり方を検討し、より良い保健指導サービスの提供に繋げることを目的とする。【方法】A センターにおいて 2020 年 4 月から 2021年 10 月の間に 2 年連続で健診を受診し、2020 年度の健診の際に「自身で生活習慣の改善に取り組む」とした者のうち、治療開始となった者を除く 57 名(以下、指導未利用者)を対象とした。男性 84%、女性 16%、平均年齢は 53.7 歳であった。2020 年度、2021 年度の健診結果を t 検定、生活習慣に関する質問項目をカイ二乗検定により検討し、有意水準は5%未満とした。倫理的配慮は、健診時に個人を特定できない形で統計調査に利用することの同意を得た。【結果】指導未利用者の 2020 年度、2021 年度の健診結果(腹囲、BMI、空腹時血糖、中性脂肪、血圧など)および、生活習慣(食習慣、飲酒習慣、運動習慣など)項目を比較した。いずれの項目も有意差はなかった。【考察】指導未利用者の健診結果、生活習慣に有意な改善がなかったことから、利用者自身の取り組みだけでは限界があり、特定保健指導など継続支援による介入が重要であることがわかった。一方で指導未利用者に、健康意識が高まる健診当日に面談を実施したことが、生活習慣改善に向けた意識づけに繋がり、健診結果の悪化を防ぐ一助となった可能性がある。しかし、自身で取り組む意欲がある指導未利用者に対し、特定保健指導を通して介入していくことは容易ではない。特定保健指導利用による健診結果の改善効果を説明したうえで、「自身で取り組む」という健康観を受け止めること、健診結果や質問票に合わせて他者からの介入を負担と感じない情報提供を行うことが重要である。翌年の健診までに実践できるような目標を共に考え、その目標が達成されなかった場合は、特定保健指導の利用を勧めるなど、「自身で生活習慣の改善に取り組む」という意欲をさらに高められるよう支援することが、自身の健康の向上に繋がると考える。