[OA-13-4] 口述発表:脳血管疾患等 13回復期における脳卒中後上肢運動失調に対するロボット療法の治療効果
【はじめに】上肢運動失調を改善させる方法として,従来より重錘負荷訓練や弾性緊縛帯訓練が行われてきたが,エビデンスは示されていない.近年では,ロボットデバイスを使用した運動失調に対する介入(以下,ロボット療法)の有効性が検討されているものの,脳卒中後の上肢運動失調に対する介入報告は皆無である.
今回は,脳卒中後に運動失調を呈した症例に対して,従来の訓練(ROM訓練や重錘負荷訓練)と上肢運動麻痺の改善に有効である上肢機能練習用ロボットReoGo-Jを使用したロボット療法(以下,Reo訓練)を時期別に提供することで,Reo訓練が上肢運動失調の改善に与える影響を探索的に検討したため報告する.
【対象】症例は,右内包後脚の脳梗塞により左側の運動麻痺と運動失調を呈した右利きの70代男性.急性期病院での加療後,第21病日に当院へ転院となった.転院時の運動麻痺の程度は,Br.stage上肢Ⅴ,手指Ⅵ,下肢Ⅴであり,FMA上肢項目は56点であった.また,感覚は表在・深部ともに正常であった.運動失調評価であるSARAは4.5点であり,上肢の振戦症状と測定障害,反復拮抗運動障害を認めた.上肢の活動評価であるBBTは(健側/患側)62/39個であり,MAL-Aは2.13点であった.MMSEは29点であった.FIMは運動項目が65点,認知項目が28点で,ADLは一部見守りを要していたが,杖歩行にて移動が可能であった.
【方法】作業療法では,課題指向型訓練を中心とした介入を40分/日 週7日に加え,従来訓練としてROM訓練と重錘負荷訓練を合わせて20分/日 週5日を2週間実施した後に,Reo訓練を20分/日 週5日を2週間実施した.評価は,FMA,SARA,BBT,MAL-Aとし,各介入前後に行った.なお,本症例に対しては,口頭にて本報告に関する十分な説明を行い,報告の同意を書面にて得た.
【経過】以下に評価結果の推移 [従来訓練開始前→従来訓練終了後(Reo訓練開始前)→Reo訓練終了後] を示す.FMA上肢項目は60→60→60点, SARAは2.5→2.5→2.5点で指鼻試験や手回内外試験は変化を認めなかった.BBTは(健側/患側)70/50→70/53→75/58個であった.MAL-Aは2.50→2.87→3.63点と推移し「身体を拭く」や「物を動かす」などの項目で改善を認めた.
【考察】Reo訓練による集中的な反復運動は,FMAをアウトカムとした脳卒中後の上肢麻痺の改善に有効であると示されている(Takahashi K, 2018).今回は,脳卒中後に上肢運動失調を呈する症例に対して,従来の訓練とReo訓練を時期別に提供し,どちらの期間においても,FMAやSARAにおける改善は認めなかったものの,BBTとMAL-Aにおける改善を認めた.一方では,Reo訓練を提供した時期の方がBBTやMAL-Aにおける改善程度が大きく,発症からの時期を鑑みると,Reo訓練がより上肢の活動的側面や使用行動へ好影響を及ぼした可能性がある.この理由としては,Reo訓練におけるリーチ動作の反復運動が上肢の協調的な動きを改善させ,BBTにおけるブロックの反復移動という側面に反映された可能性がある.また,Linらは,軽度の上肢運動麻痺患者におけるBBTの得点とMAL-Aの得点の間には中等度の相関関係があると示しており,Hsiehらは,MAL-Aにおける使用頻度の向上にはBBTの得点が寄与していると報告していることから,BBTの改善がMAL-Aの改善につながった可能性が考えられた.以上より, Reo訓練が脳卒中後の上肢運動失調においては上肢の活動的側面の機能改善をもたらし,その機能改善が患手の使用頻度の向上につながる可能性が示された.しかし,今回の結果は従来訓練の結果を持ち越している可能性も否定できないため,集団データによる検証やランダム化比較試験による効果検証が必要である.
今回は,脳卒中後に運動失調を呈した症例に対して,従来の訓練(ROM訓練や重錘負荷訓練)と上肢運動麻痺の改善に有効である上肢機能練習用ロボットReoGo-Jを使用したロボット療法(以下,Reo訓練)を時期別に提供することで,Reo訓練が上肢運動失調の改善に与える影響を探索的に検討したため報告する.
【対象】症例は,右内包後脚の脳梗塞により左側の運動麻痺と運動失調を呈した右利きの70代男性.急性期病院での加療後,第21病日に当院へ転院となった.転院時の運動麻痺の程度は,Br.stage上肢Ⅴ,手指Ⅵ,下肢Ⅴであり,FMA上肢項目は56点であった.また,感覚は表在・深部ともに正常であった.運動失調評価であるSARAは4.5点であり,上肢の振戦症状と測定障害,反復拮抗運動障害を認めた.上肢の活動評価であるBBTは(健側/患側)62/39個であり,MAL-Aは2.13点であった.MMSEは29点であった.FIMは運動項目が65点,認知項目が28点で,ADLは一部見守りを要していたが,杖歩行にて移動が可能であった.
【方法】作業療法では,課題指向型訓練を中心とした介入を40分/日 週7日に加え,従来訓練としてROM訓練と重錘負荷訓練を合わせて20分/日 週5日を2週間実施した後に,Reo訓練を20分/日 週5日を2週間実施した.評価は,FMA,SARA,BBT,MAL-Aとし,各介入前後に行った.なお,本症例に対しては,口頭にて本報告に関する十分な説明を行い,報告の同意を書面にて得た.
【経過】以下に評価結果の推移 [従来訓練開始前→従来訓練終了後(Reo訓練開始前)→Reo訓練終了後] を示す.FMA上肢項目は60→60→60点, SARAは2.5→2.5→2.5点で指鼻試験や手回内外試験は変化を認めなかった.BBTは(健側/患側)70/50→70/53→75/58個であった.MAL-Aは2.50→2.87→3.63点と推移し「身体を拭く」や「物を動かす」などの項目で改善を認めた.
【考察】Reo訓練による集中的な反復運動は,FMAをアウトカムとした脳卒中後の上肢麻痺の改善に有効であると示されている(Takahashi K, 2018).今回は,脳卒中後に上肢運動失調を呈する症例に対して,従来の訓練とReo訓練を時期別に提供し,どちらの期間においても,FMAやSARAにおける改善は認めなかったものの,BBTとMAL-Aにおける改善を認めた.一方では,Reo訓練を提供した時期の方がBBTやMAL-Aにおける改善程度が大きく,発症からの時期を鑑みると,Reo訓練がより上肢の活動的側面や使用行動へ好影響を及ぼした可能性がある.この理由としては,Reo訓練におけるリーチ動作の反復運動が上肢の協調的な動きを改善させ,BBTにおけるブロックの反復移動という側面に反映された可能性がある.また,Linらは,軽度の上肢運動麻痺患者におけるBBTの得点とMAL-Aの得点の間には中等度の相関関係があると示しており,Hsiehらは,MAL-Aにおける使用頻度の向上にはBBTの得点が寄与していると報告していることから,BBTの改善がMAL-Aの改善につながった可能性が考えられた.以上より, Reo訓練が脳卒中後の上肢運動失調においては上肢の活動的側面の機能改善をもたらし,その機能改善が患手の使用頻度の向上につながる可能性が示された.しかし,今回の結果は従来訓練の結果を持ち越している可能性も否定できないため,集団データによる検証やランダム化比較試験による効果検証が必要である.