第56回日本作業療法学会

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一般演題

がん

[OF-4] 一般演題:がん 4

Sat. Sep 17, 2022 2:50 PM - 4:00 PM 第5会場 (RoomB)

座長:小泉 浩平(埼玉県立大学)

[OF-4-2] 口述発表:がん 4化学療法中の肺がん患者におけるがん関連認知機能障害に対する調査

熊野 宏治1鎌倉 綾乃1進藤 篤史1木戸 健介2山田 崇央3 (1パナソニック健康保険組合 松下記念病院診療技術部 リハビリテーション療法室,2パナソニック健康保険組合 松下記念病院リハビリテーション科,3パナソニック健康保険組合 松下記念病院呼吸器内科)

【はじめに】がん治療の進歩に伴いがんサバイバーが増加傾向にある.がんサバイバーはがん治療を行う中でさまざまな副作用を経験するが,認知機能障害もそのひとつである. がん治療前から約30%,治療中には約75%の認知機能障害が認められ,このうちの35%は治療終了後も数ヶ月〜数年にわたり,認知機能障害が認められたと報告されている.しかし,認知機能障害に関するがん患者の報告は海外での報告が多数を占めるものの国内での報告は散見される程度である. 本報告は化学療法実施患者の認知機能障害の内容と程度の調査を実施し,今後の臨床に活かすことである.
【倫理的配慮】本研究は,当院の医療倫理委員会の承認を得て報告している.
【対象】化学療法目的に入院した肺がん患者19例で年齢は70.2±7.1歳,男性11例,女性8例であった. Performance Status(PS)は0が1例,1が8例,2が10例であった. 身体組成はBMI20.7±2.7であった.病期分類はStageⅢA2例,ⅢB1例,ⅣA5例,ⅣB11例. 1次治療が11例,2次治療が7例,3次治療が1例であった.使用薬剤は障害細胞性抗がん薬18例,分子標的薬2例,細胞免疫チェックポイント阻害薬3例(使用薬剤に重複あり)であった.疼痛や脳転移,骨転移などの合併症により評価に影響を及ぼす患者は除外した.
【方法】認知機能障害をFunctional Assessment of Cancer Therapy Cognitive Function ver3.0(FACT-Cog ver3.0)で評価を実施した.FACT-Cog ver3.0は37項目5段階のスケールで構成され,自覚された認知機能障害(CogPCI)他者からのコメント(CogOth),自覚された認知能力(CogPCA),生活の質への影響(CogQOL)の4領域で評価を行う質問紙表である.今回便宜上,4領域のカテゴリーを100点満点換算とし算出した.次に認知機能に影響を与える倦怠感,呼吸困難,不安,せん妄,疼痛,不眠の因子をCTCAE―JCOG Ver5.0を使用した.また,眠剤使用,医療麻薬の使用の有無を評価した.今回の調査報告は化学療法1もしくは2クール目終了後に評価を実施した.
【結果】CogPCIは94.1±8.7点,CogOthは100±0点CogPCAは78.0±27.4点, CogQOLは92.1±16.7点であった. CogPCAが低値であった.倦怠感とCogPCI(r=-0.64)CogQOL(r=-0.71)とに相関を認めた.
【考察】
今回の調査ではばらつきがあるものの何らかの認知機能障害に悩んでいる患者がいることが明らかになった.がん患者は医療者に認知機能の問題を報告してよいかどうかを悩み,報告する割合が少ない. がん患者の認知機能はがん治療の選択や就労,社会生活を送るうえで非常に重要な機能であり,我々はがん患者の認知機能障害に気づく必要がある.化学療法実施患者は59~100%の割合で倦怠感を経験している.倦怠感は認知機能を低下させると報告されている.倦怠感のある患者には認知機能も低下している可能性も踏まえ作業療法を実施する必要がある.化学療法中~後にかけて起こる認知機能障害はケモブレインと言われ,発生頻度は17~70%とされている.本報告は化学療法実施中の患者を対象にしているが, 今回の研究のみでは化学療法が認知機能に影響を与えているかは不明である. ケモブレインを含むがん関連認知機能障害は多様な要因から発生するため今後は更なる調査・研究が必要である.