[OA-12-5] 口述発表:脳血管疾患等 12急性期脳卒中患者への電気刺激療法が上肢機能に与える影響に関する検討
【はじめに】
脳卒中後に生じる運動麻痺についてGoddesらは,75%に上肢運動麻痺が生じると報告しており,集中的なリハビリテーションを必要とすることが多いと言われている.脳卒中ガイドライン2021では,中等度から重度の上肢麻痺に対して,もしくは肩関節亜脱臼に対して,神経筋電気刺激を行うことは妥当であるとされている(推奨グレードB,エビデンスレベル中).当院でも従来の運動療法に加え,随意運動介助型電気刺激(以下,IVES)とADLなどの動作練習を並行して実施する症例が増えてきている.過去の研究では,回復期におけるIVES使用例でFugl -Meyer assessment(以下,FMA)などの改善を認めたシングルケーススタディや,コントロール群とIVES使用群の2群間比較の報告がある.急性期では事例検討による報告が多く,2郡間で比較検討した報告はみられない.本研究では急性期脳卒中患者に対するIVESの実施が上肢機能やADLへどのように影響するかを検証した.
【対象】
2020年3月から2022年1月に当院SCUに入室し,データ収集が行えた237例のうち,Ⅱ桁以上の意識障害,介入に大きな阻害となる高次脳機能障害がある患者を除外した19例を対象とした. IVESにてパワーアシストモードやノーマルモードによる麻痺筋の電気刺激を行った期間(2020年3月から2021年4月)をIVESのみ群,パワーアシストモードによる電気刺激にADL練習を組み合わせた期間(2021年5月から2022年1月)をIVES+ADL練習群として比較検討した.
【方法】
検討項目は年齢,性別,利き手,診断名,損傷半球,麻痺側,FMA,上肢・手指,Brunnstrom Stage(以下,BRS),Functional Independence Measure(以下,FIM)の下位項目(食事,整容,清拭,更衣,トイレ,排尿管理,排便管理,移乗,トイレ移乗,浴槽・シャワー移乗,歩行,階段),運動FIM合計,FIM総得点とした.統計解析は2郡間の比較として,カテゴリー変数はχ2乗検定,量的変数はMann-Whitney U testを用いた.解析はSPSSver.21を使用し,有意水準は0.05とした.なお,本研究は当院倫理委員会の承認を得ている.
【結果】
両群間の比較では,年齢,性別,利き手,診断名,損傷半球,麻痺側,FMA,BRS,FIMの下位項目,初回評価の運動FIMの合計,初回評価のFIM総得点では有意差を認められなかった.最終評価の運動FIM合計,FIM総得点にて有意差を認めた(P<0.01).
【考察】
急性期脳卒中患者の上肢麻痺に対してIVESを使用し,ADL練習を実施することでFMA,BRSは有意差を認めなかったが,最終評価のFIMの運動項目の合計,総得点の変化で有意差を認めた.IVESによる電気刺激に合わせてADL練習を行い運動イメージを反復することで,体性感覚入力増加と麻痺手の随意的運動促通,相反抑制促進などが得られたことが麻痺側使用頻度の増加につながり,結果的にFIMの向上が得られたものと考えられる.しかし今回は発症間もない時期から4週間ほどの対象者へのIVES実施であったため,ADLの参加を関連させるうえではmotor activity log(以下,MAL)のような質的な評価が必要になってくると考える.今後はMALを使用してIVESのノーマルモード,パワーアシストモードを使用していくことで,実際のADLにて使用頻度,使用感が変化していくのかの有用性を検証していく必要もあると思われる.
脳卒中後に生じる運動麻痺についてGoddesらは,75%に上肢運動麻痺が生じると報告しており,集中的なリハビリテーションを必要とすることが多いと言われている.脳卒中ガイドライン2021では,中等度から重度の上肢麻痺に対して,もしくは肩関節亜脱臼に対して,神経筋電気刺激を行うことは妥当であるとされている(推奨グレードB,エビデンスレベル中).当院でも従来の運動療法に加え,随意運動介助型電気刺激(以下,IVES)とADLなどの動作練習を並行して実施する症例が増えてきている.過去の研究では,回復期におけるIVES使用例でFugl -Meyer assessment(以下,FMA)などの改善を認めたシングルケーススタディや,コントロール群とIVES使用群の2群間比較の報告がある.急性期では事例検討による報告が多く,2郡間で比較検討した報告はみられない.本研究では急性期脳卒中患者に対するIVESの実施が上肢機能やADLへどのように影響するかを検証した.
【対象】
2020年3月から2022年1月に当院SCUに入室し,データ収集が行えた237例のうち,Ⅱ桁以上の意識障害,介入に大きな阻害となる高次脳機能障害がある患者を除外した19例を対象とした. IVESにてパワーアシストモードやノーマルモードによる麻痺筋の電気刺激を行った期間(2020年3月から2021年4月)をIVESのみ群,パワーアシストモードによる電気刺激にADL練習を組み合わせた期間(2021年5月から2022年1月)をIVES+ADL練習群として比較検討した.
【方法】
検討項目は年齢,性別,利き手,診断名,損傷半球,麻痺側,FMA,上肢・手指,Brunnstrom Stage(以下,BRS),Functional Independence Measure(以下,FIM)の下位項目(食事,整容,清拭,更衣,トイレ,排尿管理,排便管理,移乗,トイレ移乗,浴槽・シャワー移乗,歩行,階段),運動FIM合計,FIM総得点とした.統計解析は2郡間の比較として,カテゴリー変数はχ2乗検定,量的変数はMann-Whitney U testを用いた.解析はSPSSver.21を使用し,有意水準は0.05とした.なお,本研究は当院倫理委員会の承認を得ている.
【結果】
両群間の比較では,年齢,性別,利き手,診断名,損傷半球,麻痺側,FMA,BRS,FIMの下位項目,初回評価の運動FIMの合計,初回評価のFIM総得点では有意差を認められなかった.最終評価の運動FIM合計,FIM総得点にて有意差を認めた(P<0.01).
【考察】
急性期脳卒中患者の上肢麻痺に対してIVESを使用し,ADL練習を実施することでFMA,BRSは有意差を認めなかったが,最終評価のFIMの運動項目の合計,総得点の変化で有意差を認めた.IVESによる電気刺激に合わせてADL練習を行い運動イメージを反復することで,体性感覚入力増加と麻痺手の随意的運動促通,相反抑制促進などが得られたことが麻痺側使用頻度の増加につながり,結果的にFIMの向上が得られたものと考えられる.しかし今回は発症間もない時期から4週間ほどの対象者へのIVES実施であったため,ADLの参加を関連させるうえではmotor activity log(以下,MAL)のような質的な評価が必要になってくると考える.今後はMALを使用してIVESのノーマルモード,パワーアシストモードを使用していくことで,実際のADLにて使用頻度,使用感が変化していくのかの有用性を検証していく必要もあると思われる.