[OF-1-1] 口述発表:がん 1当院の血液がん患者の転倒要因
転倒群と非転倒群から見えてきた課題
【序論】
血液がん患者は,治療のために入退院を繰り返すことも多く,治療も長期間に渡る.治療完遂のためには心身機能の維持が必要不可欠であるが,化学療法による副作用と長期間の治療,入退院による環境変化が要因となり運動機能や認知機能低下,うつ症状も報告されている.当院では看護師(以下,Ns)による転倒アセスメントや病棟でのカンファレンスに基づき安全対策が取られている.しかし廃用症候群に加え,過度な安全対策により運動機会の低下が生じ,下肢筋力やADLの低下と共に,意欲や認知低下が生じ,介助量増加や転倒を招くことも散見される.転倒因子を調査し,疾病と心身機能を含めて多角的に検討することは重要であり,がん患者の入院生活のQuality of Life(以下,QOL)の維持向上に繋がると考える.
【目的】
当院の血液がん患者の転倒要因を明らかにする
【方法】
2021年4月~12月の間に血液がんを発症し,当院に入院しリハビリテーション(以下,リハビリ)を実施した患者233名の内,転倒した20名を「転倒群」,非転倒で抽出した40名を「非転倒群」として,診療録,インシデントレポートからの後ろ向き調査を行った.調査項目は,対象者の年齢,性別,疾患名,病期(回復期,維持期,緩和期)と転帰(自宅,施設,死亡),入院期間,認知機能(低下,軽度低下,問題なし)とBarthel Index(以下,BI)として比較検討を行った.さらに転倒状況(転倒月,時間帯,場所,行動の動機,心身状態)を調査した.分析方法は Pearsonのカイ2乗検定とBonferroni法,Mann-WhitneyのU検定を用いて行い,有意水準は5%未満とした.尚,本研究は対象者に同意を得ている.
【結果】
当院の血液がん患者の転倒率は8.6%で,平均年齢は74.5±14.2歳,性別は男性53.2%,女性46.8%であった.転倒群と非転倒群の2群間において,年齢,性別,疾患名,入院時と退院時のBIの差に有意差はなかった . 有意差は , 病 期 ( P=0.000 ) , 転 帰 ( P=0.003 ) , 入院期間( P=0.000 ) , 認知障害 ( P=0.002 ) でみられた . さらに , 病期では回復期と維持期(P=0.006),回復期と緩和期(P=0.000)に,転帰では自宅退院と死亡(P=0.016)に,認知機能では低下と問題なし(P=0.007)に有意差があった.また転倒状況については,転倒が多い月は4月~5月50%,時間帯は夜間帯(21時~6時)65%,場所はベッドサイド50%,トイレ30%,行動の動機は排泄55%,心身状態は歩行障害80%,認知障害(せん妄含む)と薬剤の影響75%,体調不
良65%であった.
【考察】
当院の血液がん患者の転倒要因は,病期と転帰,入院期間と認知障害と関連し,転倒群は,維持期や緩和期に多く,入院期間が長期で,病態悪化等の死亡者に多い傾向があると分かった.維持期や緩和期,体調不良時に転倒が生じやすいことから,日々の心身機能の変化と治療状況に留意し,Nsと情報共有を行う継続的な支援が必要であると考える.また当院の転倒は,排泄が動機となり夜間帯にベッドサイドで起こりやすいことが分かった.そのため日々の心身機能のトレーニングと共に,ベッドでの立ち上がりや歩行開始を補助する環境調整がNsと連携して必要であると示唆された.今後は患者の心身機能や使用薬剤,活動量に留意した継続的な評価と入院環境の確認を行い,患者の機能維持と自律を支えるケアを多職種で協働して支援していくことが課題だと考える.
血液がん患者は,治療のために入退院を繰り返すことも多く,治療も長期間に渡る.治療完遂のためには心身機能の維持が必要不可欠であるが,化学療法による副作用と長期間の治療,入退院による環境変化が要因となり運動機能や認知機能低下,うつ症状も報告されている.当院では看護師(以下,Ns)による転倒アセスメントや病棟でのカンファレンスに基づき安全対策が取られている.しかし廃用症候群に加え,過度な安全対策により運動機会の低下が生じ,下肢筋力やADLの低下と共に,意欲や認知低下が生じ,介助量増加や転倒を招くことも散見される.転倒因子を調査し,疾病と心身機能を含めて多角的に検討することは重要であり,がん患者の入院生活のQuality of Life(以下,QOL)の維持向上に繋がると考える.
【目的】
当院の血液がん患者の転倒要因を明らかにする
【方法】
2021年4月~12月の間に血液がんを発症し,当院に入院しリハビリテーション(以下,リハビリ)を実施した患者233名の内,転倒した20名を「転倒群」,非転倒で抽出した40名を「非転倒群」として,診療録,インシデントレポートからの後ろ向き調査を行った.調査項目は,対象者の年齢,性別,疾患名,病期(回復期,維持期,緩和期)と転帰(自宅,施設,死亡),入院期間,認知機能(低下,軽度低下,問題なし)とBarthel Index(以下,BI)として比較検討を行った.さらに転倒状況(転倒月,時間帯,場所,行動の動機,心身状態)を調査した.分析方法は Pearsonのカイ2乗検定とBonferroni法,Mann-WhitneyのU検定を用いて行い,有意水準は5%未満とした.尚,本研究は対象者に同意を得ている.
【結果】
当院の血液がん患者の転倒率は8.6%で,平均年齢は74.5±14.2歳,性別は男性53.2%,女性46.8%であった.転倒群と非転倒群の2群間において,年齢,性別,疾患名,入院時と退院時のBIの差に有意差はなかった . 有意差は , 病 期 ( P=0.000 ) , 転 帰 ( P=0.003 ) , 入院期間( P=0.000 ) , 認知障害 ( P=0.002 ) でみられた . さらに , 病期では回復期と維持期(P=0.006),回復期と緩和期(P=0.000)に,転帰では自宅退院と死亡(P=0.016)に,認知機能では低下と問題なし(P=0.007)に有意差があった.また転倒状況については,転倒が多い月は4月~5月50%,時間帯は夜間帯(21時~6時)65%,場所はベッドサイド50%,トイレ30%,行動の動機は排泄55%,心身状態は歩行障害80%,認知障害(せん妄含む)と薬剤の影響75%,体調不
良65%であった.
【考察】
当院の血液がん患者の転倒要因は,病期と転帰,入院期間と認知障害と関連し,転倒群は,維持期や緩和期に多く,入院期間が長期で,病態悪化等の死亡者に多い傾向があると分かった.維持期や緩和期,体調不良時に転倒が生じやすいことから,日々の心身機能の変化と治療状況に留意し,Nsと情報共有を行う継続的な支援が必要であると考える.また当院の転倒は,排泄が動機となり夜間帯にベッドサイドで起こりやすいことが分かった.そのため日々の心身機能のトレーニングと共に,ベッドでの立ち上がりや歩行開始を補助する環境調整がNsと連携して必要であると示唆された.今後は患者の心身機能や使用薬剤,活動量に留意した継続的な評価と入院環境の確認を行い,患者の機能維持と自律を支えるケアを多職種で協働して支援していくことが課題だと考える.