[OB-1-1] 口述発表:心大血管疾患 1不安・抑うつを伴う劇症型心筋炎に対する作業療法
【はじめに】今回,致死的経過を脱し,不安・抑うつ症状を伴った症例を担当する機会を得た.作業療法の中で,心臓機能だけでなく精神心理面のフィードバックを重ねた心理的介入が自宅退院に繋がったため報告する.なお,本報告において本人に同意は得られている.
【症例紹介】診断名:巨細胞性劇症型心筋炎.年齢/性別:60代/女性.家族構成:夫,息子と三人暮らし.入院前ADL:自立.自宅での役割:家事全般.趣味:パチンコ.ご本人の希望:家のことやパチンコができるようになりたい.
【治療経過】X日,上記診断にて当院入院.X+3日,体外式補助循環管理となりICU入室.X+16日,体外式補助循環離脱.X+43日,ICU退出.作業療法はX+38日より開始.
【作業療法評価(X+70日)】認知機能(MMSE):30/30点.不安・抑うつ(HADS):anxiety8,depression12 .筋力(MRC score):31.上肢機能(STEF):右79点,左83点.心機能(LVDd/LVDs/LVef):48mm/39mm/39%.心不全重症度(forrester分類):Ⅲ.運動強度SAS:1〜2METs.基本動作能力(FSS-ICU):11点.ADL(FIM):運動13点,認知31点=合計44点.QOL(EQ-5D-3L score):−0.074.
【作業療法介入方針】本症例は,心臓機能に加え精神心理面の低下がADL活動に影響している状態であった.そのため,精神心理面の評価に応じた段階的なADL練習とフィードバックを行い本人に自信や安心感を与えながら進めていくことを介入方針とした.
【作業療法介入】心臓機能だけでなくHADS得点の変化に応じた運動強度を設定し,自覚症状の有無や動作能力のフィードバックの時間を設けた.また,ご家族の面会時に介入時間を設定し本人の心の支えとなるようにした.
【作業療法経過】X+80日:低負荷訓練期.ICUを退出し,病棟で初めて家族と面会した時には涙を流された.HADS得点はanxiety8 depression12と症状再発に対する不安・抑うつ症状がみられた.病棟ADLへの汎化は消極的で介助を求める姿勢が多かった.X+100日:ADL拡大期.低負荷のADL動作が改善してきたことを実感できるようになり,本人からできる喜びを伝えられる機会が増えた.HADS得点はanxiety4 depression8と改善が見られ,立位でのADL動作訓練を進められるようになった.ご家族からの応援に対しても明るく笑顔が増え,本人自ら病棟ADLへ取り入れるようになった.X+130日:退院準備時期.病棟ADLは自立したが,HADS得点はanxiety5,depression13と抑うつ傾向を示し,退院に自信を持てない状態であった.IADL訓練を開始し,自宅環境に準じて動作フィードバックを行うことで,徐々に本人から退院への意欲的発言が聞かれ,活動への自信がついた.
【結果(X+160日)】認知機能:著変なし.不安・抑うつ(HADS):anxiety2,depression11.筋力(MRC score):55.上肢機能(STEF):右95点,左96点.心機能(LVDd/LVDs/LVef):36mm/24mm/63% .心不全重症度(forrester分類):Ⅰ.運動強度(SAS):3〜4METs .基本動作能力(FSS-ICU):33点.ADL(FIM):運動83点,認知35点=合計118点.QOL(EQ-5D-3L score):0.639.X+170日に自宅退院.
【考察】劇症型心筋炎は極期を乗り切ればその後の予後は良好とされている.しかし,心疾患に合併する不安や抑うつは予後不良となる因子の一つであり,心理的介入が必要であるとされている.また,心理的ストレスの軽減方法として,心理的ストレスに関する情報提供を受けるだけなく患者が自らの心情や経験を話す機会を提供することが報告されている.本症例は,致死的病態を経験し,心理的ストレスは大きかったと考えられた.今回の作業療法の中で心臓機能とHADS得点を加味した運動強度の設定とフィードバックを重ねたことは,一つの心理的介入であり心理的ストレスの軽減と生活への自信に繋がり自宅退院に至ったと考える.
