[ポスターY-21-1] 運動機能が低下した高齢者の車椅子と椅子の食事姿勢の検討
―体幹と頭頸部に焦点をあてて―
Keywords:高齢者、食事、姿勢
【目的】多様な疾患や疾患の後遺症により運動機能が低下し移動手段に車椅子を使用する高齢者において、車椅子に着座して食事を摂取することが臨床で散見される。食事摂取は椅子座位が推奨されるが、高齢者における車椅子座位の食事姿勢の検討はない。そこで食事時の座位を車椅子から椅子に変更する事例について、車椅子と椅子の食事摂取時の座位姿勢の違いを、体幹と頭頸部に焦点をあてて検討した。【方法】対象者は脳梗塞後に第2 腰椎椎体骨折した86 歳女性。発症4 か月後の麻痺は左上下肢が徒手筋力テスト2 であり、車椅子座位において体幹のバランスは良好に保持できていた。腰部コルセット固定にて両下肢への荷重が可能となった。嚥下障害がなく常食を自立して摂取していた。データ収集方法は、車椅子座位と椅子座位における上体の矢状面を、差尺およびテーブルと臍部の距離を一致させ、たまごボーロの摂取場面を動画撮影した。動画から摂取前時、食物把持時、捕食時の3 時点の静止画を抽出した。さらに2 次元動作分析ソフトウェアを用いて、地面に対する垂直線と尾骨-上腕骨大結節部を結ぶ線が成す内角を体幹角度、地面に対する垂直線と外耳孔-前額部が成す内角を頭頚部角度とし、その数値をデータとした。角度は地面と垂直軸が交差する点を0°とし前方が正の方向とした。分析は車椅子座位と椅子座位における体幹角度と頭頚部角度について3 時点の角度と摂取前時の角度を基準として各角度の変化量を比較した。倫理的配慮は所属大学の倫理審査委員会の承認を受け(第657 号)、対象者の同意を得た。【結果】体幹角度は摂取前時/食物把持時/捕食時の順に、車椅子座位が-7.2°/ -1.5°/ -6.4°で、その角度変化量は0 / 5.7 / -4.9 であり、椅子座位が5.1°/ 5.5°/ 5.2°で、角度変化量は0 / 0.4 / -0.3 であった。頭頚部角度は車椅子座位が49.8°/ 62.0°/ 50.3°で、角度変化量は0 / 12.2 /-11.7 であり、椅子座位が58.5°/ 59.3°/ 59.0°で、角度変化量は0 / 0.8 / -0.3 であった。【考察】車椅子座位は摂取前時および食物把持時と捕食時の体幹が後傾し、頭頚部の角度が椅子座位より前傾していた。本事例は座位時の体幹のバランスが保持できていたが、対象者の状況と椅子の形状に応じて食事摂取の姿勢が変化するため、食事に適した椅子を選択する必要がある。