[OD-3-2] 口述発表:運動器疾患 3脊髄損傷者のドライビングシミュレーターを用いた運転再開に向けた支援
改造車での運転が不安,いきなり実車は怖いへの介入
【はじめに】
今回,脊髄損傷者に対し,ハンドルノブと手動運転装置を搭載したドライビングシミュレーター(HONDAセーフティナビ,以下DS)を用いた運転再開支援を行ったところ,運転に対する自己効力感が向上し,運転再開を目指すことに繋がった事例を経験した.本報告では,DSによる介入が自己効力感に与えた影響について,その経過を交えて報告する.なお発表に際して本人より同意を得ている.
【症例紹介】
腰髄損傷の40歳代の女性,45病日に当院回復期リハビリテーション病棟に入院した.車いすでの在宅復帰のための動作習得と環境調整ができた199病日より,対象者の希望により運転再開に向けた支援を開始した.身体機能は,GMT両上肢5/体幹3/両下肢0,改良Frankel分類はAであった.運転に関して,車への移乗や車いすの積み込みは可能であった.しかし,改造車で運転ができるか不安があり,操作練習を行わずに実車することへの怖さの訴えがあった.
【運転に関する初期評価(199病日)】
Visual Analogue Scale(以下VAS)を用いて,運転に対する自信度は2.6(0:全く自信がない~10:非常に自信がある)で,恐怖感は7.5(0:全く恐怖感はない~10:非常に恐怖感がある)であった.運転時の自己効力感評価尺度であるAdelaid Driving Self Efficacy Scale(以下ADSES-J)は42/120点であった.また夜間の運転や,山道のカーブに自信がないと発言があった.DSは,運転反応検査の同年代との比較で普通,総合学習体験は発進停止E,合図B,安全確認D,位置D,速度B,全般Eであった.
【介入経過】
第一期(203〜205病日);DSで基本操作の習得を目指した時期 DSを用いて,手動運転装置の操作と調節,カーブ時の操作習得を目的に,追尾課題と危険予測体験を行った.初期は速度調整困難,カーブ時に車線はみ出し,ウィンカーを出せないことがあった.危険場面では,アクセルブレーキの間違いや,ハンドルを両手で握ることがあった.手動運転装置から手を離さないようにすること,徐々に速度を出すこと,カーブ時は特に減速しノブを持つことを指導した.結果として,3回の訓練で「アクセルは奥まで踏むことないですね」と操作を学習できた.第二期(206〜210病日);居住地域に合わせたコースや様々な条件下での練習をした時期 山岳コースでは,大きいカーブの車線はみ出しや,対向車に慌てる様子あったが,第一期で学習した速度調整やノブ操作はできた.本人より「昔の感覚を思い出した.大きいカーブに体が動くため気をつける」と発言があった.高速コースでは,車線からはみ出し,速度を出せなかった.本人より「片手運転で速度を出すのは怖いので高速は控える」と発言があった.雨・霧・夜間の練習では,速度を落とし事故なく走行できた.本人より「雨での運転はできそうだが,風が強いと片手運転では怖いので控る.夜間は特にゆっくり走る」と発言があった.この時期では,操作がさらに学習され,運転に対する自信がついただけでなく,実際の運転場面を具体的かつ詳細に予測・意識できた.
【最終評価(211病日)】
VASを用いた運転に対する自信度は6.6,恐怖感は3.3,ADSES-Jは74/120点で,自己効力感の改善が認められた.DSにおいては,運転反応検査の同年代との比較でやや優れている,総合学習体験は発進停止D,合図B,安全確認C,位置B,速度A,全般Aで,初期評価から明らかに改善された.
【考察・まとめ】
DSによる介入は,運転操作を習得するだけでなく,運転時に注意する事柄に気付くことができ,運転に対する自信が向上することに繋がる可能性も考えられた.
今回,脊髄損傷者に対し,ハンドルノブと手動運転装置を搭載したドライビングシミュレーター(HONDAセーフティナビ,以下DS)を用いた運転再開支援を行ったところ,運転に対する自己効力感が向上し,運転再開を目指すことに繋がった事例を経験した.本報告では,DSによる介入が自己効力感に与えた影響について,その経過を交えて報告する.なお発表に際して本人より同意を得ている.
【症例紹介】
腰髄損傷の40歳代の女性,45病日に当院回復期リハビリテーション病棟に入院した.車いすでの在宅復帰のための動作習得と環境調整ができた199病日より,対象者の希望により運転再開に向けた支援を開始した.身体機能は,GMT両上肢5/体幹3/両下肢0,改良Frankel分類はAであった.運転に関して,車への移乗や車いすの積み込みは可能であった.しかし,改造車で運転ができるか不安があり,操作練習を行わずに実車することへの怖さの訴えがあった.
【運転に関する初期評価(199病日)】
Visual Analogue Scale(以下VAS)を用いて,運転に対する自信度は2.6(0:全く自信がない~10:非常に自信がある)で,恐怖感は7.5(0:全く恐怖感はない~10:非常に恐怖感がある)であった.運転時の自己効力感評価尺度であるAdelaid Driving Self Efficacy Scale(以下ADSES-J)は42/120点であった.また夜間の運転や,山道のカーブに自信がないと発言があった.DSは,運転反応検査の同年代との比較で普通,総合学習体験は発進停止E,合図B,安全確認D,位置D,速度B,全般Eであった.
【介入経過】
第一期(203〜205病日);DSで基本操作の習得を目指した時期 DSを用いて,手動運転装置の操作と調節,カーブ時の操作習得を目的に,追尾課題と危険予測体験を行った.初期は速度調整困難,カーブ時に車線はみ出し,ウィンカーを出せないことがあった.危険場面では,アクセルブレーキの間違いや,ハンドルを両手で握ることがあった.手動運転装置から手を離さないようにすること,徐々に速度を出すこと,カーブ時は特に減速しノブを持つことを指導した.結果として,3回の訓練で「アクセルは奥まで踏むことないですね」と操作を学習できた.第二期(206〜210病日);居住地域に合わせたコースや様々な条件下での練習をした時期 山岳コースでは,大きいカーブの車線はみ出しや,対向車に慌てる様子あったが,第一期で学習した速度調整やノブ操作はできた.本人より「昔の感覚を思い出した.大きいカーブに体が動くため気をつける」と発言があった.高速コースでは,車線からはみ出し,速度を出せなかった.本人より「片手運転で速度を出すのは怖いので高速は控える」と発言があった.雨・霧・夜間の練習では,速度を落とし事故なく走行できた.本人より「雨での運転はできそうだが,風が強いと片手運転では怖いので控る.夜間は特にゆっくり走る」と発言があった.この時期では,操作がさらに学習され,運転に対する自信がついただけでなく,実際の運転場面を具体的かつ詳細に予測・意識できた.
【最終評価(211病日)】
VASを用いた運転に対する自信度は6.6,恐怖感は3.3,ADSES-Jは74/120点で,自己効力感の改善が認められた.DSにおいては,運転反応検査の同年代との比較でやや優れている,総合学習体験は発進停止D,合図B,安全確認C,位置B,速度A,全般Aで,初期評価から明らかに改善された.
【考察・まとめ】
DSによる介入は,運転操作を習得するだけでなく,運転時に注意する事柄に気付くことができ,運転に対する自信が向上することに繋がる可能性も考えられた.