[OI-4-1] 口述発表:発達障害 4板書の書き写し能力を定性的に表す評価方法の検討
頭頚部角度と書き写し効率を指標とした類別化
【序論・目的】
発達障害児における板書の書き写し動作の特性は,黒板の上方を見る際に頭頚部の過剰な後屈運動を伴う代償動作がある.また黒板の高さにより頭頚部後屈運動が変化し,黒板の文字の捉えやすさに影響を与え,板書の書き写しの困難さに繋がる.しかしこの困難さは,児童や教諭等の主観的な訴えとなり,書き写し能力の客観的な指標は一般化されていない.そこで本研究の目的は,小学校低学年の定型発達児を対象に,板書の書き写し能力を可視化して把握することである.そのため,黒板の高さ別に板書の書き写し課題を作成し,板書の書き写し時の頭頚部角度,および 1回に書き写すことができた文字数(書き写し効率)を指標に類別化を行うこととした.
【方法】
対象は1~2年生の定型発達児25名(男児9名,女児16名),右利きで裸眼視力AまたはBの者とした.黒板の高さによる測定条件は,条件1児童の眼の高さに黒板の中心を合わせた高さ,条件2児童の眼の高さに黒板の下端を合わせた高さ,条件3黒板を最上段まで上げた高さとした.作成した課題は,条件別に平仮名15文字と1符号を無意味語化した文字列とし,児童は30秒間で書き写した.分析方法として,書き写し効率は時間内に書き写した文字数(個)と,黒板を見上げてから文字を紙に書き写すまでの頭頚部運動の回数(回)より算出した.類別化の方法は横軸を頭頚部角度,縦軸を書き写し効率として散布図を作成し,各軸の平均値を中心に±1SDと-2SD の範囲を示して平均群・境界群・低下群に分けた.本研究は所属機関の倫理審査委員会の承認を得ており,測定日は検者が児童の顔色を観察しながら実施した.
【結果】
書き写し課題の書き写し効率において,条件1の1回に書き写した文字数は1.0~3.3個/回の範囲となり,平均1.7±0.6個/回であった.条件2は1.2~3.5個/回の範囲で,平均1.8±0.5個/回であった.条件3は1.1~3.2個/回の範囲で,平均1.8±0.6個/回であった.書き写し課題の特性における類別化は,頭頚部角度変化および書き写し効率の平均群に属す児が,条件1は13名(52%),条件2は14名(56%),条件3は11名(44%)であった.また書き写し効率において,境界群に属した児は各条件で2名(8%)であり,低下群に属した児は認めなかった.
【考察・結論】
本結果の書き写し効率は,平均1~2個/回であったが,3個/回以上書き写せた児を認め,個人差が明らかとなった.板書の書き写しが困難な児は,定型発達児に比べ書き写し効率の低下を認めると考える.書き写し効率は板書の書き写し能力を示し,実際の授業に関わる指標として活用できる.類別化は板書の書き写し能力を可視化して容易に把握でき,板書の書き写しの遅れやその可能性の早期発見に繋げることができる.臨床経験より,板書の書き写しが困難な児は,類別化の低下群の中でも頭頚部の過剰な後屈運動による代償動作を伴うと考えられる.また類別化は臨床家に限らず,学校教諭等との情報共有に役立つ有用な指標と考える.本研究は頭頚部運動と書き写し効率に着目したが,板書の書き写し動作には様々な機能を要すため,今後の研究課題としていきたいと考えている.
発達障害児における板書の書き写し動作の特性は,黒板の上方を見る際に頭頚部の過剰な後屈運動を伴う代償動作がある.また黒板の高さにより頭頚部後屈運動が変化し,黒板の文字の捉えやすさに影響を与え,板書の書き写しの困難さに繋がる.しかしこの困難さは,児童や教諭等の主観的な訴えとなり,書き写し能力の客観的な指標は一般化されていない.そこで本研究の目的は,小学校低学年の定型発達児を対象に,板書の書き写し能力を可視化して把握することである.そのため,黒板の高さ別に板書の書き写し課題を作成し,板書の書き写し時の頭頚部角度,および 1回に書き写すことができた文字数(書き写し効率)を指標に類別化を行うこととした.
【方法】
対象は1~2年生の定型発達児25名(男児9名,女児16名),右利きで裸眼視力AまたはBの者とした.黒板の高さによる測定条件は,条件1児童の眼の高さに黒板の中心を合わせた高さ,条件2児童の眼の高さに黒板の下端を合わせた高さ,条件3黒板を最上段まで上げた高さとした.作成した課題は,条件別に平仮名15文字と1符号を無意味語化した文字列とし,児童は30秒間で書き写した.分析方法として,書き写し効率は時間内に書き写した文字数(個)と,黒板を見上げてから文字を紙に書き写すまでの頭頚部運動の回数(回)より算出した.類別化の方法は横軸を頭頚部角度,縦軸を書き写し効率として散布図を作成し,各軸の平均値を中心に±1SDと-2SD の範囲を示して平均群・境界群・低下群に分けた.本研究は所属機関の倫理審査委員会の承認を得ており,測定日は検者が児童の顔色を観察しながら実施した.
【結果】
書き写し課題の書き写し効率において,条件1の1回に書き写した文字数は1.0~3.3個/回の範囲となり,平均1.7±0.6個/回であった.条件2は1.2~3.5個/回の範囲で,平均1.8±0.5個/回であった.条件3は1.1~3.2個/回の範囲で,平均1.8±0.6個/回であった.書き写し課題の特性における類別化は,頭頚部角度変化および書き写し効率の平均群に属す児が,条件1は13名(52%),条件2は14名(56%),条件3は11名(44%)であった.また書き写し効率において,境界群に属した児は各条件で2名(8%)であり,低下群に属した児は認めなかった.
【考察・結論】
本結果の書き写し効率は,平均1~2個/回であったが,3個/回以上書き写せた児を認め,個人差が明らかとなった.板書の書き写しが困難な児は,定型発達児に比べ書き写し効率の低下を認めると考える.書き写し効率は板書の書き写し能力を示し,実際の授業に関わる指標として活用できる.類別化は板書の書き写し能力を可視化して容易に把握でき,板書の書き写しの遅れやその可能性の早期発見に繋げることができる.臨床経験より,板書の書き写しが困難な児は,類別化の低下群の中でも頭頚部の過剰な後屈運動による代償動作を伴うと考えられる.また類別化は臨床家に限らず,学校教諭等との情報共有に役立つ有用な指標と考える.本研究は頭頚部運動と書き写し効率に着目したが,板書の書き写し動作には様々な機能を要すため,今後の研究課題としていきたいと考えている.