[OC-1-3] 口述発表:呼吸器疾患 1急性増悪後の特発性肺繊維症患者に対する作業療法―生きがいの農作業を継続するために―
【はじめに】特発性肺繊維症(以下IPF)の多くは高齢者に発症し,しばしば急性増悪を引き起こす.急性増悪後の平均生存期間は2か月以内と予後不良である.これはがんと比べても予後不良である.IPFの終末期におけるQOLを重視した作業療法の報告は少ない.今回,在宅酸素(以下HOT)が導入された急性増悪後のIPF症例に対し,退院後に生きがいの農作業の再開に向けた作業療法を実施した.その結果QOLが向上した一例を報告する.
【患者紹介・説明と同意】70代の男性,既往歴:橋本病,BMI:25.8㎏/m2,%FVC:53%,%DLco:55%.Pack-years:2.5×45年.現病歴:呼吸困難を認め, Z日当院搬送された.趣味:農作業.治療:薬物療法は抗線維化薬を使用された.なお,主治医より入院時にHOT導入の説明がされていた. 本報告に関して, 本人に説明し同意を得た.
【作業療法評価(Z+8日)】四肢MMT5,握力(Rt./Lt.):40kgf/32kgf.呼吸様式:胸腹式優位,両下葉に捻髪音を聴取した.6分間歩行試験:(5L/分)340m,minSpO2:85%,呼吸困難感を修正Borg Scale(以下BS):9.ADL:自立,BS:3.デバイス・酸素需要量:安静時に鼻カヌラ(以下NC)2L/分,労作時にNC4L/分,入浴時に開放型酸素マスク5L/分.MoCA-J:30点,FAB18点.性格は集中すると周りが見えなくなる.目標:COPM(遂行度/満足度)は『農作業をする』(2/2)を挙げた.農作業から家庭菜園へ変更を提案したが,亡き友人より譲り受けた畑で農作業を継続したいと希望があった.主治医に相談し,SpO2:85%まで許容との説明があった.農作業は①3.3㎡の畑を耕す・堆肥を混ぜる等の土づくり②大根とキャベツの種まき③草とり④水かけ⑤追肥に工程分けした.労作時desaturationと呼吸困難感は①③④⑤で顕著だった.QOLはSGRQ78点(症状95点,活動93点,影響64点)であった.
【経過】Z+13日,まず病室で模擬的に農作業の酸素需要と呼吸困難感を評価した.Z+15日,院内の庭での実動作評価に基づき酸素需要量を決定し,動作指導と環境調整の介入とした.労作時NC5L/分で,動作中は3分ごとに20〜30秒休憩する指導をした.オキシメイトは常備した.①鍬で耕す・堆肥を混ぜる土づくりは体幹を前屈しないよう呼気に合わせて腕を振り上げる指導した.minSpO2:82→89%,BS:5→2.畑の鍬は万能鍬から4本鍬を提案した.前日雨天の場合に作業を行わないよう確認した.②大根とキャベツの種まき③ 草とりは座位で草とりや休憩するよう風呂椅子(20㎝)の利用で調整した.minSpO2:82→87%,BS:4→2.④水かけは畑から10m離れた場所に如雨露で水汲みを往復するため,ホースリールの利用を調整した.minSpO2:84→90%,BS:5→0.⑤追肥は肥料散布機を提案した.自宅から畑まで自家用車で20分の距離(往復40分,NC2L/分:同調)にあること農作業(NC5L/分:連続)で酸素ボンベを消費するため酸素ボンベ残量を逆算し農作業時間を最大30分とした.スマートフォンのアラーム機能も利用した.安全面を考慮し必ず予備の酸素ボンベを準備した.Z+17日退院前,農作業の1〜2回目までは妻が同伴するよう依頼した.本人より「これなら大丈夫そう」と発言が聞かれた.
【結果】COPMは『農作業をする』(9/9)と向上した.労作時desaturationは認めるものの呼吸困難感は改善した.退院後の農作業に自信がある様子だった.QOLはSGRQ18点(症状50点,活動性19点,影響8点)と向上した.
