第56回日本作業療法学会

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一般演題

高齢期

[OJ-1] 一般演題:高齢期 1

Fri. Sep 16, 2022 12:10 PM - 1:10 PM 第7会場 (RoomD)

座長:木村 大介(関西医療大学)

[OJ-1-3] 口述発表:高齢期 1回復期リハビリテーション病棟退院時に家族が予測した退院後のIADLの実施頻度は家族の続柄によって差があるか?

白石 めぐみ1 (1杏林大学 保健学部 作業療法学科)

【はじめに】高齢者の家族介護者における研究は,介護負担感の調査を中心に多く行われているが,家族介護者とIADLの関係について調べた研究は少ない.筆者の先行研究より,患者の入院中に家族が予測した退院後のIADLは,退院1ヶ月後の実際のIADLと有意差がなかった(2019,筆者).IADLは,個人により実施していることに差が大きいため,家族との関係性が影響していると考えられるが,家族の続柄によって予測するIADLにどのような違いがあるかはわかっていない.
【目的】家族の続柄によって,予測する患者の退院後のIADLの実施頻度に差はあるのか.また,差があるとしたらどの群間に差があるかを比較することとした.
【方法】研究デザインは,横断研究とした.対象は,都内の回復期リハビリテーション病棟に入院し,自宅退院予定の患者の家族とした.包含基準は,家族が同居または別居であっても入院前より患者に何かしらの援助をしていることとした.調査期間は,2017年5月22日〜2018年2月6日であった.調査項目は,家族の続柄(夫,妻,息子,娘,その他),患者と家族の同居の有無とし,質問紙調査は,改訂版自記式Frenchay Activities Index(以下,FAI)を使用した.調査の手順は,患者の退院の際に,家族に患者の退院1ヶ月後の生活をイメージしてもらい,質問紙の回答を得た(以下,予測IADL).分析方法は,質問しに回答した家族(夫,妻,息子,娘,その他)の5群間において,退院時に予測したFAIの15項目について比較検討するため,一元配置分散分析を実施した.一元配置分散分析にて主効果を認めた項目には,多重比較を用いて比較した.統計ソフトは,SPSS ver .21を使用し,有意水準は5%とした.なお本研究は,筑波大学人間系研究倫理委員会において承認を受けて実施し,対象者に対して書面にて説明し,同意を得て実施した.
【結果】対象者は93名となった.対象者の内訳は,夫20名,妻23名,息子20名,娘20名,その他10名であった.対象者のうち,患者と同居しているのは67名であった.FAIで測定した家族の予測IADLは,一元配置分散分析において,食事の用意,食事の後片付け,洗濯,買い物,外出,旅行の6項目で主効果を認めた(< .05).その後の多重比較では,食事の用意,洗濯では,妻と夫,妻と息子,妻と娘で比較したときに,妻が有意に低い数値を示した(< .01).食事の後片付けでは,妻と夫,妻と息子,妻と娘,妻とその他で比較したときに,妻が有意に低い数値を示した(< .01).買い物では,妻と夫,妻と息子で比較したときに,妻が有意に低い数値を示した(< .05).外出では,妻とその他で比較したときに,その他が有意に低い数値を示した(< .05).旅行では,夫とその他,妻とその他で,その他が有意に低い数値を示した(< .01).
【考察】家族の続柄の違いによって,退院時に家族が予測する患者の退院後のIADL項目に違いがあることがわかった.特に,食事の用意,食事の後片付け,洗濯,買い物の項目では,質問紙の回答者が妻,つまり患者が夫である場合に,他の家族の続柄と比べて予測したIADLの実施頻度が有意に低いことがわかった.これは,家庭内の役割が影響している可能性があると考えられる.今後の課題として,本研究の結果と退院後の実際のIADL項目と比較して退院時の家族の予測が妥当であるのかを検討していく.