[OD-4-1] 口述発表:運動器疾患 4前腕切断により幻肢痛を訴えた症例に対してミラーセラピーを用いて介入した経験
【はじめに】四肢切断による幻肢痛のコントロールには幻肢の随意性の獲得が有益とされている.幻肢の随意性とは幻肢を自由に動かすことの出来る感覚を意味する.今回,右前腕切断により幻肢痛を訴える症例に対してミラーセラピー(以下,MT)を用いて介入したところ幻肢の随意性を獲得することが出来,幻肢痛の軽減を認めたので経過を報告する.なお本報告は当院倫理委員会の承認(整理番号2021-28)を得ている.
【症例紹介】60代男性,右利き.X日仕事中に旋盤に巻き込まれて右前腕切断,右第5中手骨開放骨折を受傷.同日,再接着術施行.受傷部位以遠の運動・感覚の回復を期待することが出来ないため,X+20日前腕切断術施行.前腕切断翌日より幻肢痛を訴えた.
【経過】X+7日より利き手交換練習開始.左手での書字,箸操作の獲得を目的に利き手交換練習を実施.退院時まで利き手交換練習は継続した.X+21日より幻肢痛の訴えに対してMTを開始.X+23日より肘関節・前腕関節可動域訓練開始.X+34日当院退院し,当院での作業療法は終了となった.
【方法】MT実施前に断端痛の部位,幻肢の分類,幻肢の肢位,幻肢の随意性,幻肢痛の部位,幻肢痛の感じ方,激痛の頻度について聴取した.また,MT実施前後で幻肢痛の強さについてVisual Analogue Scale(以下,VAS)を用いて評価した.MTの実施・評価期間はX+21日~X+34日の13日間で10回実施した.VASの値をMT実施前と実施後で比較した.統計学的処理はWilcoxonの順位和検定を用い,有意水準5%未満とした.MTの運動課題は平上らの方法を参考に前腕回内外,手関節掌背屈,手指屈伸各20回を1セットとして2セットずつ実施した.
【結果】断端痛は初回評価時から最終評価時まで一度も訴えがなかった.幻肢の分類は断端密着型から徐々に手が断端に埋もれていき,断端嵌入型へ移行していった.幻肢の肢位は手指伸展位から徐々に屈曲位へと移行していった.幻肢の随意性を徐々に獲得することが出来た.幻肢痛の部位は手指MP関節以遠に訴えていたが,範囲は徐々に指先部へと狭まっていった.幻肢痛の感じ方はしびれを伴う痛みを訴えていた.激痛の頻度は0~6回/日であり,頻度は一定ではなかった.VASの値はMT実施前平均36.2±4,実施後平均23.8±3.3であり,有意差(p<0.01)を認めた.
【考察】MTは四肢切断により中枢へと入力されなくなってしまった感覚情報を視覚で代償することによって幻肢痛を軽減すると考えられている.先行研究では幻肢の随意運動獲得により,幻肢痛の軽減が得られたと報告がある.本症例においても経過の中で幻肢の随意性を獲得することが出来た.また,MT実施前後のVASにおける値に有意差を認めたことから,MTにより幻肢痛軽減の効果が得られたと考える.
【症例紹介】60代男性,右利き.X日仕事中に旋盤に巻き込まれて右前腕切断,右第5中手骨開放骨折を受傷.同日,再接着術施行.受傷部位以遠の運動・感覚の回復を期待することが出来ないため,X+20日前腕切断術施行.前腕切断翌日より幻肢痛を訴えた.
【経過】X+7日より利き手交換練習開始.左手での書字,箸操作の獲得を目的に利き手交換練習を実施.退院時まで利き手交換練習は継続した.X+21日より幻肢痛の訴えに対してMTを開始.X+23日より肘関節・前腕関節可動域訓練開始.X+34日当院退院し,当院での作業療法は終了となった.
【方法】MT実施前に断端痛の部位,幻肢の分類,幻肢の肢位,幻肢の随意性,幻肢痛の部位,幻肢痛の感じ方,激痛の頻度について聴取した.また,MT実施前後で幻肢痛の強さについてVisual Analogue Scale(以下,VAS)を用いて評価した.MTの実施・評価期間はX+21日~X+34日の13日間で10回実施した.VASの値をMT実施前と実施後で比較した.統計学的処理はWilcoxonの順位和検定を用い,有意水準5%未満とした.MTの運動課題は平上らの方法を参考に前腕回内外,手関節掌背屈,手指屈伸各20回を1セットとして2セットずつ実施した.
【結果】断端痛は初回評価時から最終評価時まで一度も訴えがなかった.幻肢の分類は断端密着型から徐々に手が断端に埋もれていき,断端嵌入型へ移行していった.幻肢の肢位は手指伸展位から徐々に屈曲位へと移行していった.幻肢の随意性を徐々に獲得することが出来た.幻肢痛の部位は手指MP関節以遠に訴えていたが,範囲は徐々に指先部へと狭まっていった.幻肢痛の感じ方はしびれを伴う痛みを訴えていた.激痛の頻度は0~6回/日であり,頻度は一定ではなかった.VASの値はMT実施前平均36.2±4,実施後平均23.8±3.3であり,有意差(p<0.01)を認めた.
【考察】MTは四肢切断により中枢へと入力されなくなってしまった感覚情報を視覚で代償することによって幻肢痛を軽減すると考えられている.先行研究では幻肢の随意運動獲得により,幻肢痛の軽減が得られたと報告がある.本症例においても経過の中で幻肢の随意性を獲得することが出来た.また,MT実施前後のVASにおける値に有意差を認めたことから,MTにより幻肢痛軽減の効果が得られたと考える.