第56回日本作業療法学会

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一般演題

心大血管疾患

[OB-1] 一般演題:心大血管疾患 1

Fri. Sep 16, 2022 3:40 PM - 4:50 PM 第6会場 (RoomB-1)

座長:泉 良太(聖隷クリストファー大学)

[OB-1-4] 口述発表:心大血管疾患 1高齢心不全患者における前頭葉機能検査とIADLの関連性についての検討

爲國 友梨香1塩田 繁人1窪 優子1木村 浩彰2牛尾 会2 (1.広島大学病院リハビリテーション部門,2.広島大学病院リハビリテーション科)

【序論】
心不全患者の認知機能低下は,再入院や死亡等のリスク因子とされており,高齢になるほどその割合が増加する.同様に日常生活動作(ADL),手段的日常生活動作(IADL)の低下も予後不良に繋がるリスクが高い(Shannon M et al.2015,Jamieson HA et al.2020).先行研究では心不全患者における認知機能低下とADL,IADL低下の関連についての報告は散見されるが,高齢心不全患者を対象とした報告はごく少ない.特に心不全患者の再増悪に関連する服薬や食事等の項目が含まれるIADLは,Ikezakiら(2020)の報告によると前頭葉機能検査であるFrontal Assessment Battery(FAB)と相関する項目が多い.FABとIADLの関連が確認されれば,簡便にIADL低下をスクリーニングし,早期に再入院予防目的での疾病管理や環境調整に繋げられる可能性がある.そこで本研究では高齢心不全患者の前頭葉機能検査とADL,IADLとの相関関係を調査することを目的とした.
【方法】
対象は2017年4月~2018年8月の間に当院にてリハビリテーションを実施した75歳以上の症候性心不全患者28例とし,診療録より後方視的に調査した.調査項目は基本情報,認知機能評価はMini-Mental State Examination(MMSE),前頭葉機能評価はFAB,ADL評価はBarthel Index(BI),IADL評価はLawton&BrodyのIADL評価尺度(IADL)とした.統計学的解析はIBM SPSS Statistics 27を用い,MMSEとFABの各下位項目と,BIとIADLの各下位項目との相関関係をSpearman 順位相関係数を用いて分析した.本研究は広島大学病院疫学研究倫理審査委員会の承認を得た (承認番号: E-1132).
【結果】
対象者の基本属性は,年齢:82.3±5.0歳,うち女性13名,基礎疾患は弁膜症11例,高血圧性心疾患5例,虚血性心疾患3名,その他9例,MMSE 20.9±6.3点,FAB 8.8±3.1点,BI 77.0±23.4点,IADL 3.8±2.7点.以下に相関係数r=0.5以上で有意差(*:p<0.05,**:p<0.01)を示した項目を記載する.MMSE合計点とBI下位項目は移乗r=0.57*,トイレr=0.57*,MMSE下位項目では物品呼称と食事r=-0.53*,復唱と入浴r=0.51*,3段命令と移乗r=0.54*,トイレr=0.54*,歩行r=0.54*.FAB合計点とBI下位項目は有意な相関が確認されず,FAB下位項目では葛藤指示と移乗r=0.53*,GO/NO-GO r=0.38*.MMSE合計点とIADL下位項目は金銭の管理r=0.57*,合計r=0.51*,MMSE下位項目では時間の見当識と金銭の管理r=0.66**,合計r=0.53*,3語再生と服薬の管理r=0.57*,自発書字と食事の支度r=0.64*,家事r=0.59**,金銭の管理r=0.64**,合計r=0.64**,五角形模写と買い物r=0.53*,金銭の管理r=0.63**,合計r=0.53*.FAB合計点とIADL下位項目は服薬の管理r=0.59**,合計r=0.58*,下位項目では概念化と金銭の管理r=0.55*,語の流暢性と家事r=0.51*,洗濯r=0.52*,服薬の管理r=0.53*,金銭の管理r=0.62**,合計r=0.59**.
【考察】
MMSEはBIと7項目,IADLは12項目,FABはBIと2項目,IADLと8項目にて有意な相関が確認された.MMSEがADL,IADLと相関する点はGwangheeら(2020)の報告と一致する.以上よりMMSEと比較して道具を使用せず短時間で評価できるFABは,下位項目まで含めると高齢心不全患者のIADLの低下をより簡便にスクリーニングするツールになり得ることが示唆された.本研究は今後,サンプル数を増やして検証を進めることが課題となる.これによりFABの活用で簡便に心不全の再発に影響しやすい食事や服薬管理等をスクリーニングし,早期から疾病教育や環境調整に繋げることで,高齢心不全患者の再入院予防に貢献していきたい.