[口演Y-21-3] AYA世代の多発性骨髄腫男性患者への妊孕性温存に関する意思決定支援
Keywords:AYA世代男性患者、多発性骨髄腫、妊孕性温存
【目的】AYA世代の多発性骨髄腫男性患者へ行った妊孕性温存に関する意思決定支援について報告する。【方法】AYA世代の多発性骨髄腫患者への妊孕性温存に関する意思決定支援について診療録より抽出し考察する。患者の個人情報保護の遵守に留意した。【結果】A氏 10代 専門学校生。腰椎骨折による受診を機に多発性骨髄腫と診断され、化学療法が開始された。妊孕性温存について、主治医より診断時に説明を受けていたが、外来治療へ移行前のA氏と母親への説明時に看護師も同席した。A氏に説明を受け分からないことはなかったか尋ねると、「今は彼女もいないし自分が結婚して親になる姿が想像つかない中で精子保存した方がいいのか分からない」という思いが語られた。多発性骨髄腫の治療において化学療法の影響で妊孕性の低下・喪失をもたらすため、未成年のA氏に結婚し子供を育てるといったイメージが持てないのは当然と思う一方で、正しい情報を伝えて選択してもらう必要があると考えた。特にA氏は治療開始前より自身が疑問に思うことを医療者に尋ね、治療を受ける決断、休学に至るまで自身で意思決定ができており、精子保存においても意思決定できると考えた。数日後、看護師は羞恥心に配慮しA氏がリラックスした環境で会話ができるよう談話室で面談を行った。面談では精子保存についての情報提供を行い、A氏の人生において大切なことであり、がん生殖医療実施施設でも説明を聞いて時間をかけて意思決定するよう伝えた。これらの支援より、A氏はがん生殖医療実施施設で妊孕性温存について説明を聞き、妊孕性温存について理解した上で精子保存を行い化学療法を継続することができた。【考察】がんの診断初期の心身ともに安定していない患者に原疾患に対する治療と妊孕性温存について説明し、理解を促すことは容易ではない。AYA世代のがん患者の妊孕性温存には、適切な時期に不妊リスクに基づき情報提供を行い本人の意思を尊重した上でがん生殖医療実施施設へ紹介することが重要と言われる。原疾患への治療を先行し、心身ともに落ち着いた状況で妊孕性温存に関する情報提供を行い、A氏から精子保存について尋ねられたタイミングで羞恥心や自尊心に配慮しながら面談を行い、A氏の希望する選択ができるように考える時間を作ったことは、患者の自己決定の権利を尊重する支援につながったと考える。