第56回日本作業療法学会

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一般演題

運動器疾患

[OD-2] 一般演題:運動器疾患 2

Fri. Sep 16, 2022 1:20 PM - 2:20 PM 第4会場 (RoomA)

座長:秋山 恭延(浜松医科大学医学部附属病院)

[OD-2-5] 口述発表:運動器疾患 2関節リウマチ尺側偏位の人工指関節置換術後療法に使用する新規装具の試み

佐々木 秀一1小沼 賢治2助川 浩士3大竹 悠哉2神保 武則1 (1北里大学病院リハビリテーション部,2北里大学医学部整形外科学,3北里大学医学部附属医学教育研究開発センター)

【背景】関節リウマチ(RA)の尺側偏位における中手指節(MP)関節変形に対する人工指関節置換術は,機能的・整容的改善が得られる治療法である.MP人工関節置換術後の後療法は,術後1週間以内にアウトリガ付き伸展ダイナミックスプリントを装着し,良好なアライメントを保持しながら関節運動を行うことが一般的である.しかし,外来でゴムの張力やカフ位置の調整,着脱の管理の困難さから,伸展拘縮をきたし難渋する症例を経験する.我々はMP人工関節置換術後の後療法に対する装具については,管理の困難さから背側から吊り上げるものではなく掌側から支える構造でも応用が可能ではないかという仮説を立てた.そこで,当院では新たな静的と動的部分を組み合わせた新規装具を試み,良好な経過を経験したので報告する.
【症例紹介】症例は70歳代,女性.現病歴は30年前から徐々に手の変形が始まり,20年前にRAと診断された.10年前にエンブレルを1年使用し,その後,関節痛は消失した.同年に他院で右環・小指の伸筋腱断裂による腱縫合術及びSauve-Kapandji法を施行.今回,右MP関節尺側偏位に対し人工指関節置換術を施行した.術前のADLは概ね自立していたが,箸操作などの巧緻動作は困難であった.入院時のDAS28は1.31点(CRP:0.05mg/dl),MHAQは0点.手指機能は示指から小指までのMP関節は伸展-40度,小指と環指がクロスフィンガーを呈し,美容面と機能面に影響があった.手術方法は示指から小指のMP関節にシリコンインプラント(SBi silicone人工指関節)を設置し,橈側側副靭帯の補強,伸筋腱の中央化を行った.尚,本発表に際し,症例から書面での同意を得た.
【本装具の紹介】装具は熱可塑性ニット素材のオルフィキャスト(6cm,3cm幅)を用いて,コップアップ装具を作成した.静的装具部分はMP関節の掌側から鉤爪構造の形状で尺側偏位予防のためガードを追加した.また,動的装具の部分はMP関節の掌側面のU字の硬い支柱にネオプレン素材を貼付し,ハンモック様の弾性構造で他動伸展の補助や自動屈曲運動が可能な構造とした.制作時間は20分程度.術後1週間以内に装具を作成し日中夜間は2ヶ月間,夜間のみ3ヶ月まで装着した.装具装着中はMP関節の自動屈曲を許可し,訓練室では他動屈曲運動を行った.
【結果】術後5ヶ月経過時は,X線所見では軽度尺側偏位を認めた.MP関節自動可動域(伸展/屈曲)は示指-10/60°,中指-10/55°,環指0/45°,小指-30/70°,握力は6.8/9.9kg,HAND20は14点,ADLおよび家事で右手の使用も可能であり,経過は比較的良好であった.
【考察】シリコンインプラントの過去の長期成績の報告では,MP関節自動可動域-13~56°(Blair, 1984)であり,本報告では短期成績ではあるものの-6.7~53.3°とほぼ同等程度で良好であった.MP人工関節置換術後の新規の本装具の特徴は,鉤爪構造による手指尺側の安定性と弾性素材によるMP関節他動伸展と自動屈曲可能な点で尺側への安定性も考慮した構造である.術後の管理を容易とし合併症を予防できる装具として期待できる.