第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

口演

口演5群 ポストコロナ社会の看護への示唆~家族看護~

2023年11月8日(水) 10:30 〜 11:30 第7会場 (G312+G313)

座長:福永 稚子

[口演Y-5-3] 新型コロナウイルス感染症において死別前の面会がもたらすグリーフの違い

倉田 裕子, 神原 直実, 佐藤 弘基, 徳井 愛美 (大阪ろうさい病院)

キーワード:新型コロナウイルス感染症、グリーフ、面会

【目的】2020年4月A病院で新型コロナウイルス感染患者の入院病床が設置された。新型コロナウイルス感染患者受け入れ当初は面会を制限されたが、徐々に新型コロナウイルス感染症が解明され面会が可能となった。新型コロナウイルス感染症による死別を経験した家族へ面会が家族のグリーフへどのような影響を与えたかを明らかにし、臨終までに限られる病院でのグリーフケアの質向上に役立てたい。【方法】A病院に新型コロナウイルス感染症で入院し亡くなった患者の遺族へ、宮林悲嘆尺度を用いたアンケート用紙を送付し、返送をもって同意とした。アンケートは無記名、個人が特定できないよう配慮し鍵のかかるところで保存した。2022年11月~2023年1月に調査を行い、データは面会できなかった群と面会できた群を単純集計した。【結果】27名へアンケートを送付し、面会できなかった群11名中3名、面会できた群16名中5名から回答があった。アンケート結果を合計点と①思慕と空虚②疎外感③鬱的な不調④適応の努力の4つのカテゴリーに分けて集計した。合計平均点は面会できなかった群85.3点、面会できた群84.8点であった。カテゴリーベ別の平均点は面会できなかった群①46.0点②13.0点③15.7点④10.7点、面会できた群①45.0点②12.0点③15.4点④12.7点であった。【考察】一般に人は予期的悲嘆を経験することによって衝撃に耐える力を強められ、死別したときの衝撃が少なくて済むと言われている。家族が患者と面会することで、患者の病状を理解し死期が迫っていることを感じ予期的悲嘆を促すと考えていた。しかし、面会できなかった家族と面会できた家族の悲嘆に違いはなかった。新型コロナウイルス感染症の場合看取りだけでなく死別に伴う悲しみの共有や故人を偲ぶ機会である葬儀・火葬などの儀礼を行うことができないことも、家族が悲嘆を抱えてしまうことに繋がっていると考える。看護師は、患者の病状や死期を認識しケアを行っているが、患者や家族が同じように認識しているとはいえない。大切な人との別れや喪失に伴う患者や家族の悲嘆反応を理解し、患者と家族の気持ちに寄り添った看護を提供することが病院でのグリーフケアと考える。