第56回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

脳血管疾患等

[OA-7] 一般演題:脳血管疾患等 7

2022年9月17日(土) 10:10 〜 11:10 第8会場 (RoomE)

座長:大野 勘太(東京工科大学)

[OA-7-2] 口述発表:脳血管疾患等 7NIRS(near infrared spectroscopy)を用いたアパシーの類型化の検証

海光 拓磨12木村 大介3山田 和政4 (1.医療法人和光会 山田病院リハビリテーション部, 2.関西医療大学大学院保健医療学研究科, 3.関西医療大学保健医療学部 作業療法学科, 4星城大学リハビリテー ション部 リハビリテーション学科)

【背景】アパシーは,身体機能や認知機能,ADL等の低下と関連が指摘され,臨床上着目すべき症候であるが(yao,2015;武田,2021),動機づけの欠如という曖昧な心理学的概念で捉えるに留まり,効果的な介入法は確立されていない.最近では,アパシーを類型化し,その特徴に合わせた介入が提起されている(Levy and Dubois,2006).アパシーは,目標志向型行動(goal directed behaviour:GDB)のプロセスの破綻から「情動感情障害型」「認知行動処理障害型」「自己賦活障害型」の3つの類型に分類され,神経ネットワークも想定されている(Jonathan,2019).具体的には,「情動感情障害型」では,中脳被蓋野→側坐核→腹側線条体→眼窩野→前部帯状回,「認知行動処理障害型」は,中脳被蓋野→側坐核→前頭極→DLPFC→下頭頂小葉→楔前部→中部帯状回,「自己賦活障害型」は,中脳被蓋野→帯状回→補足運動野→内側運動野が想定されている.これらの神経ネットワークをそれぞれ構成する脳領域の1つの機能不全の検出は,ネットワーク全体の機能不全を捉えることになり,アパシーを3類型に分類可能になる.
【目的】本研究は,near infrared spectroscopy(NIRS)の計測結果を分析することで,脳卒中後のアパシーが「情動感情障害型」「認知行動処理障害型」「自己賦活障害型」の3類型に分類することを試みることを目的とする.
【方法】対象は,やる気スコアでアパシー陽性と判定された脳卒中患者22名とした.NIRSの計測Spectratech社製のOEG-16を用い,「target課題」の結果から「control課題」の結果を差し引くことにより目的とした脳活動に関するデータを得るブロックデザインを用いた.作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)で作業療法目標設定をする課題をtarget課題,control課題は50音の音読とした.関心領域は,背外側前頭前野(DLPFC),前頭極(FP),眼窩野(OFC)である.分析は,まずアパシーの類型化を行うため,NIRSで測定したDLPFC,FP,OFCを横軸,血流量を縦軸にしたラインチャートを作成,correlationを用いたクラスター分析を実施した.次に,クラスター(CL)毎で,どの関心領域の脳血流量に低下があるかを一元配置分散分析(ANOVA)で分析し,効果量も算出した.関心領域間の脳血流量を比較するため,血流量は標準化し分析に用いた.なお,本研究は,筆頭著者の所属する研究倫理委員会の承認を得ている.
【結果】分析の結果,3つのCLに分類された.CL毎の関心領域の脳血流量の標準値平均は,CL1ではDLPFC1.582,FP-2.124,OFC-6.723,CL2はDLPFC-0.277,FP0.111,OFC0.642,CL3はDLPFC-0.086,FP0.627,OFC0.151で,ANOVAの結果,有意差は認められなかったものの,効果量からは,CL1ではOFCの血流量が低い「情動感情障害型」,CL2はDLPFCとFPの脳血流量が低い「認知行動処理障害型」,CL3はいずれにも該当しない「自己賦活障害型」に分類された.
【考察】GDBは前帯状皮質,内側眼窩前頭皮質,内側視床,腹側被蓋領域などの脳領域がハブとなり,そのハブと他の脳領域とがリンクする3つのサブネットワークを形成する.これがアパシーの3類型に相当する.本研究では,サブネットワークのハブとリンクする特定の脳領域の機能不全をNIRSで検出し,分類することでサブネットワークの機能不全を3類型に分類した.先行研究では,すでにアパシー3領域の特徴に合わせた介入方法が提示されており,今後は,NIRSによって分類されたアパシー類型に合わせた介入が有効であるかの検証が必要であ