第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

Presentation information

口演

口演15群 高齢者、認知症の人の看護②

Wed. Nov 8, 2023 2:30 PM - 3:30 PM 第9会場 (G316+G317)

座長:長瀬 佐知子

[口演Y-15-4] 認知症患者へ「その人らしさ」を重視した関わり

―BPSD改善のための環境調整と援助―

清水 幸 (山梨県立北病院)

Keywords:BPSD、環境調整、個別性

【目的】BPSDの対応について、個別性を重視した看護の関わりから認知症患者にみられた変化を明らかにする。【方法】(研究方法)電子カルテの看護記録や診療記録から看護の関わりと本人の変化を振り返る。(事例)A氏70代女性10年前アルツハイマー型認知症の診断、夫と二人暮らし、数カ月前から不眠・徘徊・易怒性など症状の悪化がみられた。入院時に実施したHDS-R・MMSEは実施困難で0点であり重度の認知症に分類される。A氏本人は意思決定が困難なため、キーパーソンの夫に研究の目的、個人情報保護、参加は自由意志であり、研究への不参加によって不利益は生じないことを口頭及び紙面で説明し同意を得た。【結果】(入院初期)帰宅欲求から病棟内徘徊や易怒性があった。風や雨の音、人の声など日常の僅かな生活音にも不安を感じていた。食事中には摂取行動の中断や徘徊につながっていた。BPSDから行動の見守りが必要となり看護室で過ごすが、音への過敏さから様々な音に反応しBPSDの悪化が見られ自室での隔離や看護師が常に付き添う必要があった。(入院後期)環境調整として、病室がA氏にとって落ち着く場所となるよう環境音の少ない部屋への転室、食事時にはA氏にとって不快な刺激を最小限にする環境を提供した。A氏との関わりについてまずは個別的な関わりを重視、安心できる関係性構築に努めた。不快な刺激のある場所に行く際には、予告と実況をしながら関わった。関わり方の統一、繰り返しを行ったことで、A氏は集団の中でも看護師が常時付き添わなくても過ごすことができるようになった。【考察】A氏にとって何が不快な刺激となるか予測し、予告したり、刺激自体を避けられる環境を提供したりすることが不安の軽減につながり徘徊や易怒性といったBPSDの改善につながったと考える。退院後生活する場所では介助者の体制や環境から対応には限界がある。入院生活を通し行動の背景に何があるか、どういった関わりや環境でその人が落ち着いて過ごせるのか「その人らしさ」を支える支援方法を見出し、途切れることなくつなげていくことが病棟看護師の役割として重要である。