第56回日本作業療法学会

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一般演題

呼吸器疾患

[OC-1] 一般演題:呼吸器疾患 1

Sat. Sep 17, 2022 2:50 PM - 4:00 PM 第6会場 (RoomB-1)

座長:佐野 哲也(聖隷クリストファー大学)

[OC-1-6] 口述発表:呼吸器疾患 1日本における新型コロナウイルス感染後の復職に関する経験の探索

安齋 哲也12山田 優樹34川端 敦史12小林 隆司1山西 葉子1 (1東京都立大学大学院人間健康科学研究科作業療法科学域,2JR東京総合病院リハビリテーション科,3東京都立墨東病院リハビリテーション科,4東京都立大学大学院人間健康科学研究科作業療法科学域 博士後期課程)

【はじめに】新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)は2019年に報告されて以来,現在もなおその感染を拡大させており社会に影響を与えている.COVID-19 感染者のうち,就労に従事している生産年齢人口を占める年齢層による感染も数多く報告されている.また,COVID-19感染後に倦怠感や筋力低下,嗅覚障害,呼吸困難,認知機能障害といった罹患後症状と呼ばれる後遺症を呈することが国内外から報告されている.就労に従事している成人にとって,COVID-19 感染後の復職は重要な要素であるが,これらの罹患後症状が復職に影響を与えることが懸念されており,COVID-19感染後の復職支援に関する知見が重要視されている.これまで罹患後症状に関して国内からは症状の有無に関する調査が報告されているが,当事者による復職に関する経験を探索した調査は報告されていない.本研究の目的は,日本におけるCOVID-19感染後の復職に関する経験を探索することである.
【方法】COVID-19感染後,復職に至った生産年齢の成人を対象に個別での半構造化インタビューをオンラインで実施した.対象者はCOVID-19罹患後症状の専門外来を設けている医療機関に設置されたポスターを通した公募か,研究者によるスノーボールサンプリングにより募集された.個別インタビューではCOVID-19の感染から復職に至るまでの経緯や,それらの過程で得られた支援内容や周囲の関わりなどについて質問し,COVID-19感染後の復職に関する経験について対象者自身の語りを引き出した.分析ではインタビュー時の逐語録を対象としたテーマ分析を行い,対象者の語りの中で繰り返し語られている内容のパターンからテーマを導出した.本研究は研究者が所属する研究機関の研究倫理委員会の承認を得て実施された(承認番号:21009).
【結果】関東・関西の都市部に居住する26〜48歳の6名の男女(男性5名,女性1名)より回答を得た.COVID-19感染による休職期間は最短で10日間,最長で41日間であり,全員が復職に至っていた.6名のうち4名が何らかの罹患後症状を訴えていた.インタビュー時間は合計で205分間であった.抽出されたコード数は総数113個であり,それらから次のテーマが導出された.COVID-19感染後の療養中の時期における「感染時の初発症状・感染中の症状に関する経験」「発症から療養までの経験」「療養中の生活」「療養中の不安」,復職過程で経験した「復職基準」「感染から復職までの会社のフォロー」「自分が感染したことによる職場への影響」,復職後の経験として「職場における復職後のコミュニケーション」「後遺症に関する経験」「後遺症に対する職場・社会の理解」「感染後に直面する制度利用に関する経験」「罹った人にしかわからないこと」の12個のテーマが得られた.
【考察】国内の罹患後症状に関する報告ではCOVID-19感染後の復職に関する支援の重要性が述べられており,英国の作業療法士協会から発行されている罹患後症状に対する作業療法支援のガイドの中では,作業療法士がCOVID-19感染後の復職支援に関わる重要性が述べられている.本研究の結果からは実際にCOVID-19感染後に復職を果たした当事者の経験において,療養中の段階から不安を感じていたことや,復職後も職場の同僚のコミュニケーションが良好であった人もいれば,ネガティブな経験をした人もいたことが示された.さらに複数の人が罹患後症状の定義や理解の不足により円滑な復職が妨げられたことを述べていた.これらの結果からCOVID-19感染後の復職において個人に対する支援から社会・政策レベルにおける対応までの幅広いレベルにおける支援の必要性が示唆された.