第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 札幌

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シンポジウム

シンポジウム4 地域包括ケア推進に資する外来看護職の活動

Fri. Sep 2, 2022 9:30 AM - 11:10 AM 第3会場 (中ホール)

座長:吉川 久美子

講師:岩澤 由子・住谷 眞由美・伊東 紀揮

[SY4-3] 在宅医療を支える取組みについて

伊東 紀揮 (ゆみの看護部長)

 超高齢社会の日本において、求められる医療の在り方が「病院完結型医療」から、「地域完結型医療」へと変化しているが、COVID-19 による未曽有のパンデミックを経験し、それがもたらした社会変化の中で、医療界もさらに多くの変化が起こる事態となった。
 変化は決してネガティブなものばかりではなく、新しい医療・看護の発展へとつながるものも少なくないと感じている。その一つとして、対面による医療・看護が一般的であったところに、オンラインが普及しつつあることは、より多様な看護形態の創出の可能性が期待できる大きな変化であると捉えている。
 当法人は、東京、大阪、福岡に 5 つのクリニックと、1つの訪問看護ステーションを展開している。診療は、外来診療と在宅診療を行っており、患者の半数が心不全患者であることが特徴である。
 診療と同様に、看護も外来看護と在宅診療に関わる看護を展開しているが、その一つとして「管制塔看護」と名付けた遠隔看護を積極的に行っている。この管制塔看護は、在宅診療を行っている患者と一部の外来患者を対象に、様々なモニタリングツールやコミュニケーションツールを用いて看護を行っている。
 心不全をはじめとした慢性疾患は生活の中で増悪をするが、十分なセルフモニタリング、セルフケアができる高齢患者は決して多くはなく、そのために入退院を繰り返してしまっている症例を数多く経験し、対面による医療・看護のみでの支援の限界を感じていた。そこで、増悪予防、早期発見・対応といったことに親和性の高い遠隔看護を導入することに至った。
 管制塔看護は、緊急電話の対応と、継続的なモニタリングを大きな役割としている。多くを占める慢性安定期の患者の中には、急性期にある患者や病状が不安定な患者もおり、そういった患者を見つけ出し、経過を追って適切な対応がされるよう管制塔看護師が支援を行うことで、病状の増悪による再入院を減少させることができるのではないかと考えている。
 だが、そこには課題も多くある。現在、行っている遠隔看護に対する診療報酬はなく、人件費や機器、通信費などのすべてが医療機関の負担となっている。そして、看護を受ける側である患者や介護者の IT リテラシーも遠隔看護の提供の障壁となることも多い。
 今回は、当法人の症例を用いて遠隔看護の実際を紹介し、今後の発展や課題について議論をしたい。