第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 札幌

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口演

口演8群 新型コロナウイルス感染症下の看護管理

Fri. Sep 2, 2022 2:00 PM - 3:00 PM 口演会場2 (204)

座長:原 理加

[口演S-8-1] 新型コロナウイルス感染症患者の家族へのグリーフケア

-初めて看取りを経験した 2 年目救急病棟看護師の家族への関わりを通して-

免井 麗奈, 大塚 真由, 濱田 美智子, 長田 孝幸 (飯塚病院)

Keywords:新型コロナウイルス感染症、救急病棟、若手看護師、家族へのグリーフケア

【目的】2年目の救急看護師(以下、看護師)が新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)患者の家族に行ったグリーフケアについて報告する。【方法】看護師の COVID-19患者の家族へ行ったグリーフケアをリフレクションレポートより考察する。患者や家族の個人情報保護を遵守した。【結果】A 氏、80 代女性。家族と同居。COVID-19 に罹患し、搬送後すぐに人工呼吸器を装着された。数週間後に抜管できたが、呼吸状態が悪化し A 氏と家族の意向で再挿管せず 1 ヶ月後に永眠された。救急病棟では、家族の希望に合わせて積極的にリモート面会の場を設けており、亡くなった当日もその場を設けていた。その数時間後に A 氏は亡くなり、家族は臨終に立ち会えず突如 A 氏の死を受け入れなければならない状況であった。看護師自身が看取りの経験や家族へのグリーフケアが初めてであったが、A 氏の「元気になって家族の元に帰りたい」という気持ちを家族に届けたいと思い、家族の代わりに A 氏の手を握り寄り添った。看護師は、A 氏が亡くなった悲しみや家族と離れ最期を一人で迎えた A 氏の姿を見ると涙がとまらず、家族と死を悼む間もなく葬儀の手続きなどを進めなければならず、初めての経験に戸惑いや不安を抱いた。その姿をみた先輩看護師が「泣いても大丈夫。最期を看取り、何を感じたか家族に伝えるといいね」と励ましてくれ、その言葉で自分を奮い立たせることができた。それを機に、家族に闘病中の姿を伝え、A 氏が残した「パンが食べたい」と書かれたメモを渡したことで生前パンが大好きでよく家族と食べ放題に出かけていたエピソードが家族より語られ、張り詰めていた空気が一瞬にして変化した。COVID-19 患者ではなく、母親としての A 氏が浮かびあがり、家族よりお気に入りの服を着て花を添えて見送りたいとの思いを表出することができ、限られた時間の中でその全てを叶えることができた。【考察】日本救急看護学会は「突然死にも近い短時間での死亡は、面会制限や臨終に立ち会えない状況に加え、家族の心理的危機をますます促進させる」と述べており、A 氏の家族も同じ状況に置かれていたと考える。COVID-19 により長期に渡る隔離生活を強いられるからこそ、今後さらに家族へのグリーフケアが求められる。そのため、救急病棟看護師は、家族の置かれた状況や心情を理解し、闘病中の患者を家族が大切に想う人として支え、患者と家族をひとつにつなぐ架け橋となることが大切だと考える。