[OH-1-4] 口述発表:精神障害 1日本とイギリス,カナダにおける非言語活動に関する研究の比較
【序論】
作業療法では対象者の状態や目的に合わせ精神療法,芸術活動,スポーツなど,様々な活動や手段が用いられており,それらは言語活動と非言語活動に分けることができる.言語活動とは言葉でのコミュニケーションが主となる活動である.一方,非言語活動とはアクティビティが主となる活動である.非言語活動は日本の精神科作業療法において利用率が高く,中心的な介入手段であるといえる.
しかし,非言語活動に関する文献は少なくエビデンスは乏しい状態である.一方,コクラン・レビューにて非言語活動に関する報告を調べると,取り上げられている論文の多くは海外のものである.したがって,海外と日本の文献を比較することにより日本の研究のエビデンスを高める手がかりが得られるのではないかと考えた.なお今回は,WFOT創立時からの加盟国であるイギリスとカナダに着目して比較することとした.
【目的】
日本とイギリス,カナダにおける精神障害領域の介入に関する研究内容の相違点を検討し,日本の非言語活動に関する研究の特徴及び課題を明らかにすること.
【方法】
対象雑誌は「作業療法」及び「British Journal of Occupational Therapy(以下BJOT)」「The Canadian Journal of Occupational Therapy(以下CJOT)」とした.論文の包含基準は,データベース「医中誌Web」「医書ジェーピー」「SAGE journals」「Pro Quest」で抄録が閲覧可能なもの,1982年~2020年までの間に出版されたもの,精神障害領域で行なわれている介入に関するもの,とした.また除外基準は,総説・会議録・opinionに該当するもの,介入内容が職業リハビリテーションに該当するもの,とした.対象期間内のすべての文献の表題・抄録をスクリーニングし抽出された文献についてそれぞれ要約シートを作成した.それを基に対象文献を,①活動種目,②各年の文献数,③アウトカムの種類により分類し3ヶ国の相違点という視点から分析を行った.
【結果】
「作業療法」では52件,「BJOT」では106件,「CJOT」では22件が抽出された.活動種目では,3ヶ国とも作品ができる活動,身体活動が最も多い結果となった.各年の文献数による分類では日本,イギリス共に非言語活動の文献は多少の変化はあるもののほぼ恒常的に掲載されていた.一方,言語活動の文献は年による変化が大きく見られた.アウトカムの種類による分類では,3ヶ国とも質的なアウトカムの件数が多い結果となった.また,標準化された評価に着目すると,日本は症状に関する評価が多く,その種類が多様であった.一方イギリスは日本と比較し評価の種類が限られていた.また,カナダではCOPMが多く用いられていた.
【考察】
非言語活動は3ヶ国の精神科作業療法において恒常的に用いられており,また研究では主として質的なアウトカムが用いられていた.質的なアウトカムは非言語活動の個別性を評価するのに適しているが,メタアナリシスに発展するような一般化をしにくいという課題がある.したがって,個別性を保ちながらエビデンスレベルを高められるような評価の開発が必要であると考えられる.また,標準化された評価ではイギリス,カナダとの比較から,評価法が多様であること,症状に関する評価が多いことが明らかになった.このことから,日本の非言語活動に関する研究においては共通した理論を研究者・教育者・実践者共に重視しアウトカムを整理することや,症状以外の分野のアウトカム指標にも着目することが重要であると考えられる.
作業療法では対象者の状態や目的に合わせ精神療法,芸術活動,スポーツなど,様々な活動や手段が用いられており,それらは言語活動と非言語活動に分けることができる.言語活動とは言葉でのコミュニケーションが主となる活動である.一方,非言語活動とはアクティビティが主となる活動である.非言語活動は日本の精神科作業療法において利用率が高く,中心的な介入手段であるといえる.
しかし,非言語活動に関する文献は少なくエビデンスは乏しい状態である.一方,コクラン・レビューにて非言語活動に関する報告を調べると,取り上げられている論文の多くは海外のものである.したがって,海外と日本の文献を比較することにより日本の研究のエビデンスを高める手がかりが得られるのではないかと考えた.なお今回は,WFOT創立時からの加盟国であるイギリスとカナダに着目して比較することとした.
【目的】
日本とイギリス,カナダにおける精神障害領域の介入に関する研究内容の相違点を検討し,日本の非言語活動に関する研究の特徴及び課題を明らかにすること.
【方法】
対象雑誌は「作業療法」及び「British Journal of Occupational Therapy(以下BJOT)」「The Canadian Journal of Occupational Therapy(以下CJOT)」とした.論文の包含基準は,データベース「医中誌Web」「医書ジェーピー」「SAGE journals」「Pro Quest」で抄録が閲覧可能なもの,1982年~2020年までの間に出版されたもの,精神障害領域で行なわれている介入に関するもの,とした.また除外基準は,総説・会議録・opinionに該当するもの,介入内容が職業リハビリテーションに該当するもの,とした.対象期間内のすべての文献の表題・抄録をスクリーニングし抽出された文献についてそれぞれ要約シートを作成した.それを基に対象文献を,①活動種目,②各年の文献数,③アウトカムの種類により分類し3ヶ国の相違点という視点から分析を行った.
【結果】
「作業療法」では52件,「BJOT」では106件,「CJOT」では22件が抽出された.活動種目では,3ヶ国とも作品ができる活動,身体活動が最も多い結果となった.各年の文献数による分類では日本,イギリス共に非言語活動の文献は多少の変化はあるもののほぼ恒常的に掲載されていた.一方,言語活動の文献は年による変化が大きく見られた.アウトカムの種類による分類では,3ヶ国とも質的なアウトカムの件数が多い結果となった.また,標準化された評価に着目すると,日本は症状に関する評価が多く,その種類が多様であった.一方イギリスは日本と比較し評価の種類が限られていた.また,カナダではCOPMが多く用いられていた.
【考察】
非言語活動は3ヶ国の精神科作業療法において恒常的に用いられており,また研究では主として質的なアウトカムが用いられていた.質的なアウトカムは非言語活動の個別性を評価するのに適しているが,メタアナリシスに発展するような一般化をしにくいという課題がある.したがって,個別性を保ちながらエビデンスレベルを高められるような評価の開発が必要であると考えられる.また,標準化された評価ではイギリス,カナダとの比較から,評価法が多様であること,症状に関する評価が多いことが明らかになった.このことから,日本の非言語活動に関する研究においては共通した理論を研究者・教育者・実践者共に重視しアウトカムを整理することや,症状以外の分野のアウトカム指標にも着目することが重要であると考えられる.