第56回日本作業療法学会

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一般演題

高齢期

[OJ-5] 一般演題:高齢期 5

Sun. Sep 18, 2022 9:40 AM - 10:40 AM 第3会場 (Annex2)

座長:佐川佳南枝(京都橘大学)

[OJ-5-2] 口述発表:高齢期 5COVID-19拡大禍における地域在住高齢者の身体機能と生活行為に関する不自由感の縦断的研究

小玉 鮎人1石川 隆志2 (1秋田大学高齢者医療先端研究センター,2秋田大学大学院医学系研究科)

【はじめに】
 高齢者の身体機能は生理学的要因や生活習慣もしくは環境などの後天的・社会的な要因で低下していき,それは生物学的な現象として捉えられている.さらに,近年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大することで,感染予防対策として自粛生活を継続することにより,身体機能や認知機能の低下を引き起こしフレイル状態が悪化することが危惧されている.そこで,本研究は地域在住高齢者を対象としてCOVID-19発生前とCOVID-19拡大禍における身体機能と生活行為に関する不自由感の変化について,さらには生活行為に関する不自由感の変化に影響を及ぼす身体機能の要因について明らかにすることを目的とした.
【方法】
対象は,A地域包括支援センターによる2018年(COVID-19発生前)および2020年(COVID-19拡大禍)の介護予防教室に参加した地域在住高齢者34名(平均年齢75.7±5.6名,男性:5名,女性29名)とした.身体機能評価は,握力,10m歩行速度,開眼片足立位時間,Four Square Step Testを実施した.生活行為に関する不自由感については,生活行為確認表(日本作業療法士協会版)を用いて生活行為30項目に対する不自由感を自記式にて測定した.また,主観的な健康感についても測定した.統計学的解析は,ベースライン(2018年)とフォローアップ(2020年)の握力,10m歩行速度,開眼片足立位時間,Four Square Step Test,生活行為確認表による合計得点に対してWilcoxon signed-rank testを行い,生活行為確認表による主観的健康感に対してχ2検定を行った.また,ベースラインとフォローアップの生活行為確認表による合計得点の変化量を従属変数,ベースラインの年齢,各身体機能評価結果を独立変数とした,重回帰分析を用いた.有意水準は5%とした.本研究は秋田大学大学院医学系研究科倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
ベースラインとフォローアップの各身体機能評価結果と生活行為に関する不自由感の合計得点に対してWilcoxon signed-rank testを行った結果,握力(p<0.05)と10m歩行速度(p<0.01)が有意に低下し,生活行為に関する不自由感が有意に増悪した(p<0.01).握力,開眼片足立位時間,Four Square Step Testについて有意差は認められなかったものの,全て低下傾向にあった.主観的健康感について有意差は認められなかったものの,予想に反して「とても健康」と「少し健康」の該当者が増加傾向にあった.また,重回帰分析の結果,生活行為に関する不自由感の変化量に対して10m歩行速度が要因として抽出された(R=0.771,調整済みR2=0.513,p<0.05).
【結論】
本研究では,地域在住高齢者を対象としてCOVID-19発生前とCOVID-19拡大禍における身体機能と生活行為に関する不自由感の変化と,生活行為に関する不自由感の変化に影響を及ぼす要因について検討した.身体機能や生活行為に関する不自由感は加齢による衰えも要因として考えられるが,社会活動の自粛や外出機会の制限による影響も要因として示唆された.また,生活行為に関する不自由感の変化については歩行速度が遅い高齢者ほど生活行為に関する不自由感が増悪することが明らかとなった.今後は,さらにフォローアップ調査を継続し高齢者の歩行速度低下がどのような生活行為の不自由さに影響を及ぼしていくかについて明確にする必要がある.