第56回日本作業療法学会

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一般演題

呼吸器疾患

[OC-1] 一般演題:呼吸器疾患 1

Sat. Sep 17, 2022 2:50 PM - 4:00 PM 第6会場 (RoomB-1)

座長:佐野 哲也(聖隷クリストファー大学)

[OC-1-4] 口述発表:呼吸器疾患 1作業療法を実施したCovid-19患者の介入状況と自宅退院に至った患者に作業療法介入が寄与できた要因

山田 優樹12保坂 陽子1 (1都立墨東病院リハビリテーション科,2東京都立大学大学院人間健康科学研究科 作業療法科学域 博士後期課程)

【はじめに】新型コロナウィルス感染症(Covid-19)は,株の変異を伴いながら世界的に流行し,本邦では,2022年2月の時点で,第6波を迎えている.当院は,第1波よりCovid-19患者の入院対応を行い,リハ科においても,急性期からCovid-19患者に対して理学療法(PT),作業療法(OT),言語聴覚療法(ST)の3部門でリハを実施してきた.特にOTは,ADLの改善を要する患者に対して処方が出され,早期からの介入で当院から直接自宅退院する患者もいた.そこで本調査の目的は,OTが処方されたCovid-19患者への介入状況と自宅退院に至った患者にOTが寄与できた要因を把握することとした.
【方法】対象期間は2020年4月~2021年12月,Covid-19の診断で入院した患者を対象とした.調査項目は,年齢,性別などの基本情報,OT介入開始日,介入日数,介入開始時と終了時のBarthelIndex(以下,BI),転帰,評価項目,介入内容とした.これら調査項目を電子カルテから後方視的に抽出し,算出可能な項目は記述統計にて代表値を算出した.本調査は,当院における包括的同意を得た上で,ヘルシンキ宣言を遵守し,個人情報が特定されないよう配慮して実施した.
【結果】対象期間において,Covid-19の入院患者数は1753名,リハ実施患者数は181名(内訳:PT実施178名,OT実施15名,ST実施52名)であった.OT実施患者の基本情報として,年齢は69±12歳,性別は男性9名,女性8名,併存疾患は対象者の多くで高血圧と糖尿病がみられた.重症度は,軽症1名,中等症Ⅰ6名,中等症Ⅱ1名,重症6名であった.転帰としては自宅退院(以下,退院)7名,回復期病院転院(以下,転院)7名,死亡1名であった.以下の項目は,退院群と転院群に分けて中央値[四分位値]にて記載した.入院日数は25[15-29]日,50[32-80.5]日,介入開始日は入院から8[5.5-14]日目,9[7.5-35.5]日目,介入日数は5[5-18.5]日間,13[6.5-21]日間,介入開始時BIは10[0-53]点,0[0-25]点,終了時BIは90[75-93]点,30[18-75]点であった.退院群と転院群のADLの特徴として,介入時より自立している者(退院群名・転院群名)は,食事2・1名,移乗1・0名,整容2・1名,トイレ動作1・0名,入浴0・0名,歩行0・0名,階段昇降0・0名,更衣0・0名,排便2・0名,排尿2・0名.終了時に自立した項目は,食事7・4名,移乗4・0名,整容7・4名,トイレ動作7・3名,入浴2・0名,歩行4・1名,階段昇降2・0名,更衣6・3名,排便7・3名,排尿7・3名.退院群に対する介入は,PTとほぼ同時に開始され,隔離対応のため6/7名が退院までベッドサイドでの実施であった.OT介入では早期より起居動作,限られた環境の中でも食事,整容やトイレ動作などADL訓練を実施し,患者の生活に合わせた退院時指導を行なっていた.介入時の主な評価項目は,SpO2,疲労感,筋力,高次脳機能,基本動作,ADLであった.
【考察】本調査でOTが介入した対象者の特徴として,退院群と転院群で傾向が分かれた.退院群は転院群に比べ,中等症が多い,入院日数および介入日数が短い,介入終了時BIの得点が高い傾向がみられた.OTも含まれたCovid-19患者に対する早期リハ介入の報告では,退院時BIに著明な改善を認めている(Piquet et al, 2021).本調査の傾向から,比較的重症症例は少ないが,抗重力での活動が可能となった段階で,退院群に対して,早期からADLに介入をしたことで,BIの改善および自宅退院に繋がった可能性が考えられる.また,Covid-19患者への介入は,隔離対応に伴い物品の持ち込みに制限があるため,介入内容の幅は限られる.そのような環境において基本動作や馴染みのあるADLに焦点をあてたOT介入は,BIを改善させると考えられた.