第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

口演

口演20群 住み慣れた地域に戻ることへの支援②

2023年11月8日(水) 15:45 〜 16:45 第10会場 (G318)

座長:南里 玲子

[口演Y-20-4] 高度肺機能障害と自宅環境に多重な退院困難問題のある患者家族の自宅療養を可能にした多職種協働の様相

渡邊 泰子 (富士吉田市立病院)

キーワード:多重の退院困難問題、退院支援、多職種協働

【目的】高度肺機能障害と自宅環境に多重な問題のある患者家族の自宅療養を可能にした多職種協働の様相を明らかにする。【方法】多職種協働の様相に着目した事例研究。退院困難問題に対する医療ケアチーム(病棟看護師、医師、理学療法士、在宅支援室看護師等)と在宅ケアチーム(ケアマネジャー、訪問看護師等)の協働実践内容を時系列に記述し、そこでの協働の仕方などの様相に注目して研究者間で議論を重ねカテゴリ化した。本研究はA 氏と家族、退院支援者全てに対し研究主旨、個人情報保護、データ管理等を口頭及び文書にて説明し、同意書の署名をもって研究参加の同意を得た。【結果】多重な退院困難問題のあるA 氏70 歳代男性と家族に対する、自宅退院を可能にした多職種による協働実践が対象。退院困難問題には「右上葉肺癌切除術後の気腫合併肺繊維症による難治性呼吸機能低下、ADL /活動制限の状態」があり、医療ケアチームによる、A 氏主体の急性期専門治療・呼吸ケア・リハビリテーション・心理ケアのコラボレーティブケアが早期から展開されていた。同時に、「新たな医療依存・自宅環境改造・社会資源導入を要する状況」に対しては、呼吸機能が改善に転じつつある時期から在宅ケアチームが賛同し対話を重ね、退院後の生活を見据えた生活自立支援の具体化、サービス調整の他、A 氏と家族の退院への自信や覚悟に繋がる移動手段や自宅環境改造の選択などの協働意思決定支援など並行して行っていた。問題に多職種協働の内容から、《退院目標に向け当事者として今、取り掛かる》《他者と自分をつなぎ補完し合う》《太刀打ちできない状況に、できる時にできる分だけ対話し最善を練って試みる》《新たな挑戦への背中をおす》《不確実性を受け入れて退院を決断する過程を共に辿る》という協働の仕方が様相として抽出された。【考察】多重な退院困難を乗り越えA 氏と家族の自宅退院を叶えた多職種協働は、A 氏の退院目標達成というミッションにより当事者意識と共に方向づけられており、チームの誰かが困難や見通しの立たなさを感じた時、自分と他者をつなぎ対話し、相互に分かち合い活かし合いながら新たな解決策を見い出して共に取り組むという積み重ねであった。その協働は、時間、場所、職位、形式に拘ることなく細切れにだが着実に進めていくことを可能にして、患者志向・協働志向でのチーム医療ケアを推進する役割を担っていたと考える。