第56回日本作業療法学会

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一般演題

脳血管疾患等

[OA-13] 一般演題:脳血管疾患等 13

Sun. Sep 18, 2022 8:30 AM - 9:30 AM 第2会場 (Annex1)

座長:外川 佑(山形県立保健医療大学)

[OA-13-5] 口述発表:脳血管疾患等 13ReoGo‐Jを用いた上肢機能訓練の有用性について―傾向スコアマッチングを用いた比較検討―

河野 真太朗1今岡 信介2石垣 賢和3竹林 崇4 (1医療法人社団仁泉会畑病院(元 大分リハビリテーション病院)リハビリテーション部,2社会医療法人 敬和会 大分岡病院 総合リハビリテーション課,3医療法人社団 輝生会 在宅総合ケアセンター元浅草,4大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科)

【背景】
AHAガイドライン2016では,中等度以上の上肢麻痺を呈した対象者の訓練量を確保する目的でロボット療法が推奨されている.本邦で用いられるロボットの1つにReoGo-J(以下RGJ)があり,有用性が示唆されているが,比較対照群を設定した研究は散見される程度であり,その有用性や活用方法は議論の余地がある.本研究の目的は,過去に取得されたデータプールを用いて,従来の一般的な作業療法に加え,麻痺側上肢の訓練機会を増加する目的でロボット療法を行った際の機能回復推移を探索的に調査することである.
【方法】
本研究はケースコントロール研究であり,当該機関の倫理審査委員会の承認を得て実施された.説明と同意では「人を対象とする医学研究に関する倫理指針」に沿って,本研究の情報を公開した後,研究への参加を拒否する機会を保障した.介入群の包含基準はFMAが49点以下,RGJを用いたロボット療法が1回20分,週3~4回の頻度で4週間継続できた者とし,再発患者と調査項目に欠損がある者を除外した.対照群は先行研究(石垣賢和,2020)から,1か月間の,従来の上肢機能訓練を含む作業療法が提供された214名の脳卒中患者のデータを使用した.この2群で従属変数をロボット療法実施の有無,独立変数を年齢,発症からの期間,介入直前のFMA,病型としたロジスティック回帰分析から傾向スコアを算出し,最近傍マッチング法を実施した.2群間における背景因子は年齢,性別,病型,発症からの期間,麻痺側,FMA合計,FMA肩肘前腕項目,FIM合計,FIM運動項目,FIM認知項目を比較した.効果指標は介入開始1か月後のFMAの変化量を合計得点と肩肘前腕項目に分けて比較した.加えて,FMAのMCIDとされる9点(Kamal Narayan Arya,2011)を超える向上を示した対象者の比率の差を比較した.
【結果】
ロジスティック回帰分析の結果から算出した傾向スコアの分散は両群ともに‐1.38±0.63で,37組がマッチングされた.マッチング前の背景因子の比較では,発症からの期間,麻痺側,FMA合計・肩肘前腕項目において有意差を認めたが,マッチング後はFIM認知項目のみ有意差(p=0.03)を認めた.FMAの変化量では,全得点は2群間に有意差を認めなかった(p=0.07)が,肩肘前腕項目は介入群が有意に向上した(p=0.05).MCIDを超える改善を示した対象者の割合は介入群が有意に高かった(p=0.046).
【考察】
傾向スコアマッチング後は,上肢機能の交絡因子と報告されている年齢,発症からの期間,介入開始時のFMA,病型の有意差は認めなくなったことから,麻痺側上肢の介入手法による訓練量の影響を調査する上で,比較的バイアスが調整できた2群が設定出来た.2群間では,介入群においてのみ,RGJが対象とする肩肘前腕の機能に有意な改善を認め,MCIDを超えた患者の割合も介入群が有意に高かった.このことは,RGJを用いた上肢機能訓練は従来の上肢機能訓練と比較して,意味のある改善をもたらす可能性が示唆されたと考える.本研究においては,通常訓練量を統一出来ていないため,この影響を否定できない.ただし,RGJを用いた訓練の影響が及びにくい手関節や手指に対するアウトカムを含んだFMAの合計得点においては,有意差を認めなかったことから,RGJは,肩肘前腕の訓練機会を担保し,上肢機能に影響を与えることが示唆されたものと考える.