【症例紹介】診断名:巨細胞性劇症型心筋炎.年齢/性別:60代/女性.家族構成:夫,息子と三人暮らし.入院前ADL:自立.自宅での役割:家事全般.趣味:パチンコ.ご本人の希望:家のことやパチンコができるようになりたい.
【治療経過】X日,上記診断にて当院入院.X+3日,体外式補助循環管理となりICU入室.X+16日,体外式補助循環離脱.X+43日,ICU退出.作業療法はX+38日より開始.
【作業療法評価(X+70日)】認知機能(MMSE):30/30点.不安・抑うつ(HADS):anxiety8,depression12 .筋力(MRC score):31.上肢機能(STEF):右79点,左83点.心機能(LVDd/LVDs/LVef):48mm/39mm/39%.心不全重症度(forrester分類):Ⅲ.運動強度SAS:1〜2METs.基本動作能力(FSS-ICU):11点.ADL(FIM):運動13点,認知31点=合計44点.QOL(EQ-5D-3L score):−0.074.
【作業療法介入方針】本症例は,心臓機能に加え精神心理面の低下がADL活動に影響している状態であった.そのため,精神心理面の評価に応じた段階的なADL練習とフィードバックを行い本人に自信や安心感を与えながら進めていくことを介入方針とした.
【作業療法介入】心臓機能だけでなくHADS得点の変化に応じた運動強度を設定し,自覚症状の有無や動作能力のフィードバックの時間を設けた.また,ご家族の面会時に介入時間を設定し本人の心の支えとなるようにした.
【作業療法経過】X+80日:低負荷訓練期.ICUを退出し,病棟で初めて家族と面会した時には涙を流された.HADS得点はanxiety8 depression12と症状再発に対する不安・抑うつ症状がみられた.病棟ADLへの汎化は消極的で介助を求める姿勢が多かった.X+100日:ADL拡大期.低負荷のADL動作が改善してきたことを実感できるようになり,本人からできる喜びを伝えられる機会が増えた.HADS得点はanxiety4 depression8と改善が見られ,立位でのADL動作訓練を進められるようになった.ご家族からの応援に対しても明るく笑顔が増え,本人自ら病棟ADLへ取り入れるようになった.X+130日:退院準備時期.病棟ADLは自立したが,HADS得点はanxiety5,depression13と抑うつ傾向を示し,退院に自信を持てない状態であった.IADL訓練を開始し,自宅環境に準じて動作フィードバックを行うことで,徐々に本人から退院への意欲的発言が聞かれ,活動への自信がついた.
【結果(X+160日)】認知機能:著変なし.不安・抑うつ(HADS):anxiety2,depression11.筋力(MRC score):55.上肢機能(STEF):右95点,左96点.心機能(LVDd/LVDs/LVef):36mm/24mm/63% .心不全重症度(forrester分類):Ⅰ.運動強度(SAS):3〜4METs .基本動作能力(FSS-ICU):33点.ADL(FIM):運動83点,認知35点=合計118点.QOL(EQ-5D-3L score):0.639.X+170日に自宅退院.
【考察】劇症型心筋炎は極期を乗り切ればその後の予後は良好とされている.しかし,心疾患に合併する不安や抑うつは予後不良となる因子の一つであり,心理的介入が必要であるとされている.また,心理的ストレスの軽減方法として,心理的ストレスに関する情報提供を受けるだけなく患者が自らの心情や経験を話す機会を提供することが報告されている.本症例は,致死的病態を経験し,心理的ストレスは大きかったと考えられた.今回の作業療法の中で心臓機能とHADS得点を加味した運動強度の設定とフィードバックを重ねたことは,一つの心理的介入であり心理的ストレスの軽減と生活への自信に繋がり自宅退院に至ったと考える.