第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

ポスター

ポスター33群 術後の機能障害への対応

2023年11月9日(木) 09:00 〜 10:00 ポスター会場 (G1-G4)

座長:松井 弘美

[ポスターY-33-5] 腹腔鏡下前立腺全摘除術の患者が骨盤底筋体操を継続していくための指導介入

中谷 遥香 (埼玉石心会病院)

キーワード:排尿障害、骨盤底筋体操、腹腔鏡下前立腺全摘除術、前立腺がん、自己効力感

【目的】前立腺がんの手術療法の合併症として尿失禁、排尿困難、頻尿等を含む排尿障害をきたすことが認められている。術後の尿失禁に対して骨盤底筋体操を実施するが、改善するまでに長期間を要し、退院後も患者自身が継続的に実施していく必要がある。当研究は、腹腔鏡下前立腺全摘除術の患者に対して骨盤底筋体操の指導介入を行い指導に対する患者の反応を観察することで、患者の個別性に合わせたより良い骨盤底筋体操の指導介入方法を検討する。【方法】腹腔鏡下前立腺全摘除術を受ける患者1 人に対し事例研究を実施した。収集した情報を経時的に記録、情報を整理し、患者の背景からアセスメントを実施した。工夫した指導方法とそれに対する患者の反応に焦点を当て、文献を用いて患者の状態を分析・考察した。患者より口頭で同意を取得し、得られた内容は本研究以外には使用しない他、個人が特定されるような情報が研究担当者以外に知られることのないように厳重に管理する。【結果】入院時のA 氏の生活歴を聴取したことで、A 氏が病気に関して周囲から否定的な環境下で生活していることが分かった。また、今までの病気やこれからの手術に対して前向きな発言が多くあり、自己効力感を高める素質があると判断した。自己効力感に影響を与える要素として、1. 制御体験2. 代理体験3. 社会的説得4. 生理的,感情的状態の4 項目があるが、A 氏の自己効力感をより高めるために全ての項目に対して介入した。A 氏は腹腔鏡下前立腺全摘除術を実施後、尿道カテーテルを抜去してから尿失禁が発生したが、A 氏自身でセルフケアを行えていた。入院中は創部痛があり、骨盤底筋体操は1 日10 回の実施でとどまってしまったが、肯定的な関わりを継続して行った。退院後に聴取を行った結果、退院後も生活に合わせて骨盤底筋体操を継続して実施できていた。【考察】自己効力感は行動の選択だけではなく、行動を持続していくためにも必要な要素である。患者の生活歴を聴取することは、患者の疾患に対する考え方や今後起こりうる障害に対して対処行動をとれるかどうかの指標となる。今回の事例では患者との会話から自己効力感があるかを予測し、入院期間中に自己効力感を高める関わりを行うことで、退院後も骨盤底筋体操を継続することができていた。今後は声かけによる患者の反応に注目し、よりその人に合った自己効力感を高める介入方法を検討していく必要がある。