[OJ-3-4] 口述発表:高齢期 3回復期リハビリテーション病棟における栄養状態が認知症に及ぼす影響
【序論】
近年,認知機能低下に伴う様々な症状に関して多くの研究が報告されている.回復期リハビリテーション病棟(以下回リハ病棟)に入棟する患者の32.6%が認知症を併存していたと報告(山口ら 2014)している.また, 回リハ病棟入棟患者の栄養障害の有病率はGeriatric Nutritional Risk Index(以下GNRI)により43.5%が低栄養状態であったと報告(西岡ら 2015)している. 体重減少は認知症の顕著な臨床的特徴である(Belmin et al. 2007)と述べている. また,認知症高齢者は,加齢に伴う障害やうつ病等の影響を受け,栄養不良になる可能性がある(Miller et al. 2008,Chapman et al. 2011,Agarwal et al. 2013)と報告している.認知症の程度と栄養状態に関する報告は散見しているが, 回リハ病棟を対象とした,栄養評価バッテリー(GNRI)を用いた栄養状態が認知症に及ぼす影響についての報告はされていない.
【目的】
今回,回リハ病棟入棟患者の栄養状態が認知機能に及ぼす影響について分析する事で,栄養アプローチの重要性を明らかにすることを目的とする.
【方法】
対象は,2019年10月―2022年1月までに当院回リハ病棟に入棟した122名を後方視的に抽出した. 除外基準として ,急性疾患や悪液質などの慢性疾患を有する患者を除外対象とした(White et al. 2012). その他には,食事形態が経管栄養または絶食中の患者,質問評価の困難者を除外対象とした.電子カルテにて対象者の入棟時のMMSEやGNRIを抽出した.MMSEは23点以下をカットオフ値に設定した(杉下ら 2018).GNRI は,[14.89 × 血清アルブミン (g/dL) ]+[41.7 ×(現在の体重 / 標準体重)]であり,標準体重は,身長 (m)² × 22で求めた. 解析はMMSEのカットオフ以上群と以下群に分類し2群間において対応のないt検定を用いて検証した.その後,MMSEを目的変数とし, 年齢,GNRI, Geriatric Depression Scale (以下GDS)を共変量として設定した重回帰分析を用いてMMSEとGNRIの関係性を明らかにした.有意水準は5%とした(p≦0.05).統計処理は R2.8.1 を用いた. 本演題に関して,ヘルシンキ宣言に則り同意を得て実施した.
【結果】
対象者は,抽出した122名の内,除外基準該当者を除いた109名であった.平均年齢は,78±30歳,男性53名,女性56名,MMSEは平均19±17点,MMSEカットオフ以上群は45名,カットオフ以下群は64名,GNRIは平均93±28,GDSは平均6±7点であった. 対応の無いt検定の結果(P≦0.01)と有意な差を認めた.重回帰分析の結果,関係する因子として年齢(β=-0.2785 ,p=0.00208)と,GNRI(β=0.2575,p=0.00488)が独立した説明因子であった.決定係数R²値は0.21であった.
【考察】
統計分析の結果,MMSEの2群間とGNRIは有意な差を認めた.この結果は先行研究にて述べられている,認知症と栄養障害の関連と同様の結果となった.(Belmin et al. 2007, Albanese et al. 2013).重回帰分析の結果,年齢とGNRIの関係性を認めた.認知症と年齢の関係は先行研究の報告と同様の結果となった.次いで,MMSEとGNRIの関係性を認めたことから,認知症とGNRIは関係性があることが示唆された.しかし,本研究では,決定係数が0.21と低く,その他の交絡因子が関係している可能性がある.今回の結果から,栄養状態が認知症に影響を及ぼす可能性があり,回リハ病棟入棟患者の認知症予防の観点からも栄養アプローチを考慮した介入が必要であることが示唆された.
近年,認知機能低下に伴う様々な症状に関して多くの研究が報告されている.回復期リハビリテーション病棟(以下回リハ病棟)に入棟する患者の32.6%が認知症を併存していたと報告(山口ら 2014)している.また, 回リハ病棟入棟患者の栄養障害の有病率はGeriatric Nutritional Risk Index(以下GNRI)により43.5%が低栄養状態であったと報告(西岡ら 2015)している. 体重減少は認知症の顕著な臨床的特徴である(Belmin et al. 2007)と述べている. また,認知症高齢者は,加齢に伴う障害やうつ病等の影響を受け,栄養不良になる可能性がある(Miller et al. 2008,Chapman et al. 2011,Agarwal et al. 2013)と報告している.認知症の程度と栄養状態に関する報告は散見しているが, 回リハ病棟を対象とした,栄養評価バッテリー(GNRI)を用いた栄養状態が認知症に及ぼす影響についての報告はされていない.
【目的】
今回,回リハ病棟入棟患者の栄養状態が認知機能に及ぼす影響について分析する事で,栄養アプローチの重要性を明らかにすることを目的とする.
【方法】
対象は,2019年10月―2022年1月までに当院回リハ病棟に入棟した122名を後方視的に抽出した. 除外基準として ,急性疾患や悪液質などの慢性疾患を有する患者を除外対象とした(White et al. 2012). その他には,食事形態が経管栄養または絶食中の患者,質問評価の困難者を除外対象とした.電子カルテにて対象者の入棟時のMMSEやGNRIを抽出した.MMSEは23点以下をカットオフ値に設定した(杉下ら 2018).GNRI は,[14.89 × 血清アルブミン (g/dL) ]+[41.7 ×(現在の体重 / 標準体重)]であり,標準体重は,身長 (m)² × 22で求めた. 解析はMMSEのカットオフ以上群と以下群に分類し2群間において対応のないt検定を用いて検証した.その後,MMSEを目的変数とし, 年齢,GNRI, Geriatric Depression Scale (以下GDS)を共変量として設定した重回帰分析を用いてMMSEとGNRIの関係性を明らかにした.有意水準は5%とした(p≦0.05).統計処理は R2.8.1 を用いた. 本演題に関して,ヘルシンキ宣言に則り同意を得て実施した.
【結果】
対象者は,抽出した122名の内,除外基準該当者を除いた109名であった.平均年齢は,78±30歳,男性53名,女性56名,MMSEは平均19±17点,MMSEカットオフ以上群は45名,カットオフ以下群は64名,GNRIは平均93±28,GDSは平均6±7点であった. 対応の無いt検定の結果(P≦0.01)と有意な差を認めた.重回帰分析の結果,関係する因子として年齢(β=-0.2785 ,p=0.00208)と,GNRI(β=0.2575,p=0.00488)が独立した説明因子であった.決定係数R²値は0.21であった.
【考察】
統計分析の結果,MMSEの2群間とGNRIは有意な差を認めた.この結果は先行研究にて述べられている,認知症と栄養障害の関連と同様の結果となった.(Belmin et al. 2007, Albanese et al. 2013).重回帰分析の結果,年齢とGNRIの関係性を認めた.認知症と年齢の関係は先行研究の報告と同様の結果となった.次いで,MMSEとGNRIの関係性を認めたことから,認知症とGNRIは関係性があることが示唆された.しかし,本研究では,決定係数が0.21と低く,その他の交絡因子が関係している可能性がある.今回の結果から,栄養状態が認知症に影響を及ぼす可能性があり,回リハ病棟入棟患者の認知症予防の観点からも栄養アプローチを考慮した介入が必要であることが示唆された.