[OF-1-3] 口述発表:がん 1同種造血幹細胞移植患者における生活行為の経時的変化
【背景と目的】同種造血幹細胞移植患者(以下,移植患者)は,大量化学療法による薬物有害反応,防護環境による行動範囲の制限,移植後合併症に伴う身体症状や栄養状態不良に起因して身体活動量が減少しやすい.また,四肢・体幹の筋力低下や全身持久力の低下を招く.その結果,移植患者はADLやIADLが低下し,退院後は在宅生活や社会復帰に年単位を要する場合もある.しかし,移植患者の入院中から退院後にかけての生活行為の経時的変化や具体的な生活行為の障害に関する報告はほとんどない.本研究の目的は,移植患者における移植前から退院後の生活行為の経時的変化を明らかにすることである.
【方法】本研究は造血幹細胞移植患者を対象とした研究の追加研究として行った.移植前処置開始時(以下,移植前),退院後4,12,24週時点の生活行為を前向きに調査した.2019年9月から2020年9月までに当院血液内科に入院し,造血幹細胞移植を受けた18歳以上の者を対象とした.除外基準は自家移植を受けた者,各種評価が実施困難な者,追跡調査が行えなくなった者である.対象者には書面,口頭にて十分な説明をし,文書同意を得た.基本情報は移植前時点での年齢,性別,診断名,身長,体重,BMI,在院日数,家族構成,仕事の有無が診療録より収集された.主要評価項目は各時期にFIMとFAIが調査された.統計学的手法では,FIMとFAIの経時的変化を検討するためFriedman検定が用いられた.多重比較検定はWilcoxon符号順位検定(Bonferroni補正)により行われた.FAIは,下位項目についても同様の検討が行われた.統計解析は,IBM SPSS Statisticsを使用し,統計学的有意水準は5%とした.本研究は当院の臨床研究倫理審査委員会の承認を得ている(研19073).
【結果】本研究への参加同意は50名から得られ,最終的な分析対象者は19名であった.年齢は51.3±15.5歳,性別は男性12名,女性7名,診断名は白血病15名,多発性骨髄腫1名,悪性リンパ腫3名,身長は162.5±7.1cm,体重は57.6±12.2kg,BMIは21.6±3.3 kg/m²,在院日数は86.1±48.9日,家族構成は独居2名,配偶者と同居14名,親と同居3名,仕事の有無はあり12名であった.FIMは退院後4週から統計学的有意に上昇し,24週にかけて中央値が満点の126点で推移していた[120.0,126.0,126.0,126.0,p=0.001]([ ]内は各時期の中央値とp値を示す).FAI合計点は退院後4週で移植前より有意に低値を認め,退院後12週で移植前と同等まで上昇を認めた.退院後24週でさらに上昇を認め[17.0,12.0,18.0,22.0,p=0.011],退院後4週と比較して高値を認めた(p=0.001).下位項目は,洗濯[1,0,0,1,p=0.103],掃除や整頓[1,0,2,2,p=0.031],買い物[3,2,3,3,p=0.143],外出[2,0,1,0,p=0.054],趣味[1,0,1,2,p=0.012],交通手段の利用[3,1,2,3,p=0.042]において,FAI合計点と同様に退院後4週で移植前より低値を認めた.
【考察】退院後のFIMの経過に関して本研究は,天井効果を認めており先行研究(花田ら,2010)と同様の結果となった.しかし,FAIは退院後4週で移植前より低値を認めた.下位項目は家事動作を中心に同様の変化を認めていた.そのため,入院中の作業療法では,移植前から病前生活や家庭内役割,自宅環境等の情報収集を行い,移植後の患者の心身機能に応じて作業療法目標に病前生活状況等を取り入れ,動作練習や指導,道具の工夫等を検討する必要があると考えられる.また,退院後も日常生活・社会生活に対して,急性期から回復期・維持期に繋ぐ取り組みも重要である(Carlsonら,2006).そのため,外来通院中の移植患者に対し,いかにリハビリテーションを提供するかが今後の課題であると考えられる.
【方法】本研究は造血幹細胞移植患者を対象とした研究の追加研究として行った.移植前処置開始時(以下,移植前),退院後4,12,24週時点の生活行為を前向きに調査した.2019年9月から2020年9月までに当院血液内科に入院し,造血幹細胞移植を受けた18歳以上の者を対象とした.除外基準は自家移植を受けた者,各種評価が実施困難な者,追跡調査が行えなくなった者である.対象者には書面,口頭にて十分な説明をし,文書同意を得た.基本情報は移植前時点での年齢,性別,診断名,身長,体重,BMI,在院日数,家族構成,仕事の有無が診療録より収集された.主要評価項目は各時期にFIMとFAIが調査された.統計学的手法では,FIMとFAIの経時的変化を検討するためFriedman検定が用いられた.多重比較検定はWilcoxon符号順位検定(Bonferroni補正)により行われた.FAIは,下位項目についても同様の検討が行われた.統計解析は,IBM SPSS Statisticsを使用し,統計学的有意水準は5%とした.本研究は当院の臨床研究倫理審査委員会の承認を得ている(研19073).
【結果】本研究への参加同意は50名から得られ,最終的な分析対象者は19名であった.年齢は51.3±15.5歳,性別は男性12名,女性7名,診断名は白血病15名,多発性骨髄腫1名,悪性リンパ腫3名,身長は162.5±7.1cm,体重は57.6±12.2kg,BMIは21.6±3.3 kg/m²,在院日数は86.1±48.9日,家族構成は独居2名,配偶者と同居14名,親と同居3名,仕事の有無はあり12名であった.FIMは退院後4週から統計学的有意に上昇し,24週にかけて中央値が満点の126点で推移していた[120.0,126.0,126.0,126.0,p=0.001]([ ]内は各時期の中央値とp値を示す).FAI合計点は退院後4週で移植前より有意に低値を認め,退院後12週で移植前と同等まで上昇を認めた.退院後24週でさらに上昇を認め[17.0,12.0,18.0,22.0,p=0.011],退院後4週と比較して高値を認めた(p=0.001).下位項目は,洗濯[1,0,0,1,p=0.103],掃除や整頓[1,0,2,2,p=0.031],買い物[3,2,3,3,p=0.143],外出[2,0,1,0,p=0.054],趣味[1,0,1,2,p=0.012],交通手段の利用[3,1,2,3,p=0.042]において,FAI合計点と同様に退院後4週で移植前より低値を認めた.
【考察】退院後のFIMの経過に関して本研究は,天井効果を認めており先行研究(花田ら,2010)と同様の結果となった.しかし,FAIは退院後4週で移植前より低値を認めた.下位項目は家事動作を中心に同様の変化を認めていた.そのため,入院中の作業療法では,移植前から病前生活や家庭内役割,自宅環境等の情報収集を行い,移植後の患者の心身機能に応じて作業療法目標に病前生活状況等を取り入れ,動作練習や指導,道具の工夫等を検討する必要があると考えられる.また,退院後も日常生活・社会生活に対して,急性期から回復期・維持期に繋ぐ取り組みも重要である(Carlsonら,2006).そのため,外来通院中の移植患者に対し,いかにリハビリテーションを提供するかが今後の課題であると考えられる.