第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

ポスター

ポスター21群 高齢者、認知症の人の看護③

2023年11月8日(水) 10:30 〜 11:30 ポスター会場 (G1-G4)

座長:尾形 由貴子

[ポスターY-21-4] ストレングスモデルの実践

井上 美佐子, 河原 紀子 (岡山東中央病院)

キーワード:ストロングス、自立支援、対話

【目的】長期療養病棟では自宅復帰を目標とした自立支援を目的とするが、地域包括ケアシステムが構築された今、患者の持つ長所や強みを活かした「できること」を支援するストレングスモデルの視点への切り替えが求められる。そこで、本研究の目的は、ストレングスモデルを実践したことで患者のADL が向上した一事例の実践内容の有効性について検証することとする。【方法】1.事例紹介 患者氏名:A 氏(80代男性)A 氏は、在宅療養中に脊柱管狭窄症による腰痛と食欲低下で廃用症候群が進行し、B 病院に入院となる。入院後、胃瘻増設をして経管栄養+嚥下調整食摂取までに回復したが、誤嚥性肺炎を繰り返し嚥下調整食の摂取が困難となる。嚥下訓練で嚥下ゼリーを摂取できる程度の嚥下機能を獲得後C 病院に転院した。転院後、ST の摂食嚥下評価で、お楽しみとしての嚥下ゼリー1 個/日の摂取+経管栄養で誤嚥性肺炎を発症することなく3 年経過した。日常生活自立度C1、認知症レベル3 の状態であり、離床がリハビリ時のみとなっていた。歯磨きを目的として離床を促す中で、食事への興味を示したため、食事摂取に向けて介入することとなった。その際に、ストレングスモデルを導入した。本事例の研究に先立ち、本人及び家族に文書で研究の意義、目的を説明し同意を得た。2.介入方法:マッピングシートとして、「私のしたいこと」を“ 家に帰る。家族旅行や食事がしたい” として、「病気によって起こっていること」「受けている治療」「身体の状態」「夢の実現に役立つ現在の強み」「これまでの出来事」「夢の実現に役立つ経験」を書き出した。「現在の強み」の“ 誤嚥せずゼリーが食べられる” に基づき、ミキサー食から開始した。患者の食事摂取状況やADL の拡大状況について検証した。【結果】A 氏は、経管栄養が中心であったのが軟菜食の自力摂取が可能となった。また、介入前は歯磨きを目的とした離床のみで、ほぼ寝たきり状態であったが、車椅子での移動が可能となり、日中は車いすで過ごすようになった。さらに、トイレでの排便が可能となり、患者の希望である自宅退院ができた。【考察】マッピングシートによって患者の夢と現在の強みを整理したことで、ADL が拡大し夢の実現につながった。ストレングスモデルのように、マッピングシートによって本人の夢を目標とした介入方法を計画することが有効であったことが示されたと考える。