[口演Y-21-2] 難治性てんかん患者とその家族を支える意思決定支援
Keywords:意思決定支援、他職種連携、難治性てんかん、母子支援
【目的】難治性てんかん患者はけいれんを起こしやすいため、迅速な救急搬送が不可欠であり、そのような児をもつ家族は日常的にその対応を迫られている。今回、けいれん時に救急要請をすることに抵抗があり、自家用車で病院受診をしていた母子への症例介入を通して、外来における障害のある児とその母への意思決定支援を考察する。【方法】事例研究。倫理的配慮:個人情報の保護に配慮し、母の同意を得て研究を実施した。【結果】対象:A氏。両親・姉の4人暮らし。生後11ヶ月より無熱性けいれんを発症し、重積発作による入退院を繰り返している。父と姉もてんかんの持病があり、ほぼすべての介護者である母は精神的ストレスや疲労が強い状況であった。母はけいれんの緊急性を知っていたが、頻回に救急要請することに抵抗があり、自宅でミダゾラム(ブコラムⓇ)を使用してから自家用車で来院することが多かった。病院到着時のA氏は、意識レベル低下、呼吸抑制があり、極めて危険な状態であった。母との面談で、「早く病院に行きたいが、同じ内容の救急要請なのに救急隊の事務的なやりとりがいつも長いので自家用車を選択している」、「これからも救急要請が必要な状況が続くかと思うと、先の見えない不安やストレスがある」という母の思いを確認できた。また母は「けいれん後に自宅でケアしたい」という意思決定をされていた。母の意思を尊重した救急体制の見直しを図るため、外来スタッフ、医師、救急委員会、消防署と連携し、母の同意を得て消防署にA氏の情報提供を行った。A氏の救急搬送要請時は事務的なやりとりが最小限となるよう消防署に依頼し、患者家族会の資料を参考とした「救急搬送カード」を導入し活用した。A氏のけいれん後の自宅ケアに向けて、観察方法と救急要請必須の状況を母に指導した。ケアに必要な物品の準備と使用方法を母の理解度や家庭の経済状況に合わせてMSWとともに支援し、準備後は訪問看護師と重症児デイの看護師と連携しながら少しでも不安があればサポートする体制を構築した。【考察】難治性てんかんをもつ親は、日常生活の育児の中で多くの負担を抱えており、まわりのサポートが重要となってくる。今回、母の決断を受け入れ、他職種と連携した支援は、母が自分の対処行動に自信を持ち、「子どもの事を一緒に考えて対応してくれる人が家族以外にもいる」という、母の精神的励みにつなげられたと考える。