第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

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ポスター

ポスター19群 高齢者、認知症の人の看護①

Wed. Nov 8, 2023 2:30 PM - 3:30 PM ポスター会場 (G1-G4)

座長:尾形 由貴子

[ポスターY-19-2] 認知症マフの導入効果による看護師の心理的負担の変化

翠 恭子, 勝村 真帆, 坂井 直樹, 佐竹 五月 (JA 岐阜厚生連岐阜・西濃医療センター岐北厚生病院)

Keywords:認知症マフ、急性期病棟、認知症高齢者、困難感、ジレンマ

【目的】A 病棟は一般急性期混合病棟である。約60% が認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上であり、看護師は認知症患者の対応に困難感やジレンマを抱いている。認知症マフ(以下マフとする)は、イギリスの病院や高齢者施設で使用されている筒状のニット小物で、これらを触ることで安心感を得られるといわれている。今回、マフの導入により看護師の心理的負担の変化を明らかにすることを目的とする。【方法】質的記述的研究。マフについて看護師に説明、作成後に認知症患者に1か月程度使用。対象はA 病棟で二交代制勤務する全看護師15 名(女性13 名、男性2 名、臨床経験年数は平均13 年)に対し、1 グループ3 名× 5 グループに各15 分の半構成面接を実施した。インタビュー内容は1. 認知症患者対応の現状2. マフ導入後の効果3. 今後の課題である。得られた内容から逐語録を作成し、コード化し、意味内容の類似性と共通性に基づき、サブカテゴリー、カテゴリー化した。所属施設倫理委員会(番号20220802)の承認を得た。対象者に研究概要を説明し、参加の自由、不参加でも不利益が生じないことを文書で説明し同意を得た。【結果】逐語録より73コードが抽出され、15 のサブカテゴリー、5 つのカテゴリーが生成された。対応の現状は認知症看護に〔ケアの限界〕を感じ〔ケアに対するジレンマ〕を抱いていた。マフ導入後の効果は〔認知症の症状が改善する〕〔看護師自身も変化する〕であった。今後の課題は〔安全面を確保する〕であった。【考察】認知症患者対応の現状では、対応のもどかしさや疲弊感、家族に抑制の同意を得る申し訳なさ、抑制以外打つ手がない事から看護師は心理的負担を感じていたと考える。また、抑制に葛藤を抱き、安全重視のため抑制せざるを得ない状況にジレンマを持ち負担となっていた。マフ導入後、看護師は効果を実感し、患者が穏やかになる様子を捉えていた。看護師も目に見えて癒され、認知症患者への対応が変わり、抑制以外の選択肢が広がるなど看護師自身も変化したと考える。看護師の前向きな発言が増加し、認知症患者のケアに対する質向上への一助となり、心理的負担の軽減に繋がった。マフの柔らかさや触り心地が患者に安心感を与えると同時に看護師も穏やかな気持ちになったと考える。今後は、マフの応用等の活用方法や異食行動や付属品を口に運ぶリスクに対して、適切な管理方法などの課題がある。