[口演Y-44-3] 急変時対応シミュレーション研修の教育効果と今後の課題
キーワード:急変時対応、シミュレーション研修、行動変容
【目的】A 病院で行った急変時対応シミュレーション研修の教育効果と今後の課題を明らかにする。【方法】A 病院の医療安全研修会受講者100 名を対象とした。カークパトリックの4 段階評価法を基に、レベル1(反応)を研修への反応、レベル2(学習)を研修前後の知識課題の正答率、レベル3(行動)を研修後の急変時対応に対する行動変容とした質問紙の回答のうち、選択肢は単純集計、自由記載は質的帰納的に分析した。所属施設の看護部倫理委員会の承認を得て実施した。研究参加は任意であり、研究データは研究目的以外に使用せず、公表する際は匿名性を守り、プライバシーが保護されることを文書で説明し同意を得た。【結果】レベル1 は、<自己課題の発見>など10 カテゴリに類型化した。レベル2 では、研修後の知識課題の正答率が全項目で上昇し、胸骨圧迫の位置、バックバルブマスクの換気方法の正答率が60%台と低かった。レベル3 では、研修後に急変を経験した者は22.9%、経験していない者は77.1%であり、急変を経験した者の方は経験していない者と比較して、急変の手技ができると回答した割合が低く、自己学習の割合は高かった。両群とも、80%以上が落ち着いた対応・チーム対応ができ、約90%が看護の場で活用し、約70%が不安軽減できたと回答した。臨床上の活用は、急変を経験した者は<急変時の役割認識の活用>など2 カテゴリ、経験していない者は<臨床上の活用>など5 カテゴリに類型化した。不安の軽減は、急変を経験した者は<チームワーク>など2 カテゴリ、経験していない者は<急変時の対応についての学習の大切さと必要性>など4 カテゴリに類型化した。【考察】急変時シミュレーション研修は看護実践力を向上させ、看護師の学習意欲への刺激や自信に繋がったが、急変を経験した者は手技ができると回答した割合が低く、研修後に実践力を発揮するほど技術の習得に至っていないため課題を見出す結果となった。研修による不安軽減の効果は示されたが、急変時対応の機会減少や経験不足に伴う不安軽減の限界も考えられ、研修は継続的に行う必要があり、臨床看護実践能力を向上させ臨床の場面で自信をもって活用することを目標とする必要があることがわかった。研修を行うことで、知識と技術の活用や役割認識、チームワークなどのノンテクニカルスキルも今後臨床で活用し医療の質へ繋げることができると考える。