【考察】急性増悪後に再び農作業を行うため動作方法や環境調整の工夫を行い,労作時desaturationや呼吸困難感の軽減を認めた.これは動作スピードや休憩のタイミング指導,具体的な物理環境の提案が一要因と考える.本人が望む作業に焦点を当てた作業療法が急性増悪後のIPF患者のQOL改善に少なからず寄与した可能性がある.
【患者紹介・説明と同意】70代の男性,既往歴:橋本病,BMI:25.8㎏/m2,%FVC:53%,%DLco:55%.Pack-years:2.5×45年.現病歴:呼吸困難を認め, Z日当院搬送された.趣味:農作業.治療:薬物療法は抗線維化薬を使用された.なお,主治医より入院時にHOT導入の説明がされていた. 本報告に関して, 本人に説明し同意を得た.
【作業療法評価(Z+8日)】四肢MMT5,握力(Rt./Lt.):40kgf/32kgf.呼吸様式:胸腹式優位,両下葉に捻髪音を聴取した.6分間歩行試験:(5L/分)340m,minSpO2:85%,呼吸困難感を修正Borg Scale(以下BS):9.ADL:自立,BS:3.デバイス・酸素需要量:安静時に鼻カヌラ(以下NC)2L/分,労作時にNC4L/分,入浴時に開放型酸素マスク5L/分.MoCA-J:30点,FAB18点.性格は集中すると周りが見えなくなる.目標:COPM(遂行度/満足度)は『農作業をする』(2/2)を挙げた.農作業から家庭菜園へ変更を提案したが,亡き友人より譲り受けた畑で農作業を継続したいと希望があった.主治医に相談し,SpO2:85%まで許容との説明があった.農作業は①3.3㎡の畑を耕す・堆肥を混ぜる等の土づくり②大根とキャベツの種まき③草とり④水かけ⑤追肥に工程分けした.労作時desaturationと呼吸困難感は①③④⑤で顕著だった.QOLはSGRQ78点(症状95点,活動93点,影響64点)であった.
【経過】Z+13日,まず病室で模擬的に農作業の酸素需要と呼吸困難感を評価した.Z+15日,院内の庭での実動作評価に基づき酸素需要量を決定し,動作指導と環境調整の介入とした.労作時NC5L/分で,動作中は3分ごとに20〜30秒休憩する指導をした.オキシメイトは常備した.①鍬で耕す・堆肥を混ぜる土づくりは体幹を前屈しないよう呼気に合わせて腕を振り上げる指導した.minSpO2:82→89%,BS:5→2.畑の鍬は万能鍬から4本鍬を提案した.前日雨天の場合に作業を行わないよう確認した.②大根とキャベツの種まき③ 草とりは座位で草とりや休憩するよう風呂椅子(20㎝)の利用で調整した.minSpO2:82→87%,BS:4→2.④水かけは畑から10m離れた場所に如雨露で水汲みを往復するため,ホースリールの利用を調整した.minSpO2:84→90%,BS:5→0.⑤追肥は肥料散布機を提案した.自宅から畑まで自家用車で20分の距離(往復40分,NC2L/分:同調)にあること農作業(NC5L/分:連続)で酸素ボンベを消費するため酸素ボンベ残量を逆算し農作業時間を最大30分とした.スマートフォンのアラーム機能も利用した.安全面を考慮し必ず予備の酸素ボンベを準備した.Z+17日退院前,農作業の1〜2回目までは妻が同伴するよう依頼した.本人より「これなら大丈夫そう」と発言が聞かれた.
【結果】COPMは『農作業をする』(9/9)と向上した.労作時desaturationは認めるものの呼吸困難感は改善した.退院後の農作業に自信がある様子だった.QOLはSGRQ18点(症状50点,活動性19点,影響8点)と向上した.
【考察】急性増悪後に再び農作業を行うため動作方法や環境調整の工夫を行い,労作時desaturationや呼吸困難感の軽減を認めた.これは動作スピードや休憩のタイミング指導,具体的な物理環境の提案が一要因と考える.本人が望む作業に焦点を当てた作業療法が急性増悪後のIPF患者のQOL改善に少なからず寄与した可能性がある.