[OC-1-5] 口述発表:呼吸器疾患 1新型コロナウイルス感染症患者に対する当院でのリハビリテーション治療の実施
【はじめに】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,2019年末に中国で報告され世界中に拡散した感染症である.2022年1月26日時点での本邦での感染者数は,累計の感染者数が約228万人で,死亡者数は18567人となっている.和歌山県においては,感染者数が8393人で死亡者数は64人となっている.和歌山県下では,2022年1月17日まで,全患者に入院の措置が必要であり,患者は最短で10日間の隔離での入院加療と,退院後2週間の自宅待機が必要となる.これまで,COVID-19感染症患者に対するリハビリテーション(リハ)治療は理学療法ガイドラインにおいて中等度以上の肺炎症例が適応とされているが,軽症例へのリハ治療の報告は散見される.当院では,2020年4月よりCOVID-19患者の受け入れを開始しており,同時にリハ治療を行っている.
【目的】当院でのCOVID-19患者へのリハ治療の実施状況について報告する.
【対象】 2020年4月から2021年12月の期間に当院に入院したCOVID-19感染症患者とした.リハ治療の対象は,入院した全症例のうち,リハ医師の診察の下,治療の同意を得られた上で処方された者であった.リハ治療は,3段階の負荷量に分類されたトレーニングシートを使用した筋力増強訓練及び,自転車エルゴメータやステップ台を使用した全身調整運動及び屋外歩行を実施した.また午前中にはトレーニングシートを用い自主訓練を実施した.午後はセラピストが実際に病室に訪問し対面で実施.毎朝のカンファレンスでは,状態の把握とリハ治療の結果を報告した.リハ治療前には,体温や呼吸状態を確認し,治療中はパルスオキシメータを用いSpO2を計測した.感染対策は,飛沫感染,接触感染対策を基本とし,患者は隔離.療法士はガウン,手袋,キャップ,フェイスシールド,N95規格マスクを装着し,患者はサージカルマスクを装着してリハ治療を実施した.
【結果】当院に入院したCOVID-19患者は657人(男性:371人,女性286人)であり,その内リハ治療を実施したのは606人であった.リハ治療を実施した患者における年代別の人数は,10歳未満15人,10代56人,20代136人,30代88人,40代103人,50代94人,60代55人,70代33人,80代20人,90歳以上6人であった.COVID-19の重症度別分類では,軽症が454人,中等症Ⅰが139人,中等症Ⅱが11人であった.入院期間は9.2±3.2日であり,転帰先は自宅が586人,入院前の施設が3人,ホテル療養への切り替えが2人,回復期病院への転院が5人,重症化により高次医療機関への転院が8人であった.リハ治療中に呼吸状態が悪化した患者はなく,自宅やホテル療養,施設入所された患者では入院期間経過後すぐに退院が可能であった.また,リハ科医師やセラピストのCOVID-19感染者は見られなかった.
【考察】安静臥床での筋力は,1日に1~3%,1週で10~15%低下すると言われており,COVID-19患者においても,隔離期間における身体機能の低下は想像に容易い.今回,軽症から中等症ⅡにかけてのCOVID-19感染症患者に対しリハ治療を実施した結果,若年者はもとより,80代以上や90歳以上の高齢者であっても,入院経過後すぐに退院や転院が可能であり,退院時のADL低下を予防する事ができたと考える.また,状態の把握と負荷量の調整を行うことにより,安全にリハ治療を実施でき,且つ感染対策を徹底する事により,感染を拡大させることなくリハ治療を提供できたと考える.
【結語】軽症から中等症までのCOVID-19感染症患者へのリハ治療により感染拡大なく,退院時のADLの維持が可能であった.
【目的】当院でのCOVID-19患者へのリハ治療の実施状況について報告する.
【対象】 2020年4月から2021年12月の期間に当院に入院したCOVID-19感染症患者とした.リハ治療の対象は,入院した全症例のうち,リハ医師の診察の下,治療の同意を得られた上で処方された者であった.リハ治療は,3段階の負荷量に分類されたトレーニングシートを使用した筋力増強訓練及び,自転車エルゴメータやステップ台を使用した全身調整運動及び屋外歩行を実施した.また午前中にはトレーニングシートを用い自主訓練を実施した.午後はセラピストが実際に病室に訪問し対面で実施.毎朝のカンファレンスでは,状態の把握とリハ治療の結果を報告した.リハ治療前には,体温や呼吸状態を確認し,治療中はパルスオキシメータを用いSpO2を計測した.感染対策は,飛沫感染,接触感染対策を基本とし,患者は隔離.療法士はガウン,手袋,キャップ,フェイスシールド,N95規格マスクを装着し,患者はサージカルマスクを装着してリハ治療を実施した.
【結果】当院に入院したCOVID-19患者は657人(男性:371人,女性286人)であり,その内リハ治療を実施したのは606人であった.リハ治療を実施した患者における年代別の人数は,10歳未満15人,10代56人,20代136人,30代88人,40代103人,50代94人,60代55人,70代33人,80代20人,90歳以上6人であった.COVID-19の重症度別分類では,軽症が454人,中等症Ⅰが139人,中等症Ⅱが11人であった.入院期間は9.2±3.2日であり,転帰先は自宅が586人,入院前の施設が3人,ホテル療養への切り替えが2人,回復期病院への転院が5人,重症化により高次医療機関への転院が8人であった.リハ治療中に呼吸状態が悪化した患者はなく,自宅やホテル療養,施設入所された患者では入院期間経過後すぐに退院が可能であった.また,リハ科医師やセラピストのCOVID-19感染者は見られなかった.
【考察】安静臥床での筋力は,1日に1~3%,1週で10~15%低下すると言われており,COVID-19患者においても,隔離期間における身体機能の低下は想像に容易い.今回,軽症から中等症ⅡにかけてのCOVID-19感染症患者に対しリハ治療を実施した結果,若年者はもとより,80代以上や90歳以上の高齢者であっても,入院経過後すぐに退院や転院が可能であり,退院時のADL低下を予防する事ができたと考える.また,状態の把握と負荷量の調整を行うことにより,安全にリハ治療を実施でき,且つ感染対策を徹底する事により,感染を拡大させることなくリハ治療を提供できたと考える.
【結語】軽症から中等症までのCOVID-19感染症患者へのリハ治療により感染拡大なく,退院時のADLの維持が可能であった.