[OD-5-1] 口述発表:運動器疾患 5バレエ専攻の大学生における痛みと運動障害在籍学生全員を対象とした実態調査
在籍学生全員を対象とした実態調査
【背景・目的】バレエダンサーや舞踊家の疼痛と運動障害は極めて多いと考えられる.女児の習い事の中でバレエは幼児期・児童期に約7%の参加率であるが,大学期ではそれが1.3%にまで低下する(海野ら,2012).バレエを辞める理由は進学や身体的成長要因もあるが障害やケガによるものも考えられる.本調査対象者は十数年余のバレエレッスンを経て芸術系大学バレエ専修過程に在籍する学生であり,加えて本邦を代表するバレエ団の予備過程・研究生的位置づけでもある.プロダンサーに向け一層の手技習得のため舞踊・運動に励む対象者の疼痛と運動障害についてその実態を明らかにし,検討することを目的とする.
【方法】A大学バレエ専攻に在籍する全学年の学生を対象とし,個人属性,運動状況と疼痛,運動障害,受診状況,治療状況,影響度,予防等について,専攻の教員と共同して作成した質問紙により調査した.
【結果】在籍者128名中112名から回答を得た(男女5/107名,回答率87.5%).個人属性の平均は年齢19.81歳,開始4.89歳,経験は15年であった.身長は160.17cm,体重49.25kgであり,平日の練習は4.09時間で休日は2.28時間で,コンクール等の入賞歴が33%にあった.卒業後の進路は約半数がバレエ団団員もしくは練習生を希望しており,その他指導者やバレエ以外の身体表現者を希望するものも34.8%あった.現在か過去に96.43%が疼痛を有していた.疼痛の程度はNRS(VAS)34.89%で,ダンスへの影響度はVASで36.57%であった.疼痛や踊れないことについては64.28%が不安を訴え,相談の相手は保護者52.68%,友人48.21%,指導者38.40%であった.安静時痛は25%が有し,運動時疼痛はルルヴェ・片足踏切両足着地・グランジュッテ時の有訴率が40%程度と高値を示した.ほぼ全員がストレッチ・体感トレーニング・フットケア・クーリング・ヨガ・温熱療法など身体ケアに取り組んでいた.62%が医療機関を受診し,捻挫・外反母趾・靭帯損傷・疲労骨折・シンスプリントなどの診断を受けた.25%が安静指示を,19%がリハビリテーションを受けていたが,一方では49%が治療院におけるマッサージなど代替医療を受けていた.身体やトレーニングについては大学や所属バレエ団のレッスンの他,個人レッスン,書籍や文献などから学んでいた.
【考察】海外の先行研究では小中高校のバレエ学習者の9割が現在か過去に頚椎や腰椎の疼痛を有していた(Malgorzata,2015)が,今回の結果,本邦のバレエ専攻大学生における有訴率も96%と極めて高かった.自由記載項目ではバレエ専門の相談・治療が受けられる環境を求める学生が多数存在した.オーバーワークを指摘されても休むしかないなどの言葉もあり,学生は踊ることのできない不安やストレスを訴えていた.半数が代替医療を選択している現状が示唆することは,受診のハードルの高さであろう.適切な治療を選択できるよう望む声に,医療者は医療へのアクセスを高め,支援方法を構築するべきである.
【研究倫理】所属施設「人を対象とした研究等倫理委員会」の審査と承認を得た(478号).質問紙は個人を特定できないよう設計され,調査に際し対象者から同意を得ている.
【COI】発表者全員について開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【方法】A大学バレエ専攻に在籍する全学年の学生を対象とし,個人属性,運動状況と疼痛,運動障害,受診状況,治療状況,影響度,予防等について,専攻の教員と共同して作成した質問紙により調査した.
【結果】在籍者128名中112名から回答を得た(男女5/107名,回答率87.5%).個人属性の平均は年齢19.81歳,開始4.89歳,経験は15年であった.身長は160.17cm,体重49.25kgであり,平日の練習は4.09時間で休日は2.28時間で,コンクール等の入賞歴が33%にあった.卒業後の進路は約半数がバレエ団団員もしくは練習生を希望しており,その他指導者やバレエ以外の身体表現者を希望するものも34.8%あった.現在か過去に96.43%が疼痛を有していた.疼痛の程度はNRS(VAS)34.89%で,ダンスへの影響度はVASで36.57%であった.疼痛や踊れないことについては64.28%が不安を訴え,相談の相手は保護者52.68%,友人48.21%,指導者38.40%であった.安静時痛は25%が有し,運動時疼痛はルルヴェ・片足踏切両足着地・グランジュッテ時の有訴率が40%程度と高値を示した.ほぼ全員がストレッチ・体感トレーニング・フットケア・クーリング・ヨガ・温熱療法など身体ケアに取り組んでいた.62%が医療機関を受診し,捻挫・外反母趾・靭帯損傷・疲労骨折・シンスプリントなどの診断を受けた.25%が安静指示を,19%がリハビリテーションを受けていたが,一方では49%が治療院におけるマッサージなど代替医療を受けていた.身体やトレーニングについては大学や所属バレエ団のレッスンの他,個人レッスン,書籍や文献などから学んでいた.
【考察】海外の先行研究では小中高校のバレエ学習者の9割が現在か過去に頚椎や腰椎の疼痛を有していた(Malgorzata,2015)が,今回の結果,本邦のバレエ専攻大学生における有訴率も96%と極めて高かった.自由記載項目ではバレエ専門の相談・治療が受けられる環境を求める学生が多数存在した.オーバーワークを指摘されても休むしかないなどの言葉もあり,学生は踊ることのできない不安やストレスを訴えていた.半数が代替医療を選択している現状が示唆することは,受診のハードルの高さであろう.適切な治療を選択できるよう望む声に,医療者は医療へのアクセスを高め,支援方法を構築するべきである.
【研究倫理】所属施設「人を対象とした研究等倫理委員会」の審査と承認を得た(478号).質問紙は個人を特定できないよう設計され,調査に際し対象者から同意を得ている.
【COI】発表者全員について開示すべきCOI関係にある企業等はない.