[口演Y-27-4] 終末期の壮年期食道癌患者の理解と意思決定支援事例を考察する
―受け持ち看護師の立場から―
Keywords:食道癌、意思決定、壮年期、ACP
【目的】終末期の壮年期食道癌患者の思いや苦痛の理解と意思決定を支えた事例を受け持ち看護師の立場から考察し、今後のケアの質向上に寄与する。【方法】患者とのコミュニケーションで得た情報や多職種とのカンファレンス内容を振り返り、文献を用いて患者の状況と重要な看護を明らかにする。対象者が特定できないよう倫理的及びプライバシーに配慮した。【結果】1.患者の代弁者となる。患者は化学療法が奏功せず、栄養管理と疼痛管理が治療の課題だった。患者の期待に反して効果は得られず、常に眉間に皺を寄せて口数が少ない患者は看護師も近寄り難かった。身体的苦痛だけでなく全人的苦痛として理解することが必要だと考え、受け持ち看護師(以下受け持ち)は支えになりたいとメッセージを送り続けた。患者は、医師が一方的に治療方針を伝えるばかりで自分が考えるスピードや提案内容には齟齬があること、医師から放置されていると受け持ちに吐露した。消化器内科チームと緩和ケアチームでカンファレンスを開催し、患者の思いと治療方針を共有する機会を作った。2.意思決定を支える。医療チームと話し合いを重ねケアにあたり、患者は「静かに家でぼんやり過ごしたい」という結論に至った。退院に向けて受け持ちは、患者が望む情報の提供、医師や両親との話し合いへ同席し、自分の意思で決めて良いこと、周囲に相談しても良いことを伝えた。患者のありのままを支えようと寄り添い、患者の思いや苦痛をチームに伝え続けた。患者は退院時期や退院時の姿を自分で決めることができた。【考察】一般的に専門的知識や経験などの結果を予測できる医師や看護師は、そうでないがんサバイバーとの現状認識がずれやすいとある。且つ様々な苦痛を抱えながら人生において重要な決断をしていくことは難しい。患者は現病の悪化の受容過程にあり、主に医師と時機のずれがあった。患者はこれまで自分で意思決定してきたが、自分で決めたい思いと行き場のない思いが混在しており、「医師から放置されている」という表現は置き換えだったのではないか。これらの点を踏まえ、ありのままを受け止め代弁者となり医療チームに伝え続けたことは、医療チームの患者理解に繋がり、意思決定支援の糸口となったのではないか。退院日を前に腫瘍出血により永眠されたが最期まで患者らしさを貫いた。