第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

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ポスター

ポスター16群 看護職間・他職種との協働②

Wed. Nov 8, 2023 3:45 PM - 4:45 PM ポスター会場 (G1-G4)

座長:廣瀬 泰子

[ポスターY-16-5] 包括的指示に基づく看護師判断による静脈血採血と活用に向けた取り組み:第1 報

―血液ガスキットと生化学検査による誤差の検討―

呉屋 秀憲, 知花 幸範, 佐久間 博明, 諸見里 真, 和田 靖大, 新屋 朱莉, 榮野川 喜美子 (琉球大学病院)

Keywords:血液ガス分析キット、静脈血採血、検査値誤差、包括的指示、看護師判断による採血

【目的】看護師は患者の状態変化を早期発見することが求められる。その徴候を把握するために、即時の採血データを活用できれば、臨床判断に役立つ。近年の医師タスクシフトにより、包括的指示に基づいた看護師判断による採血が可能になった。そこで、迅速に取得できる静脈血検査値として、血ガス分析用キット(以下、血ガスキット)に注目した。血ガスキット(血漿)と生化学検査(血清)は検査法が異なり、誤差が生じるが、誤差の特徴や数値に言及した先行研究は少ない。本研究では包括的指示の根拠となるデータを得ることを目的に、誤差の特徴を明らかにする。【方法】A 病院救急外来では静脈血採血の後、適宜、同時に血ガスキットでも検査を行う。このときの生化学・CBC と血ガスキットによる静脈血検査値として、カルテからNa、K、Cl、Glu、Hb を取得した。対象はR2/4/1 ~ R4/8/1 に救急外来を受診し、15 歳以上、緊急度判定システム(JTAS)で赤・黄・緑のいずれかの判定を受けた530 名を適格とした。分析は検査値の誤差(血ガスキットから生化学を引いた値)の平均値(MD)、標準誤差(SD)を算出し、ブランド‐ アルトマン分析を用いて系統誤差と95%一致限界値(95% LOA)を算出した。取得した情報は匿名化・数値化した【結果】誤差(MD・SD・95% LOA)は、Na(0.45・2.15・-3.85 ~ 4.75)、K(-0.15・0.13・-0.41 ~ 0.11)、Cl(3.1・1.8・-0.5 ~ 6.7)、Glu(8.1・7.1・-6.1 ~ 22.3)、Hb(0.18・0.28・-0.38 ~ 0.74)となった。各項目のブランド‐ アルトマン分析において、Na、Hb は特定の方向への固定誤差は見られず、K は負の方向、Cl、Glu は正の方向への固定誤差がみられた【考察】K、Cl、Glu の値に特徴的な固定誤差がみられた。先行研究では、生化学のKは血小板凝固反応によって血ガスキットよりも高値になりやすいとされる。生化学のGlu は赤血球のブドウ糖消費反応によって低値になりやすく、Cl も同様に低いとされる。本研究では先行研究と同様の結果を得るとともに95% LOA を算出できた。血ガスキットの値から患者状態を評価する際、誤差の95% LOA を考慮する必要性が示された。今後も研究を重ね、包括的指示に基づいた看護師判断による採血の体制構築に繋げたい。