第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 横浜

講演情報

ポスター

ポスター35群 創傷ケア②

2023年11月9日(木) 13:15 〜 14:15 ポスター会場 (G1-G4)

座長:小田 慈

[ポスターY-35-1] A 有床診療所の病棟における褥瘡推定発生率ゼロを目指した取り組みの成果

長谷川 幸恵, 松本 美奈, 郡 美代子 (手稲家庭医療クリニック)

キーワード:皮膚・排泄ケア認定看護師、実践教育、質の向上

【目的】A 有床診療所では、皮膚・排泄ケア認定看護師(以下WOCN)が在籍し6 年間が経過した。病棟の患者層は終末期がんで、最期を過ごす場として入院を希望される方が多い。2016 年度日本褥瘡学会実態調査委員会報告では、療養型病床を有する一般病院の褥瘡推定発生率は1.28%にあるのに対し、A 有床診療所の病棟における褥瘡推定発生率は2017 年度が30.4%であった。2019 年からWOCN は病棟配属後、現場で4 年間にわたり勉強会とスタッフの実践評価を行うことで、2022 年には2.4%まで低下した。本研究は、褥瘡推定発生率の低下を維持して看護の質の向上を保つために、WOCN が4 年の実践教育により褥瘡推定発生率が減少した要因を明らかにする。【方法】研究方法は、A 有床診療所のWOCN が行った2019 ~ 2022 年度の実践教育の内容を、認定看護師実践報告書、褥瘡委員会議事録、病棟会議議事録から抽出し、褥瘡推定発生率が減少した要因についてドナベディアンモデルを用いて、分類して整理した。抽出したデータは、個人を特定できないよう倫理的配慮を行った。本研究は、所属施設管理者の承認を得た。【結果】<構造>年間教育計画を立案・毎日のケアカンファレンスに褥瘡評価の組み込み・褥瘡委員会の看護メンバーの増員・スタッフが可能な褥瘡評価手順の作成・褥瘡評価に必要な道具の購入・看護管理者との定期報告会議・褥瘡推定発生率の定期的な把握・既存のマットレスの評価・体圧分散マットレスの導入をした。<過程> 2019 年度と2020 年度は、知識中心の勉強会を実施した。内容は、スタッフ全員にDESIGN-RとOH スケールのアセスメント、OH スケールによるマットレスの選択、おむつと褥瘡の関係性、踵の良肢位とポジショニングとした。知識中心の勉強会では褥瘡推定発生率の低下にはつながらなかった。現場を観察するとスタッフによって異なるケア実践がみられたため、2021 年度と2022 年度は、実践中心の勉強会を実施した。内容は、スタッフ全員に有効的なポジショニング技術の習得を目的に患者体験型学習を取り入れた個別指導やスタッフの悩みに個別に対応し細かいケアを一緒に実践した。【考察】褥瘡推定発生率が減少した要因は、構造的にケア環境を整えたことに加え、病棟チームの一員としてタイムリーに個別的な細やかなケアを一緒に実践し続けたことであると考える。