[OJ-2-4] 口述発表:高齢期 2人間作業モデルスクリーニングツールによる軽度認知障害のリバートに影響する概念の検討
【序論と目的】健常と認知症の中間状態である軽度認知障害(以下,MCI)は,健常への改善(以下,リバート)が期待できる.しかし,作業療法のエビデンスは不十分であることから,MCIに対する治療の構造化が喫緊の課題である.そこで,MCI高齢者に人間作業モデル(以下,MOHO)を理論的基盤とした3ヶ月間の作業療法を実践した.本研究の目的は,3ヶ月間の介入によるMCI高齢者の作業参加の変化からリバートに影響する人間作業モデルスクリーニングツール(以下,MOHOST)の概念を検討することである.
【研究仮説】MOHOSTは,クライアントの作業参加を測定する評価法である.MOHOの意志,習慣化,遂行技能,環境の4つの概念を基盤に,意志は作業への動機づけ,習慣化は作業のパターン,遂行技能はコミュニケーションと交流技能(以下,C&I),処理技能,運動技能,そして環境の6つに等しく分けられた24項目から構成される.評定は4件法が用いてられ,1項目4点満点で合計96点がフルスコアである.MOHOの作業参加とは,個人的で社会的な特徴をもつ物事への従事であり,参加には個々の行為を行う作業遂行と作業遂行を作り上げる観察可能で目標指向的な動作の遂行技能が含まれる.つまり,遂行技能に位置づけられるC&I,処理技能,運動技能の3つの構成概念は遂行能力が基礎的な能力になるため,認知機能との相関が強いことが予測される.したがって,MCI高齢者の認知機能改善における交絡因子になる可能性が高い.そこで本研究の仮説では,遂行技能の3つの概念を除外した作業への動機づけ,作業のパターン,環境がMCI高齢者の認知機能改善に影響力があると仮説を立てて検討した.
【研究方法】本研究は,後ろ向き調査研究である.対象は,介護老人保健施設の診療提供回数に基づき,MOHOを週3回の頻度で3ヶ月間介入できなかったデータ,介入前のMini-Mental State Examination (以下,MMSE)30点のデータを除くMMSE 24点以上かつClinical Dementia Rating 0.5を満たすMCI高齢者28名(女性:23名,男性:5名,MMSE平均値:26.2±2.38点)とした.解析方法は,ロジスティック回帰分析として介入3ヶ月後のMMSEの点数が向上した19名とMMSEの点数が維持あるいは低下した9名のMCI高齢者28名を対象に作業への動機づけの変化量,作業のパターンの変化量,環境の変化量を説明変数,改善1非改善0をダミー変数に,MCI高齢者の認知機能改善への影響力を有意水準5%未満として分析した.統計処理には,SPSS24.0 J for Windowsを用いた.
【倫理的配慮】本研究は大阪保健医療大学研究倫理委員会の承認(承認番号2003)を得て実施している.また,オプトアウトを実施し,対象と家族から同意を得た.
【結果】作業への動機づけの変化量(オッズ比:0.999,95%Cl:0.525-1.904,p=.998),作業のパターンの変化量(オッズ比:1.168,95%Cl:0.539-2.532,p=.694),環境の変化量(オッズ比:1.463,95%Cl:0.939-2.279,p=.092)には,いずれも統計学的に有意な変数は認められなかった.
【考察】作業参加と認知機能の変化には有意差はなく,MCIのリバートに影響する概念を見つけることができなかった.これは,認知機能のアウトカムをMMSEのみに設定し,MCIの認知機能を有用に評価できていないこと,サンプルサイズがロジスティック回帰分析に必要な説明変数を満たしていないことが要因に挙げられる.また,本研究では環境の影響力が強いことを仮説として検証しており,結果としては環境が最も有意傾向を示していた.今後は条件を整え,この仮説を真に検証する必要がある.
【研究仮説】MOHOSTは,クライアントの作業参加を測定する評価法である.MOHOの意志,習慣化,遂行技能,環境の4つの概念を基盤に,意志は作業への動機づけ,習慣化は作業のパターン,遂行技能はコミュニケーションと交流技能(以下,C&I),処理技能,運動技能,そして環境の6つに等しく分けられた24項目から構成される.評定は4件法が用いてられ,1項目4点満点で合計96点がフルスコアである.MOHOの作業参加とは,個人的で社会的な特徴をもつ物事への従事であり,参加には個々の行為を行う作業遂行と作業遂行を作り上げる観察可能で目標指向的な動作の遂行技能が含まれる.つまり,遂行技能に位置づけられるC&I,処理技能,運動技能の3つの構成概念は遂行能力が基礎的な能力になるため,認知機能との相関が強いことが予測される.したがって,MCI高齢者の認知機能改善における交絡因子になる可能性が高い.そこで本研究の仮説では,遂行技能の3つの概念を除外した作業への動機づけ,作業のパターン,環境がMCI高齢者の認知機能改善に影響力があると仮説を立てて検討した.
【研究方法】本研究は,後ろ向き調査研究である.対象は,介護老人保健施設の診療提供回数に基づき,MOHOを週3回の頻度で3ヶ月間介入できなかったデータ,介入前のMini-Mental State Examination (以下,MMSE)30点のデータを除くMMSE 24点以上かつClinical Dementia Rating 0.5を満たすMCI高齢者28名(女性:23名,男性:5名,MMSE平均値:26.2±2.38点)とした.解析方法は,ロジスティック回帰分析として介入3ヶ月後のMMSEの点数が向上した19名とMMSEの点数が維持あるいは低下した9名のMCI高齢者28名を対象に作業への動機づけの変化量,作業のパターンの変化量,環境の変化量を説明変数,改善1非改善0をダミー変数に,MCI高齢者の認知機能改善への影響力を有意水準5%未満として分析した.統計処理には,SPSS24.0 J for Windowsを用いた.
【倫理的配慮】本研究は大阪保健医療大学研究倫理委員会の承認(承認番号2003)を得て実施している.また,オプトアウトを実施し,対象と家族から同意を得た.
【結果】作業への動機づけの変化量(オッズ比:0.999,95%Cl:0.525-1.904,p=.998),作業のパターンの変化量(オッズ比:1.168,95%Cl:0.539-2.532,p=.694),環境の変化量(オッズ比:1.463,95%Cl:0.939-2.279,p=.092)には,いずれも統計学的に有意な変数は認められなかった.
【考察】作業参加と認知機能の変化には有意差はなく,MCIのリバートに影響する概念を見つけることができなかった.これは,認知機能のアウトカムをMMSEのみに設定し,MCIの認知機能を有用に評価できていないこと,サンプルサイズがロジスティック回帰分析に必要な説明変数を満たしていないことが要因に挙げられる.また,本研究では環境の影響力が強いことを仮説として検証しており,結果としては環境が最も有意傾向を示していた.今後は条件を整え,この仮説を真に検証する必要がある.