[OF-1-2] 口述発表:がん 1当院血液腫瘍患者における認知機能障害の調査報告
【緒言】がん患者に認められる認知機能障害はCancer related cognitive impairment(CRCI)と総称されている.がん治療前の約30%,治療中の約75%に認めるとされている(Janelsins MC,2011)が,どのような患者が認知機能の低下を示すかなどの経過や特徴に関する報告は少ない.そこで今回,当院血液内科で治療が行われる患者において,認知機能の実態,推移の調査を行ったので報告する.
【対象/方法】2021年5月から12月に当院血液内科で血液腫瘍と診断され,入院治療を受けた患者18名(男性8名,女性10名),年齢中央値は83歳(53-90).治療開始時(T0),3ヶ月時(T1)にMini Mental State Examination-Japanese(MMSE-J),Geriatric8(G8),The LawtonIADL scale(IADL)を用いて評価を行った.統計ソフトはEZR Ver.1.54を使用し,有意水準は0.05とした.本研究に際し,当院倫理委員会にて承認を得ている.
【結果】MMSE-Jの中央値はT0:26.5(16-30)/T1:27(15-30),軽度認知症とされる23点以下の患者は,いずれも4名(22%)だった.G8の中央値はT0:10(5-15)/T1:10(4-14),IADLの中央値はT0:男性4(1-5),女性8(3-8)/T1:男性3.5(0-5),女性6(3-8)だった.T0-T1間でMMSE-Jの点数が維持・向上した群をA群(n=10),低下した群をB群(n=8)とし,T0,T1時のMMSE-J,G8,IADLのスコアをマンホイットニーのU検定で比較した.その結果,T0時のMMSE-Jの点数において,A群(24±4)がB群(27.25±3.37)よりも低い傾向があった(p=0.054).その他の項目については,有意な差を認めなかった.ROC解析の結果,MMSE-J低下,向上のカットオフ値はT0時のMMSE-J26点(感度0.750,特異度0.700)だった.B群でMMSEJの低下がみられた主な項目は,注意と計算(5名,62.5%),再生(6名,75%)だった.
【考察】今回の調査では,T0時のMMSE-Jが低い患者の方がT1時に向上しており,がんの影響により生じた認知機能障害が治療により改善した可能性がある.一方で,T0時に認知機能が高い患者がT1時に低下を示しており,CRCIを生じた可能性がある.これは,MMSE-Jが26点以上の患者でみられる割合が多く,治療開始時に認知機能障害が高度ではない患者に対しても,認知機能に焦点を当てた評価や介入を継続して行う必要があると考えられる.また,化学療法中〜後にかけて記憶や注意機能の低下などの高次脳機能障害が出現する(Ahles TA,2012)との報告と同様に,今回の調査でも注意や記憶での低下を認めており,これらに焦点を当てた作業療法プログラムの構築,効果の検証を行っていく必要がある.
【対象/方法】2021年5月から12月に当院血液内科で血液腫瘍と診断され,入院治療を受けた患者18名(男性8名,女性10名),年齢中央値は83歳(53-90).治療開始時(T0),3ヶ月時(T1)にMini Mental State Examination-Japanese(MMSE-J),Geriatric8(G8),The LawtonIADL scale(IADL)を用いて評価を行った.統計ソフトはEZR Ver.1.54を使用し,有意水準は0.05とした.本研究に際し,当院倫理委員会にて承認を得ている.
【結果】MMSE-Jの中央値はT0:26.5(16-30)/T1:27(15-30),軽度認知症とされる23点以下の患者は,いずれも4名(22%)だった.G8の中央値はT0:10(5-15)/T1:10(4-14),IADLの中央値はT0:男性4(1-5),女性8(3-8)/T1:男性3.5(0-5),女性6(3-8)だった.T0-T1間でMMSE-Jの点数が維持・向上した群をA群(n=10),低下した群をB群(n=8)とし,T0,T1時のMMSE-J,G8,IADLのスコアをマンホイットニーのU検定で比較した.その結果,T0時のMMSE-Jの点数において,A群(24±4)がB群(27.25±3.37)よりも低い傾向があった(p=0.054).その他の項目については,有意な差を認めなかった.ROC解析の結果,MMSE-J低下,向上のカットオフ値はT0時のMMSE-J26点(感度0.750,特異度0.700)だった.B群でMMSEJの低下がみられた主な項目は,注意と計算(5名,62.5%),再生(6名,75%)だった.
【考察】今回の調査では,T0時のMMSE-Jが低い患者の方がT1時に向上しており,がんの影響により生じた認知機能障害が治療により改善した可能性がある.一方で,T0時に認知機能が高い患者がT1時に低下を示しており,CRCIを生じた可能性がある.これは,MMSE-Jが26点以上の患者でみられる割合が多く,治療開始時に認知機能障害が高度ではない患者に対しても,認知機能に焦点を当てた評価や介入を継続して行う必要があると考えられる.また,化学療法中〜後にかけて記憶や注意機能の低下などの高次脳機能障害が出現する(Ahles TA,2012)との報告と同様に,今回の調査でも注意や記憶での低下を認めており,これらに焦点を当てた作業療法プログラムの構築,効果の検証を行っていく必要がある.