第56回日本作業療法学会

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一般演題

脳血管疾患等

[OA-11] 一般演題:脳血管疾患等 11

Sat. Sep 17, 2022 1:40 PM - 2:40 PM 第2会場 (Annex1)

座長:髙見 美貴(秋田県立リハビリテーション・精神医療センター)

[OA-11-1] 口述発表:脳血管疾患等 11急性期病院入院脳卒中患者における意識障害の変化に関連する要因の検討

松本 幸樹12高見 彰淑2牧野 美里2 (1旭川赤十字病院リハビリテーション科,2弘前大学大学院保健学研究科)

【目的】脳卒中の治療については,脳卒中治療ガイドラインによると,予測される機能,在院日数,転帰先を参考にしてリハビリテーション(リハ)を計画することとされている.急性期に頻発する意識障害は,心身機能や活動能力などに悪影響を及ぼすため,ガイドラインに準じ,意識障害の変化を予測し,予測に基づいて治療を計画する必要がある.先行研究では,意識障害が転帰の予測因子であること,視床下部後核を含む脳幹病変があるもの,脳浮腫があるものは意識障害が重度であることが報告されているが,急性期における意識障害の変化に関連する要因を検討した報告は見当たらない.そこで,本研究は脳卒中急性期における意識障害の変化率に関連する要因を検討することを目的とした.
【方法】本研究は弘前大学大学院保健学研究科倫理委員会の承認(整理番号2021-013)を得て実施した.研究デザインは前向き観察研究とし,診断日から2週間の経過を追跡した.対象は,当院に入院した脳卒中患者93名とした.除外対象は失語症を有する者,2週間以内に退院した者,病巣体積の算出が困難であるくも膜下出血患者とした.調査項目は,基本情報として,年齢,性別,脳卒中タイプ,病巣部位(脳幹病変の有無),病巣体積,増悪イベント(再梗塞など)の有無を,既往歴として,脳卒中および認知症の有無を,合併症として,脳浮腫およびせん妄の有無を,入院時の評価として,意識障害および脳卒中重症度を,2週間後の評価として意識障害を,評価結果の変化率として,意識障害の変化率を,治療として,手術の有無,血栓溶解療法の有無,リハの総実施時間/日(分),座位練習,立位練習,歩行練習の開始日および実施の有無を収集した.意識障害評価にJapan ComaScale(JCS)を,脳卒中重症度評価にNational Institute of Health Stroke Scale(NIHSS)を,せん妄評価に日本語版Intensive Care Delirium Screening Checklistを用いた.JCSは3名で別々に評価し最も低い点数を採用した.評価結果の変化率は,実際に改善した点数(2週後点数-入院時点数)/改善する可能性がある点数(最大点数-入院時点数)で計算した.統計解析は,まず脳梗塞群と脳出血群の2群間で入院時と2週間後のJCSおよびJCS変化率をMan-Whitney U検定を用いて比較した.次に,脳梗塞群と脳出血群の各タイプにおけるJCSの変化率と各変数との関連を,Spearmanの順位相関係数を用い分析した.これらはSPSSを用い,有意水準は5%とした.
【結果】脳梗塞群は脳出血群よりも,入院時JCS(p<0.001)および2週間後JCS(p=0.048)が軽症であった.脳梗塞群では,JCS変化率が大きいものほど,年齢(r=-0.25)が若く,増悪イベント(r=-0.34)およびせん妄(r=-0.45)を有するものが少なく,入院時NIHSS(r=-0.25),2週間後JCS(r=-0.67)が良好であり,歩行練習(r=0.26)を実施しているものが多かった.一方,脳出血群では,JCS変化率が大きいものほど,年齢(r=-0.25)が若く,せん妄(r=-0.97)を有するものが少なく,2週間後JCS(r=-0.91)が良好であった.
【考察】脳出血は脳梗塞よりも意識障害が重度である可能性が示唆された.脳梗塞においては年令が若い,増悪イベントおよびせん妄が無い,入院時の脳卒中重症度および2週間後の意識障害が良好であるという特徴があるもの,脳出血においては年令が若い,せん妄が無い,2週間後の意識障害が軽症であるという特徴があるものは意識障害の回復が良好である可能性が示唆された.また,脳梗塞患者に対し,歩行練習が意識障害の回復に寄与する可能性が示唆され,詳細な分析を行う必要が考えられた.