[OI-2-3] 口述発表:発達障害 2自閉スペクトラム症児と家族の食事時間への介入
事例研究報告
【はじめに】 日々の生活において毎日繰り返される食事は,家族にとって重要な作業である.自閉スペクトラム症(以下,ASD)は感覚の特異性やこだわりなどの特徴があり,食事の問題は80%にも上ると言われている.ASDの食事対策は,摂取量に関する文献が多く,個別的で具体的な対策に効果があると言われている.しかし,食事を作業として捉え,その対策を示している文献は見当たらない.今回,ASD児と家族の食事時間に与える影響を明らかにする事を目的に事例研究を行ったので報告する.
【倫理的配慮】愛徳医療福祉センター倫理委員会の承認を受け,対象者には口頭及び文書にて説明を行い文書で同意を得た.
【方法】事例研究.2021年6月~9月の3ヵ月間(計12回)家庭と児童発達支援センター(以下,当センター)での食事時間をビデオに撮り,週1回,約1時間,母親と一緒に食事についての振り返りと具体的対策を検討し,家庭と当センターで対策を実施した.評価は母親に食事時間におけるニードを聴き,それぞれの重要度,遂行度,満足度を1点から10点で採点してもらい遂行スコアと満足スコアを算出した.また,家での食事場面の遂行分析を行い,介入前後の変化をみた.さらにGoal Attainment Scaling (以下,GAS)を用いて母親と共に決めた目標への到達度を測定した.
【事例紹介】4歳女児 母,祖母との3人家族.地域幼稚園に通い,週1回当センターに単独通園する.診断名はASDと軽度知的障害.本児の食事に関して母親は「家で食べる物が変わらない,本人が言う物を食卓に出すので種類が増えない」と語った.
【経過】初回評価における食事時間の遂行度と満足度は共に1.3であった.家庭の食事場面では,母親,祖母共に本児に否定的な言葉かけはなく,食事時間を楽しむ様子が見られた.一方当センターでは,保育士が本児に一口でも苦手な物を頑張らせようと介入していた.家庭での遂行分析では,中度の身体的努力と効率性低下がみられ,しばしば母親の援助を必要とした.初期の頃の面談で作業療法士(以下,OTR)から家の食事中のカルピスを水に変える提案をした.母親は不安気であったが,次週の面談で,母親からビデオを活用し「OTRが見ているから頑張るように励ます事でカルピスをやめる事が出来た」「本児は当センターでの食事時間のビデオを見るのを楽しみにしている」と報告された.その後,GASを母親と共同し作成した.初期の頃は,子供椅子への変更,野菜チップスの提案などOTRが行い,母親が家庭で実施した.中期は,当センターで本児が少しでも食べた物を家庭でも試す事が多かった.上手くいかない時にはその要因を,また今食べている物からその共通要素を一緒に考えいく事で,後期には母親自身が考えて,新しい料理にチャレンジし成功する事が増えていった.
【結果】最終評価において,食事時間の遂行度は2.7点(1.3→4),満足度は2.3点(1.3→3.6)に向上した.食事場面の遂行分析では,身体的努力と効率性の低下が中度から軽度に,援助の必要性が「しばしば」から「たまに」に変化した.GAS修正スコアは,目標達成の50点を上回る59.1点となった.
【考察】 今回,ビデオを媒体とし家族の食事場面の過ごし方を見る事,母親と一緒に対策を考えていく事で家族の文脈を知り,母親が実際にできる具体的対策を実施出来た.初期の頃はOTR主導であったが,母親自身が子どもの特徴と能力を理解し,自発的に対策を考えるようになった.その結果,本児の食事場面の遂行の質が向上し,母親の食事時間に対する遂行度,満足度が向上するなど食事時間が改善したと考える.
【倫理的配慮】愛徳医療福祉センター倫理委員会の承認を受け,対象者には口頭及び文書にて説明を行い文書で同意を得た.
【方法】事例研究.2021年6月~9月の3ヵ月間(計12回)家庭と児童発達支援センター(以下,当センター)での食事時間をビデオに撮り,週1回,約1時間,母親と一緒に食事についての振り返りと具体的対策を検討し,家庭と当センターで対策を実施した.評価は母親に食事時間におけるニードを聴き,それぞれの重要度,遂行度,満足度を1点から10点で採点してもらい遂行スコアと満足スコアを算出した.また,家での食事場面の遂行分析を行い,介入前後の変化をみた.さらにGoal Attainment Scaling (以下,GAS)を用いて母親と共に決めた目標への到達度を測定した.
【事例紹介】4歳女児 母,祖母との3人家族.地域幼稚園に通い,週1回当センターに単独通園する.診断名はASDと軽度知的障害.本児の食事に関して母親は「家で食べる物が変わらない,本人が言う物を食卓に出すので種類が増えない」と語った.
【経過】初回評価における食事時間の遂行度と満足度は共に1.3であった.家庭の食事場面では,母親,祖母共に本児に否定的な言葉かけはなく,食事時間を楽しむ様子が見られた.一方当センターでは,保育士が本児に一口でも苦手な物を頑張らせようと介入していた.家庭での遂行分析では,中度の身体的努力と効率性低下がみられ,しばしば母親の援助を必要とした.初期の頃の面談で作業療法士(以下,OTR)から家の食事中のカルピスを水に変える提案をした.母親は不安気であったが,次週の面談で,母親からビデオを活用し「OTRが見ているから頑張るように励ます事でカルピスをやめる事が出来た」「本児は当センターでの食事時間のビデオを見るのを楽しみにしている」と報告された.その後,GASを母親と共同し作成した.初期の頃は,子供椅子への変更,野菜チップスの提案などOTRが行い,母親が家庭で実施した.中期は,当センターで本児が少しでも食べた物を家庭でも試す事が多かった.上手くいかない時にはその要因を,また今食べている物からその共通要素を一緒に考えいく事で,後期には母親自身が考えて,新しい料理にチャレンジし成功する事が増えていった.
【結果】最終評価において,食事時間の遂行度は2.7点(1.3→4),満足度は2.3点(1.3→3.6)に向上した.食事場面の遂行分析では,身体的努力と効率性の低下が中度から軽度に,援助の必要性が「しばしば」から「たまに」に変化した.GAS修正スコアは,目標達成の50点を上回る59.1点となった.
【考察】 今回,ビデオを媒体とし家族の食事場面の過ごし方を見る事,母親と一緒に対策を考えていく事で家族の文脈を知り,母親が実際にできる具体的対策を実施出来た.初期の頃はOTR主導であったが,母親自身が子どもの特徴と能力を理解し,自発的に対策を考えるようになった.その結果,本児の食事場面の遂行の質が向上し,母親の食事時間に対する遂行度,満足度が向上するなど食事時間が改善したと考える.