第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

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口演

口演17群 精神看護①

Wed. Nov 8, 2023 10:30 AM - 11:30 AM 第10会場 (G318)

座長:中澤 範子

[口演Y-17-1] 衝動行為を繰り返す統合失調症患者の行動制限最小化を目指した看護

黒木 将毅1, 住吉 明日美1, 川村 道子2 (1.高宮病院, 2.宮崎県立看護大学)

Keywords:統合失調症、衝動行為、行動制限

【目的】衝動行為により自傷他害がみられる統合失調症患者の行動制限最小化に繋がる看護を検討する。【方法】研究方法:事例研究(事例:20歳代男性、統合失調症・てんかん・自傷行為を認め行動制限中)分析方法:(1)対象の人生史を整理し、対象特性を捉え直した上で対象の言動の特徴が顕著に表れている看護場面をプロセスレコード(以下、PR)に再構成し、看護の方向性を検討する。(2)(1)の看護の方向性を基に関わり、行動制限最小化の観点から対象に変化のあった場面をPRに再構成し、変化の転換点での対象の言動の意味を捉え、Nsの関わりの特徴を捉えケアする過程を繰り返す。(3)(2)の過程の中で捉えた関わりの特徴の共通性を捉える。倫理的配慮:対象の同意を得て実施し、所属施設の研究倫理指針を遵守し、教育委員会の承諾を得て実施した。【結果】対象の人生史から「Nsは対象の感情を感じ取り、対象が理解しやすい情報提供方法を考慮し関わる。対象がNsに相談する事や助けられる事は自身の生き辛さが小さく感じられるように関わる」と看護の方向性を検討し関わり、衝動行為は消失、段階的に行動制限は緩和された。14ケのPRを分析し、関わりの特徴を次のように捉えた。「対象のその時々の感情に共感する姿勢で接する」「衝動行為に至る契機となった出来事を、自ら具体的にNsに伝えられるよう促し、Nsと共に解決策を考え実行する事が生きやすさに繋がったと思えるように関わる」「周囲の人を信じ、頼る事も必要だと伝える」「情報処理の特徴を捉え、視覚優位の対象の場合は図等を使用しコミュニケーションを図る」【考察】衝動行為により自傷他害のある統合失調症患者の行動制限最小化に繋がる関わりでは、人生史を対象の位置に移って辿り、どのような困難を感じているか対象の位置で捉える事が基本となる。その上で、衝動行為に着目した指導的関わりでなく、そうせざるを得なかった困り事の表現を促す事でNs自身の対象の見つめ方や関わりが、困り事を取り除く、あるいはそれを乗り越える方法を共に考えるという方向に変化する。対象が、周囲の人を信じ、頼る事が得策だと再考するために、共に考えた事を実生活で試みて自己評価できるよう促す。また、対象が気付いていない自己の強みや弱点をNsが見抜き、人的物理的環境の整備・補填を行い、持てる力を最大限発揮できるよう関わる事が必要だと示唆された。