[OA-12-6] 口述発表:脳血管疾患等 12把持力計と手内筋への低周波刺激を用いた治療効果の検証
【はじめに】把持動作は我々の生活の中で様々な活動に関与しており,生活の質や幅に多くの影響を与えている.脳血管疾患における把持動作を阻害する原因は感覚障害や運動麻痺と多岐にわたるが,介入手段はペグ操作などの巧緻動作訓練やハンドグリップ等の筋力トレーニングに代表される動作を主たる手段として実施されており,病態解釈を含め介入手段は乏しくセラピストの経験に委ねられている.安定した把持力動作には手内筋の機能が重要であるが,手内筋に対するアプローチは限られている.今回,脳血管障害患者2名を対象とした把持力計測と,手内筋に対する低周波刺激を用いた即時効果について検証を行ったので報告する.【目的】手内筋に対する低周波刺激の即時効果について把持力評価を行い検証する.【方法】対象は脳血管障害右麻痺患者2名(case1:BRS上肢Ⅴ,手指Ⅳ,感覚表在3/5,深部4/5,case2:BRS上肢Ⅳ,手指Ⅳ,感覚表在5/5,深部5/5).手内筋に対する低周波刺激(SIXPAD Hand Pulse:MTG社製)を用いて約5分間の介入を実施し,初回施行前後での把持力(GF)および加速度から把持された物体に対する把持力の安定性について比較を行った. GF測定には,30mm³形状の計測装置(テック技販社製)を用い,健側,患側で5秒間把持(持ち上げる,保持,降ろす)を60秒間に複数回反復し,軽量(L173g),中量(M263g),重量(H343g)の3パターンで実施して物体重量の違いに基づく力量(ニュートン:NT)調節を検証し,中量での30秒間保持から把持力の力量調整と物体動揺の周波数特性を,30秒間上下運動から把持力と力量調整を計測した.【結果】Case1は5秒把持課題にて患側と健側間での力量に大きな差は認めず(NT(患側/健側)₌L6.9/5.8,M7.9/8.6,H10.9/9.3)重量の違いの識別も可能であったが,30秒課題では患側は徐々に力量が低下し,上下課題では筐体の傾きが大きくGFも安定していなかった.case2は5秒課題にて重量の識別は可能なものの,健側に比べて患側で過剰な出力(NT₌L1.6/3.6,M2.9/4.6,H4.0/8.3)を計測した.30秒課題では出力の安定までに20秒弱の時間を要し,上下課題ではGFこそ安定いているも筐体の揺れは小さかった.低周波刺激後,case1では30秒課題でGF平均は減少し安定した出力となり筐体の揺れが安定した.case2では5秒課題にて過剰な出力が減少し( NT₌L2.9,M3.6,H6.0),30秒課題でも10秒程度でGFは安定した.上下課題ではGFの減少に加えて,過度な固定が消失し筐体の揺れが生じた.【考察】両case共に即時効果を確認し,手内筋に対する低周波刺激が把持機能の改善に影響する可能性が示唆された.手内筋の促通が行われた結果,中枢からの努力性の代償が減少し,上下課題において筐体の揺れが生じたと考える.case2は運動機能面ではcase1に劣っていたものの,即時効果としては良好であったと考える.case1の効果が薄かった理由としては感覚障害の有無が影響している可能性があることや,筋持久力といった持続的な出力についても今後の検証が必要と考えられる.【倫理的配慮】報告にあたり対象者全ての同意を得ている.