[ポスターY-19-4] 認知症治療病棟におけるインフルエンザ感染対策の検討
―インフルエンザ集団感染を2 回経験して―
Keywords:認知症治療病棟、インフルエンザ、予防投与、個人防護具
【目的】A 病院は精神科単科の病院である。A 病院の認知症治療病棟で2014 年と2023 年にインフルエンザ集団発生があった。2 事例の経験から今後の感染対策の課題を検討する。【方法】A 病院B 病棟の2014 年と2023 年のインフルエンザ集団発生事例の発症人数・期間・喀痰吸引必要者・予防投与・個人防護具について調査し単純集計した。事例2 の患者の発症と喀痰吸引必要者についてはオッズ比で分析した。期間:〈事例1〉2014 年12 月26 日~ 2015 年1 月4 日〈事例2〉2023 年3 月18 日~ 2023 年3 月22 日。倫理的配慮:本研究は個人が特定されないように配慮し、所属施設の倫理委員会の承認を得た。【結果】〈事例1〉発症人数:患者40 名中26 名・職員23 名中4 名・計30 名。喀痰吸引必要者:40 名中0 名。予防投与:実施せず。〈事例2〉発症人数:患者40 名中7 名・職員21 名中7 名・計14 名。喀痰吸引必要者:40 名中4 名(うち、3 名発症)オッズ比24(95%信頼区間1.9888 ~ 289.61)予防投与:患者は発症者以外33 名3 月18 日から7 日間。職員は発症者以外12 名3 月20 日から7 日間。個人防護具:事例1.2 ともに職員は常時マスクを着用していたが、患者は着用していない。職員は業務中マスク着用を義務付けているが、フェイスシールド(以下シールドとする)の着用は義務付けておらず、喀痰吸引実施時もシールドは着用していなかった。事例2 では、患者のインフルエンザ発症をうけて、3 月18 日から職員はナースステーション以外ではシールドの着用を義務付けた。3 月20 日以降、職員の発症はなかった。発症した職員全員、シールドの着用義務付け前に出勤していた。【考察】事例1 は予防投与実施せず、発症人数は30 名だった。事例2 は、患者・職員ともに予防投与を実施し、発症人数は14 名だった。発症人数が30 名から14 名に減少したことから、予防投与が感染対策の効果の一つになったと推測する。しかし、職員の発症人数は事例2 のほうが多かった。患者の発症と喀痰吸引必要者のオッズ比は高く、シールドを着用した2 日後から職員の発症がなかったことから、喀痰吸引とシールドの着用の有無が職員の発症に影響したと推測される。認知症患者はマスクの着用が困難な場合が多い。職員は患者の特性やケアに応じて個人防護具を適切に着用することが重要であると考える。