[OJ-2-1] 口述発表:高齢期 2作業の再獲得を目指した事例
仏壇とお薄を飲むことに焦点を当てたOTIPMに基づく作業療法
【はじめに】今回,胸椎椎体骨折で入院したA氏を担当した.A氏は歩行時に軽介助が必要だが拒み怒っていた.また,退院後の生活が想像できず漠然とした不安を抱えていた.COPMで上げられた作業に対しAMPSで評価・介入モデルを使用し練習を行った結果,現在と過去の能力の認識の乖離を減らし,作業の再獲得に寄与できたと考えられたため作業療法プロセスモデル(OTIPM)に沿って報告する.尚,本報告に際し本人から同意を得ている.
【クライエント中心の遂行文脈の確立】A氏 80歳代前半の女性.自宅で転倒し3日後に当院を受診,第12胸椎椎体骨折と診断され入院.既往に小脳萎縮と脳梗塞がある.移動手段は4点杖で病棟内移動時ふらつきがあるため軽介助を行うが,本人は安全に行えると思っている事から怒り拒否している.入院前の生活は息子の見守り下で入浴し買い物も頼む事があったがそれ以外は自立.会社の家事手伝いとして住み込みで働き,そこではお客にお薄を入れる等しており退職後も毎朝続けていた.「ご先祖様に生かされている」と仏壇に対する信念があり毎日手を合わせている.
【作業遂行の強みと問題の明確化】移動・入浴以外のADLは自立.COPMを用いながら生活習慣を振り返った所,「家に帰ってみないとわからないけど,帰れるのかな」と話した.”仏壇の掃除”重要度10/遂行度・満足度1, ”お薄を入れる”重要度9/遂行度2/満足度3”仏壇に手を合わせる”重要度10/遂行度2/満足度1だった※主治医から床上動作は許可が得られていないため非実施.
【課題遂行の観察と遂行分析】AMPS課題の結果運動技能1.0ロジット,プロセス技能0.9ロジット.作業遂行の質は中等度の身体的努力の増大と軽度の非効率性・安全性の低下が確認され軽度の援助が必要だった.
【効果的遂行と非効果的遂行の記述】AMPS課題から移動時のふらつきや物を運ぶ際は手の震えがあり滑らせて運ぶこと等が観察され,物の場所を探さずスタッフに援助を求めていた.
【原因の明確化と解釈】運動技能は運動失調に加えて,下肢・体幹の筋力低下が考えられる.プロセス技能は,既往の脳梗塞による注意や認知機能低下が考えられる.
【介入モデルの選択と介入計画】回復・習得・代償モデルを選択した.台所や仏壇の掃除道具を使って,物的支持を行いやすい環境下で道具を操作する練習を一緒に行い,ふらつき具合について共有した.「食器を運ぶときはどこか持ったらええな」と話し,実際に自分で入れたお茶を飲んでいる時には「私って幸せや」との発言も聞かれた.
【再評価】COPMの遂行スコア7.5と満足スコア6を認めた.AMPS課題の結果は運動技能1.5ロジット,プロセス技能1.3ロジットと改善を認め,軽度の効率性の低下はあるが安全性は自立となった.ふらつきは軽減し,病棟内移動は日中自立となった.お薄を入れる際や仏壇の掃除時の身体的努力は軽度で安全に行えるようになった.次に”仏壇に手を合わせる”に向け練習を開始した.
【考察】
A氏の入院前の生活は入浴と買い物に支援が必要だったが,現在の病棟では移動に軽介助が必要である事から,現在と過去の能力の認識の乖離に葛藤し介助に対し怒っており,退院後の生活に漠然とした不安を抱えているのではないかと考えた.
岡らは作業をすることを通して自己を作り上げ,その作業をどのように行う事ができるかは健康を左右すると述べている.作業遂行の中からお薄を飲むことと仏壇に焦点を当てた中で,できる点と問題点を知ることができ,苦手な部分に対しては手の置き場所等作業の行い方を調整し取り組むことができた.作業に焦点を当てたことに加え作業の行い方を調整したことで漠然とした不安から退院後の生活への自己実現に向かっていたのではないかと考える.
【クライエント中心の遂行文脈の確立】A氏 80歳代前半の女性.自宅で転倒し3日後に当院を受診,第12胸椎椎体骨折と診断され入院.既往に小脳萎縮と脳梗塞がある.移動手段は4点杖で病棟内移動時ふらつきがあるため軽介助を行うが,本人は安全に行えると思っている事から怒り拒否している.入院前の生活は息子の見守り下で入浴し買い物も頼む事があったがそれ以外は自立.会社の家事手伝いとして住み込みで働き,そこではお客にお薄を入れる等しており退職後も毎朝続けていた.「ご先祖様に生かされている」と仏壇に対する信念があり毎日手を合わせている.
【作業遂行の強みと問題の明確化】移動・入浴以外のADLは自立.COPMを用いながら生活習慣を振り返った所,「家に帰ってみないとわからないけど,帰れるのかな」と話した.”仏壇の掃除”重要度10/遂行度・満足度1, ”お薄を入れる”重要度9/遂行度2/満足度3”仏壇に手を合わせる”重要度10/遂行度2/満足度1だった※主治医から床上動作は許可が得られていないため非実施.
【課題遂行の観察と遂行分析】AMPS課題の結果運動技能1.0ロジット,プロセス技能0.9ロジット.作業遂行の質は中等度の身体的努力の増大と軽度の非効率性・安全性の低下が確認され軽度の援助が必要だった.
【効果的遂行と非効果的遂行の記述】AMPS課題から移動時のふらつきや物を運ぶ際は手の震えがあり滑らせて運ぶこと等が観察され,物の場所を探さずスタッフに援助を求めていた.
【原因の明確化と解釈】運動技能は運動失調に加えて,下肢・体幹の筋力低下が考えられる.プロセス技能は,既往の脳梗塞による注意や認知機能低下が考えられる.
【介入モデルの選択と介入計画】回復・習得・代償モデルを選択した.台所や仏壇の掃除道具を使って,物的支持を行いやすい環境下で道具を操作する練習を一緒に行い,ふらつき具合について共有した.「食器を運ぶときはどこか持ったらええな」と話し,実際に自分で入れたお茶を飲んでいる時には「私って幸せや」との発言も聞かれた.
【再評価】COPMの遂行スコア7.5と満足スコア6を認めた.AMPS課題の結果は運動技能1.5ロジット,プロセス技能1.3ロジットと改善を認め,軽度の効率性の低下はあるが安全性は自立となった.ふらつきは軽減し,病棟内移動は日中自立となった.お薄を入れる際や仏壇の掃除時の身体的努力は軽度で安全に行えるようになった.次に”仏壇に手を合わせる”に向け練習を開始した.
【考察】
A氏の入院前の生活は入浴と買い物に支援が必要だったが,現在の病棟では移動に軽介助が必要である事から,現在と過去の能力の認識の乖離に葛藤し介助に対し怒っており,退院後の生活に漠然とした不安を抱えているのではないかと考えた.
岡らは作業をすることを通して自己を作り上げ,その作業をどのように行う事ができるかは健康を左右すると述べている.作業遂行の中からお薄を飲むことと仏壇に焦点を当てた中で,できる点と問題点を知ることができ,苦手な部分に対しては手の置き場所等作業の行い方を調整し取り組むことができた.作業に焦点を当てたことに加え作業の行い方を調整したことで漠然とした不安から退院後の生活への自己実現に向かっていたのではないかと考える.