第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

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ポスター

ポスター30群 医療安全②

Thu. Nov 9, 2023 10:30 AM - 11:30 AM ポスター会場 (G1-G4)

座長:渡部 節子

[ポスターY-30-2] A 病院消化器外科病棟における末梢静脈ライン計画外抜去の発生要因と発生者の傾向に関する後ろ向き観察研究

五十嵐 勇太, 菅 侑也, 長島 薫実, 大浦 優作, 成田 芽生, 山岸 祐衣 (国際親善総合病院)

Keywords:消化器外科病棟、計画外抜去、末梢静脈ライン

【目的】末梢静脈ラインの計画外抜去は、治療の遅延や患者の苦痛を伴う重要な問題である。しかし、これまでの研究は主観的な判断に基づく介入研究が多く、発生要因に関する報告は少ない。本研究の目的は、末梢静脈ラインの計画外抜去の発生要因を明らかにすることである。【方法】単施設後ろ向き観察研究を行い、対象はA 病院消化器外科病棟に入院した2018 年度から2022 年度の患者とし、電子カルテから情報収集した。調査項目は計画外抜去の有無、年齢、性別、手術の有無、認知症の診断、抗精神病薬や睡眠薬の内服歴、入院形態、入院時の点滴投与方法、食事摂取状況とした。計画外抜去発生者は、発生時の入院日数、時間帯、せん妄症状、身体抑制の有無、食事摂取状況、点滴投与方法を追加調査した。また、計画外抜去の発生群と非発生群を比較し、発生に関連する因子を検討した。解析はフィッシャーの正確確率検定と2 項ロジスティック回帰分析を使用し、有意水準を5%とした。研究は日本看護協会倫理指針に従い、調査項目のみ収集し、パスワードを設定して研究者以外の閲覧を制限した。倫理審査は筆頭者の所属施設の臨床研究審査委員会で承認された。【結果】計画外抜去の発生率は3.2% で年齢、手術の有無、入院形態、入院時の食事摂取状況、点滴投与方法、認知症の診断に有意差を認めた。ロジスティック回帰分析の結果、年齢、入院形態、認知症の診断が計画外抜去発生の上昇と関連した(年齢:オッズ比1.07、95%信頼区間1.05-1.10、p < 0.001. 入院形態[ 緊急]:オッズ比2.17、95%信頼区間1.13-4.16、p < 0.05. 認知症[ あり]:オッズ比3.44、95%信頼区間2.36-5.01、p < 0.001)。また、点滴投与方法は計画外抜去発生の減少と関連した(点滴なし:オッズ比0.24、95%信頼区間0.88-0.66、p < 0.05)。発生群の傾向では、発生時の入院日数が中央値4日[2-7] で、夜勤帯の割合が高く(61.6%)、多くの患者にせん妄症状を呈していた(97.3%)。【考察】本研究では年齢、緊急入院、認知症の診断が計画外抜去の発生と関連し、発生時期やせん妄症状等の発生者の傾向が明らかになった。要因によっては介入が困難だが、計画外抜去の予防には、入院後の継続的なせん妄評価や点滴投与方法の検討など、多面的なアプローチが必要である。