[OF-2-2] 口述発表:がん 2がん患者の死亡前6か月間における日常生活活動自立度の推移
【目的】
終末期長期入院がん患者における日常生活活動(Activities of Daily Living;ADL)は死亡数週前から急激に低下すると言われている.しかしながら,近年新しい入院形態として注目されている急性期緩和ケア病棟(Acute Palliative Care Unit;APCU)は,苦痛症状緩和後の退院調整や在宅からの緊急入院の受け入れ,見取りの場としての役割を担っており,APCU入院患者では従来の長期入院型とは異なるADL自立度推移が予測される.本研究の目的は,APCU初回入院から死亡までの約6ヶ月間における患者の全身状態とADLを縦断的に調査することであった.
【方法】
対象者は,2019年11月から2021年9月までの間にAPCUに初回入院した患者100名のうち,死亡までの間に少なくとも2回の評価を行った70名(70.1±9.3歳,男性29 名,女性41名)であった.全身状態の評価にはPalliative Performance Scale (PPS),ADLにはFunctional Independence Measure(FIM)を使用した.死亡日を基準に評価時点を週数で区分し,PPS・FIMの得点を目的変数,死亡までの週を説明変数,評価時点をランダム効果とした一般化線形混合モデルを推定,また得点の軌跡は平滑化スプラインにて推定した.尚,本研究は研究実施病院倫理審査委員会の承認の上,実施した.
【結果】
70名に対し,延べ224回(一人当たり3.2±1.4回,最小2回,最大8回)の測定があった.原発巣は下部消化器(26%),肺(24%)が多く,診断から死亡までの平均期間は約3年4か月,APCU初回入院から死亡までの平均期間は約8週間,平均入院回数は1.8回であった.PPS・ADLと死亡までの週はそれぞれ有意な関連性(P<0.001)を示した.PPSは死亡前24週から20週までは67.4%~64.7%と一定の推移を保ち,20週から16週にかけて54.5%まで急激に低下,その後5週までは53.3%を保つも,最後の1カ月で急激に低下し,死亡前1週ではPPS 39.2%であった.FIM得点も類似した推移を示していた.
【結論】
APCU入院がん患者の全身状態・ADLは死亡前5ヶ月から4ヶ月の間,また死亡前1ヶ月において急激に低下することが明らかになった.APCUにおける作業療法では,緩和的リハビリテーションだけでなく,低下していくADLを予測しながら,その時期に適した介入や在宅移行支援を行っていく必要があることが示唆された.
終末期長期入院がん患者における日常生活活動(Activities of Daily Living;ADL)は死亡数週前から急激に低下すると言われている.しかしながら,近年新しい入院形態として注目されている急性期緩和ケア病棟(Acute Palliative Care Unit;APCU)は,苦痛症状緩和後の退院調整や在宅からの緊急入院の受け入れ,見取りの場としての役割を担っており,APCU入院患者では従来の長期入院型とは異なるADL自立度推移が予測される.本研究の目的は,APCU初回入院から死亡までの約6ヶ月間における患者の全身状態とADLを縦断的に調査することであった.
【方法】
対象者は,2019年11月から2021年9月までの間にAPCUに初回入院した患者100名のうち,死亡までの間に少なくとも2回の評価を行った70名(70.1±9.3歳,男性29 名,女性41名)であった.全身状態の評価にはPalliative Performance Scale (PPS),ADLにはFunctional Independence Measure(FIM)を使用した.死亡日を基準に評価時点を週数で区分し,PPS・FIMの得点を目的変数,死亡までの週を説明変数,評価時点をランダム効果とした一般化線形混合モデルを推定,また得点の軌跡は平滑化スプラインにて推定した.尚,本研究は研究実施病院倫理審査委員会の承認の上,実施した.
【結果】
70名に対し,延べ224回(一人当たり3.2±1.4回,最小2回,最大8回)の測定があった.原発巣は下部消化器(26%),肺(24%)が多く,診断から死亡までの平均期間は約3年4か月,APCU初回入院から死亡までの平均期間は約8週間,平均入院回数は1.8回であった.PPS・ADLと死亡までの週はそれぞれ有意な関連性(P<0.001)を示した.PPSは死亡前24週から20週までは67.4%~64.7%と一定の推移を保ち,20週から16週にかけて54.5%まで急激に低下,その後5週までは53.3%を保つも,最後の1カ月で急激に低下し,死亡前1週ではPPS 39.2%であった.FIM得点も類似した推移を示していた.
【結論】
APCU入院がん患者の全身状態・ADLは死亡前5ヶ月から4ヶ月の間,また死亡前1ヶ月において急激に低下することが明らかになった.APCUにおける作業療法では,緩和的リハビリテーションだけでなく,低下していくADLを予測しながら,その時期に適した介入や在宅移行支援を行っていく必要があることが示唆された.